イーサリアムクラシックの51%攻撃
今月に入り二度の51%攻撃を受けたイーサリアムクラシック(ETC)。8月1日に起きた一度目の攻撃ではOKExのウォレットが使用され、6億円に相当する80万7260 ETCの二重支払いが発生した。OKExはユーザー保護のポリシーに則り、全ての損失を補填、ユーザーは直接的な被害を免れたが、同取引所は今回の事件を重く受け止め、入念な調査の結果とその詳細を報告書にまとめ公開した。
攻撃の準備までの流れ
1. 6月26日〜7月9日:ハッカーが5つのアカウントを登録。三段階のKYCプロセス全てを通過し、出金限度額を引き上げる。
2. 7月30日〜7月31日:新規登録した5つのアカウントに、数回に分けて6万8230.02 ZECを入金。
3. 7月31日:OKExのスポット市場で入金しZEC全額をETCに交換。購入した80万7260 ETCを外部アドレスに送金。
4. ETCネットワークの過半数をコントロールするのに十分なハッシュレートを取得。
51%攻撃開始後の流れ
1. マイニングでシャドーチェーンを作成。新しいブロックを他のノードにブロードキャストしないことで、ハッカーのみが知る「シャドーチェーン」を作成。(メインチェーンと同じ取引履歴=80万7260 ETC送金の記録有り)
2. 外部ウォレットで受け取った全ETCをOKExに入金(メインネットで確認済み)するも、入金先アドレスを第二のシャドーチェーン上のアドレスに変更する操作を実行。80万7260 ETCはメインネットとシャドーチェーンのアドレスの両方に記録され、二重支払い操作の準備が完了。
3. メインネット上の80万7260ETCをOKExのスポット市場で、約7万8900ZECに交換し、複数の外部アドレスへ出金。
4. ZEC送金完了を確認後、シャドーチェーンの3615ブロックをETCメインネットにブロードキャスト。ハッカーが、過半数のハッシュレートを保有していたことにより、より迅速なマイニングが可能になり、シャドーチェーン(ハッカーのアドレスに80万7260ETC保有)のブロック高がメインネットよりも長くなった。
5. ETCコミュニティ内のコミュニケーション不足も影響し混乱が生じる中、他のマイナーがメインネットからシャドーチェーンのマイニングに移行する決定を下し、チェーンの再編成が行われた。
ETC上場廃止の可能性
OKExはハッカーが使用したアドレスをブラックリストに登録、攻撃に関与した5つのアカウントは停止された。さらにETC入出金の確認時間を長くするという。しかし、1週間の間に二度の攻撃を受け、多額の被害が発生したETCネットワークの脆弱性に対する強い懸念は残ったままだ。
OKExはETCコミュニティが、今後、どのようにセキュリティを改善していくかによるとしながらも、ETCの上場廃止も検討しているという。同取引所CEOのJay Hao氏は、ETCとはコミュニケーションと協力体制にも難があると述べる一方で、OKExは最大のETC取引量を誇る市場であるため、上場廃止の決断は容易ではないという。
ETCの対応
ETC側も手をこまねいているわけではない。マイニングのアルゴリズムを現行のEthashからSHA-3に変更することも検討しているという。
また、異例ではあるが、ETCの開発を行うETCラボは、技術的な解決策の探求と同時に、ブロックチェーン・セキュリティ分析企業サイファー・トレース社(CipherTrace)とデジタル通貨紛争に強いKobre & Kim法律事務所の協力を得て、ハッカーとその関係者に対する刑事告発を視野に入れた調査を開始したことが明らかになっている。
ETCラボCEOの Terry Culver氏は、「パブリック・ブロックチェーンを操って盗みを働くという行為には、手厳しい結果が伴うことを明確にしたい」と述べ、エコシステムの公正性を守るため、強い決意を持って臨む覚悟を明らかにしている。
出典:OKEx