「Covid-19通貨革命」を勝ち進むビットコイン
経済史学者でベストセラー作家のNaill Ferguson氏が、米ブルームバーグ紙上で、大規模で多角的な通貨革命が起きている今日において、「ビットコインが勝者となりつつある」との見解を発表した。
「ビットコインはCovid19通貨革命を勝ち抜いている」と題した記事で同氏は、過去仮想通貨に対し、批判的/懐疑的な態度を示していた著名な投資家や金融ジャーナリストらが、ビットコインが記録的な高騰を見せた今年、次々に意見を覆していると指摘した。
その主な理由として、新型コロナウィルスのパンデミック化により「貨幣の進化のペース」が加速し、ビットコインの価値の保存手段としての側面がより顕著になった結果、採用が進んだと説明した。さらに、今後はビットコインの重要な特性である「主権性」のメリットを考慮し、米国の金融システムに統合することを検討すべきだと主張した。
ドルと金とビットコインを比較
Ferguson氏は、インターネット技術革新によって、世界中で硬貨や紙幣の使用が減少し、支払いのデジタル化が進む中、パンデミックがさらにその変化を加速させたと指摘。「その全容を理解することが困難」なほど多角的な通貨革命の状況を、世界の基軸通貨である米ドルと、金(ゴールド)そしてビットコインの今年のパーフォーマンスを比較し、説明した。
- 米ドル:他の法定通貨との比較で1月1日から4%下落
(ブルームバーグ、ドル・スポット・インデックス) - 金:ドルベースで15%上昇
- ビットコイン:1年で139%上昇
このようなビットコインの高パフォーマンスが、ビットコインに辛辣な批判を浴びせてきた経済学者のNouriel Roubini氏をはじめ、Paul Tudor Jones氏、Stan Druckenmiller氏、そして Bill Miller氏などの著名投資家が、ビットコインを評価することにつながったとFerguson氏は述べている。
歴史は繰り返す
Ferguson氏は、歴史的に見ると、14世紀中頃ヨーロッパで大流行した黒死病が、英国経済の貨幣化を進めた例をあげ、「パンデミックが貨幣の進化のペースを加速する」ことは驚くべきことではないと論を進めた。
新型コロナウィルスの世界的流行により、これまでオンライン取引に馴染みのなかった層も、その使用を余儀なくされ、支払いのデジタル化が一層進むことになった。また同時に、金融詐欺や金融監視についても、一層一般の認知が進んだと同氏は述べ、ビットコインに有利な状況が生まれたと説明した。
Ferguson氏は、自身の著書「The Ascent of Money」で、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトが目指したのは、新しいお金を作ることではなく、「むしろ、投資家保護が不十分な国における没収、並びに通貨の下落という、ほぼ普遍的な惨劇から富を守ることができる究極の安全資産を作ること」だったと主張している。そして現在、起きているのは、支払い手段というよりも、価値の保存手段として、ビットコインの採用が進んでいる状況だと同氏は分析している。
ビットコインの特性を活かした金融システム
Ferguson氏は、ビットコインには取引処理のスピードや大量のエネルギー消費などの面で「明らかな欠点」があるが、その希少性と保有者が主権性を持つという特性は、欠点を補って余りあると主張する。
パンデミックの影響で、世界で「爆発的に法定通貨の供給が増加」している中、ビットコインの希少性は際立ってきている。一方、主権性が持つ利点は、それほど明白には実感されていないが、中国におけるデジタル決済およびデジタル人民元開発の進展が、今後、世界経済に与える影響を考慮した場合、ビットコインの採用を進めることがより重要な意味を持つことになると、同氏は訴えている。
中でも、中国が進める「一帯一路」政策を通して、デジタル人民元が参加国の貿易の決済に採用される可能性が高いと同氏は指摘する。
米国の金融システムは「元来、自由度の低い社会のシステムよりも、中央集権的ではなく、個人のプライバシーを尊重するように設計されていた」ことに思いを馳せ、「中国式のデジタルドルを作ることを模索するよりも、ビットコインを米国の金融システムに統合することのメリットを、バイデン新政権は認識するべきだ」とFerguson氏は結んだ。