中国市場がビットコインに与える影響
年末年始から3万ドル超えの高値圏で推移を続ける上昇相場の要因にはドル安、12月末の過去最高値(2万ドル)突破、金融緩和政策に伴う通貨価値の低下を懸念したリスクヘッジの動きなどが挙げられるが、中国からのビットコインへの資金流入も大きな影響を及ぼしている。
周知の通りビットコインの採掘事業者(マイナー)の過半数が電力コストの低い中国に多く立地されていることをはじめ、中国とビットコインは密接な関係がある。
英ケンブリッジ大学の調査によると2020年4月時点での世界中のビットコインマイニングの約65%が中国で行われている。
BTCと人民元の高い相関性
米調査企業Bretton Woods Research社の創設者Vladimir Signorelli氏によると、過去12ヶ月で、主要G10各国の法定通貨の中で中国人民元はビットコインと最も強い相関性(84%)を記録した。他国ではユーロが次点に高く、ビットコイン価格の相関性が約75%。ロシアルーブルは25%だった。人民元との相関性が特に顕著だったようだ。
新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に感染拡大を続けた中、中国では最初の感染事例が確認された武漢市などで都市レベルの大規模なロックダウンを実施。
いち早く感染を押さえ込んだ中国は、欧州イタリアやフランスをはじめ、各国が感染対策に苦戦し経済状況が悪化した際、世界に先駆け経済活動などを再始動していた。外交面でも4月中旬に、中国政府が南シナ海で領有権が争われてきたパラセル(西沙)諸島とスプラトリー(南沙)諸島に新たな行政区を設立していた。
また、米国の大統領選挙を終えた11月頃から経済的不安からドル安傾向がより際立ったことも、人民元の強さの要因にあがった。
コロナ禍での経済拡大
また、コロナ禍の2020年でも成長を遂げた中国経済の発展は、富裕層の増加からも伺える。フォーブスの調査によると中国の富裕層上位400人の資産は昨年だけで64%上昇し、約220兆円まで増加した。
上位400人の内、68人が新たにランクインした中国に対し、米国では新たにランクインした富裕層は18人に留まった。
世界各国が不況に陥った中でもいち早く「ニューノーマル」に適応した中国の強さが、資産増加につながり、その結果、資産を政府の検閲が入らないビットコインに流入している動きに至った可能性もある。
経済調査の専門家であるSignorelli氏は、「中国(市民)の富が増えるにつれ、中国政府が国民が資産を人民元以外の形で保有することを制限することはさらに難しくなる。米国株や不動産に投資できなくなれば、利益の少ない米国債や欧州の国債ではなくハイリスクハイリターンのビットコインに手が伸びるだろう」と分析している。
アリババ、テンセントに次ぐ中国で3位の大手IT企業「美団」社の王興CEOもまたビットコインを保有していることが判明している。王CEOはビットコインを「歴史上で最も大きい富の移転」として「(人類の)歴史に残る素晴らしいアイデア」と高評価。「行動を持ってこの偉大なアイデアに敬意を払うべきだ」と言及している。
中国国内の関心度
法定通貨以外でも中国国内のビットコインに対する人気が伺える指数が報道されている。
先日CoinPostでも報道した通り、12月にビットコインが2017年12月に記録した過去最高値(2万ドル)を突破する直前、中国の大手SNSサイトWeibo(微博)内での「ビットコイン」や「ブロックチェーン」などの検索数が20年12月上旬から急上昇していたことが、中国国内の仮想通貨事情に詳しいDovey Wan氏の話で判明した。
中国の「個人投資家のセンチメントを表す最も良い指標」として検索数の推移チャート紹介している。
Best index for Chinese retail sentiment –
— Dovey “Rug The Fiat” Wan🪐🦖 (@DoveyWan) January 5, 2021
Wechat index of keyword “Bitcoin”(green) “Blockchain” (purple) Ethereum” (yellow) as below
Obvious spike after 12/7 when BTC broke 20k and later 30k, no clear sign of hotness 🆙 for blockchain or Ethereum tho pic.twitter.com/YEWG4SdPKW
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仮想通貨人気に拍車をかけるデジタル人民元の動向
2020年、特に強まったビットコインを「デジタルゴールド」や「リスクヘッジ資産」としての見方に加え、中国の深セン市などで続く中央銀行が発行するCBDC、デジタル人民元(DCEP)の実証実験(≒市民への無料配布)が、デジタル化の波として、仮想通貨の人気を後押ししているとの意見もある。
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また、デジタル人民元開発の背景にはブロックチェーンを一部導入し、中央銀行がデジタルな法定通貨を発行することで「アリペイやWeChatなどの第三者プラットフォームから政府が法定通貨にもたらす影響力を取り戻る動き」との見方も強まってきた。
さらに、中国の中央銀行に相当する中国人民銀行の周小川元総裁が昨年末上海の金融カンファレンスで登壇した際、決済と外貨為替への変換がリアルタイムで同時完了するデジタル人民元は国境間の「貿易や投資にも活用できる」と説明している。