Huobiトークンのバーン
中華系大手仮想通貨取引所Huobi Globalが発行する独自トークン「Huobi Token(HT/フォビトークン)」の月次バーン(焼却)量が、過去最高に達した。
Huobiでは、前月収益の約20%に相当するHTを毎月バーンすることにより、供給量を減少させ、流通量を調整している。21年2月15日時点のデータによると、21年1月1日から31日までの収益を対象にした最新のバーンでは、約1,100万HT(約61億3,600万円)が焼却された。この数字は、660万HT(約23億3,700万円)をバーンした前回(20年12月)と比較すると、116%増加しており、Huobiの増益が窺える。
HTとは
Huobi Token(HT)とは、Huobi Globalがイーサリアムブロックチェーン上で発行したERC-20規格のトークンだ。日本では20年6月に、Huobi Japanで上場している。
発行上限の5億HTが、18年1月のローンチ時に全て発行され、追加発行は予定されていない。この5億HTのうち、20%(1億HT)が運営チームへ、さらに20%(1億HT)がプラットフォーム運営費用へ、60%(3億HT)がHuobi Globalのポイントカードを購入したユーザーへのプレゼントとして、割り当てられている。
上述の月次バーンや、その他投資家保護を目的としたバーンが行われた結果、現在の総量約2億5,000万HTのうち、約1億9,600万HTが市場に流通している。
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HTの使用用途
HTは主に、Huobi運営の取引所および後述のHecoチェーンで、以下の用途に使用されている。
- 送金
- 決済
- トレード
- Huobiにおける取引手数料割引:HT保有量に応じて手数料を割引。
- ガバナンス:コミュニティがHuobi Globalに提出した提案を、HT保有者が投票により決定。支持率50%以上で可決。
トークンバーン
HTの顕著な特徴の一つが、流通量調整を目的として、トークンバーンを実施していることだ。このトークンバーンは、HT保有者で構成されるガバナンスにて、投票で決定された。以前は四半期ごとに収益の約20%に相当するHTをバーンしていたが、20年2月以降は毎月バーンが実施されている。期間を四半期に一度から月に一度に変更する提案も、HT保有者のガバナンスで決定されている。
Hecoチェーンとは
HTは、上記の使用用途の他にも、Huobi ECO(Heco)チェーンと呼ばれるHuobi Group開発のブロックチェーン上でも利用されている。Hecoとは、開発者のイノベーション促進を目的に、20年12月にローンチされた比較的新しいプロダクトだ。
Hecoチェーンで最も特徴的なサービスが、「メタトランザクション(Meta Transaction)」と呼ばれる機能だ。これは、HT保有者を対象にした、一種の特典のようなものだ。メタトランザクションでは、HT保有量に応じてユーザーが7つのグレードに分けられており、グレード毎に課されるガス代(トランザクション手数料)が異なっている。要するに、HT保有量が多ければ多いほど、支払うガス代が少なくて済む。ユーザーが支払わなかった分のガス代は、Hecoが負担する。これによりHT保有者は、他のユーザーよりも低コストで、Heco上のサービスを利用できる。
また、トランザクションの高速処理もHecoの売りだ。公式資料によると、Hecoのブロック生成時間(間隔)は平均3秒で、TPS(Transaction Per Second/1秒間当たりに処理できるトランザクション数)は500超えだという。この数字は、HPoSと呼ばれるHeco独自のPoS(Proof-of-Stake)コンセンサスアルゴリズムを採用し、バリデーターの数を最大で21ノードに限定することにより、可能になっている。
その他にも、イーサリアムブロックチェーンを基盤にしているためスマートコントラクトの実行が可能であり、クロスチェーン(異なるチェーン間)のトランザクションもサポートしている。
このように、中央集権的取引所が独自トークンを用いて開発を行っている点、低コストおよび高速処理が特徴である点、ならびにスマートコントラクト実行が可能である点などは、バイナンスが開発を行うバイナンス・スマートチェーン(BSC)に非常によく類似している。
今後の開発計画
20年12月にローンチされたばかりのHecoは、現在開発の第一段階「Tinder」フェーズにある。このフェーズでは、トランザクション処理能力の向上やガス代削減、dApp(分散型アプリケーション)エコシステムの構築など、基本的な機能が実装される予定だ。
Tinderフェーズが完了すると、21年第三四半期を目処に、開発の第二段階「Spark」フェーズに入る予定だ。Sparkでは、開発者専用ツールキット、フォーラムおよび様々なコミュニティでの決定事項を通して、インフラを拡大していくという。Sparkに続いて22年第二四半期に予定されている第三段階の「Flame」フェーズでは、クロスチェーンプロトコルのアップデートが、23年第一四半期に予定されている第四段階の「Blame」フェーズでは、複数のバーチャルマシーンおよびシャード案の実装が、それぞれ計画されている。