中央銀行発行デジタル通貨についての最新報告
国際決済銀行(BIS)が、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)について新たな報告書を発表。CBDCを検討する中央銀行が増えており、またステーブルコインについて調査する銀行も増加していることが分かった。一方、BISは暗号資産(仮想通貨)はまだ主流ではないものとして捉えている。
この報告書は先進経済国(AE)と新興市場国・発展途上国(EMDE)の両方を含む世界60の中央銀行を対象として実施された。
結論部分でBISは、現在ほとんどの中央銀行がCBDCの事例を調査しており、全体として、純粋に概念的な試みから実験およびパイロットプロジェクトへと移行していると指摘。一方で、CBDCやデジタル通貨が世界で広範に展開されるのはまだ先のことであると見ている。
また、経済開発度により動機が異なる傾向も見られた。新興市場国・発展途上国の場合、金融包摂が主要な動機であり、先進経済国は、決済の効率性や安全性に焦点を当てている。
動機こそ異なるものの、対象となった中央銀行の86%が、CBDCのメリットとデメリットを探っるなど調査や研究を行なっているという。
うち約60%の中央銀行は、予見可能な短期(1~3年)および中期(1~6年)的には、どのようなタイプのCBDCも発行することはないと回答したが、発行可能性が「非常に低い」と回答する割合は減少しており、それに比例して「可能性がある」と判断する国・地域は増加した。
BISは「CBDCに関する継続的な研究開発」「Covid-19 パンデミックの間に加速した決済のデジタル化」「グローバル・ステーブルコインの脅威」などが、CBDCへの関心を高める要因になっているかもしれないと推測している。
ステーブルコインのリスクを検討する国が増加
法定通貨などと価値が紐づくステーブルコインについては、調査対象となった中央銀行の3分の2が金融の安定性に与える影響を検討している。1年前と比較して、より多くの新興市場国・発展途上国地域の中央銀行がステーブルコインの調査を開始した。
このことは、世界で広く採用されるステーブルコインが国際的に与える影響に対する認識の高まりを反映している可能性があるという。積極的にステーブルコインの調査を行っていない国・地域は、ほとんどの場合、CBDCの調査を活発にしている新興市場国・発展途上国の小さな国や地域だった。
ステーブルコインについては、米FRBのパウエル議長も、今月優先的課題としてリスクを検討したいと発言している。
ステーブルコインは「一夜にしてシステム上重要になる可能性」があると指摘した上で「私たちはまだ、その潜在的なリスクや、リスクをどのように管理するかについて方策を持っていない」状態であるため、引き続き重点的な課題としたいと語った。
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仮想通貨はまだニッチな存在
仮想通貨については多くの中央銀行がニッチ(小規模・主流ではない)なものとして捉え続けているようだ。調査では、国内および国際決済における仮想通貨の利用状況と今後の利用見込みについて、中央銀行への質問項目が設けられている。
回答の大半は、昨年の結果と同様に、国内・クロスボーダーともにニッチなグループによる利用や、些細な利用しか事例がないというものだった。
一部の例外として、公的機関への信頼が低い非日常的な状況下で仮想通貨が有望視されることがあるという。
以前より、自国通貨が不安定なナイジェリアなどアフリカの国や、ベネズエラなどでは仮想通貨に注目が集まっており、取引で使われることが多くなっていると報告されているところだ。
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