消費者保護のためのブロックチェーン活用
ブロックチェーン技術のより詳しい活用状況や調査を求める法案が、米国会に提出されたことがわかった。1日に下院議員3人の連名で提出された法案は、消費者保護の観点からの調査を求めている。
内容の概略は以下の通り:「商務長官に、連邦取引委員会と協議の上、ブロックチェーン技術の状況や消費者保護における利用状況等について調査を行い、報告書を議会に提出するよう指示する」。この法案の審議は、その後エネルギー・商業委員会に付託されている。
提出したのは、Brett Guthrie下院議員、Darren Soto下院議員、Doris Matsui下院議員。中でSoto議員は、仮想通貨規制の管轄は証券取引委員会(SEC)ではなく、商品先物取引委員会(CFTC)と連邦取引委員会(FTC)が行うべきだと主張したことで知られており、米国議会ブロックチェーン委員会の共同議長も務めている。
ブロックチェーン関連法案
現在の第116議会(会期:2019年1月3日〜2021年1月3日)には数々のブロックチェーン関連法案が提出されているが、その数は今年4月の時点で、32に上ると米経済メディアForbesは報道している。その内訳は12法案が仮想通貨の犯罪的使用について、13法案が仮想通貨およびブロックチェーンの税制や規制関連、5法案が米国政府によるブロックチェーン技術活用、そして2法案がデジタルドルの概念についてであった。
その後、5月には新たに、前述のガスリー議員によって、ブロックチェーンを国家戦略として検討するよう求める法案(The Advancing Blockchain Act)が提出された。この法案は、連邦取引委員会と商務省に、ブロックチェーン活用に関する国家レベルでの大規模な調査を求めると共に、連邦政府機関のブロックチェーンに関する管轄権を明文化するよう要求する内容となっている。
この法案は、Guthrie議員が属する消費者保護・商業小委員会が策定した「新興技術アジェンダ」の15法案のうちの一つで、新興技術における米国のリーダーシップを確保することが目的だ。5月12日付の同小委員会のプレスリリースでは、「中国(およびその他の挑戦)を打ち負かすため」と明言しており、ブロックチェーンをはじめとするテクノロジー分野における激しいリーダシップ争いを垣間見ることができる。
法案成立の可能性
しかし、米国議会で提出された法案が、実際に法律となるまでには、法案が付託された委員会での審議および承認、上院と下院両議会での審議および可決、そして大統領の署名(拒否権もある)という煩雑なプロセスを経なくてはならない。米国において法案が法律として制定される確率は3%から5%だと言われている。
これまでに提出された主なブロックチェーン法案のほとんどは、議会へ提案されたものの進展が無いようだ。
その中で、昨年9月、下院で可決されたのが、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)にブロックチェーンやAIなどの革新技術の活用し業務改善ができるかどうかの調査を要請する法案「Advancing Innovation to Assist Law Enforcement Act」だ。金融犯罪に対抗するための手段として、革新技術の活用を促す効果が期待されている。
また、今年7月には、国防予算の大枠を決めるための国防権限法の修正案が可決され、「新興技術」の定義に分散型台帳技術が追加された。これを受けて「新興技術と安全保障ニーズ」運営委員会が実施する米国の技術的優位性を維持するための評価対象にブロックチェーン技術が含まれることになった。
しかし、昨年10月に習近平国家主席がブロックチェーン技術を国家戦略の一環とすると発表し、4月には次世代のインフラとしてブロックチェーン・プラットフォームBSNを立ち上げた中国の迅速な動きに比べると、民主主義の原則に則り国会が立法権を持つ米国は、規制整備の面で遅れをとっているように見受けられる。米国では民間企業のブロックチェーン開発活動がめざましいだけに、政府による柔軟な規制の枠組みづくりが、早急に求められている。
参考:米国議会