デジタル人民元の方向性
中国人民銀行は実証実験中のデジタル通貨、デジタル人民元(DCEP)について、完全に匿名化するのではなく部分的に匿名化する方針を示した。
DCEPの最高責任者であるMu Changchun氏によると、管理できる程度の匿名性を導入し、デジタル人民元をキャッシュレス決済の手段だけでなく、高度な財務監視をする手段にする。事実上初めて実現する監視手段がデジタル人民元のメリットになるとした。
日常的な小規模取引は匿名での利用が可能にし、取引の履歴は商業利用や個人間では確認できないものの、中央銀行や規制当局からは監視可能にする仕組みを導入する。
また限定的な匿名性については、「国際合意に則り、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロリストによる資金調達など、犯罪行為を監視、規制するために必要不可欠である」と発言。国際社会においても限定的な匿名性が認められる点をその背景に挙げた。
以前から、中国当局はデジタル人民元の導入目的として、不正利用を根絶するために、全ての取引をデジタル化し追跡出来るようにすると語ってきたが、日米欧の先進7カ国(G7)は、デジタル人民元を通じて得た取引データの恣意的な利用を牽制する共同声明を発表するなど、自国民の個人情報が中国当局に筒抜けになるプライバシー問題を懸念する見方が出ていた。
個人のプライバシーと犯罪規制
財務監視(取引の追跡)はプライバシーの権利に反するのではないかという懸念についてMu氏は、「監視システムを疎かにしプライバシーの権利を強調する事は、望ましくない結果を招く」とコメント。「以前に完全匿名利用のビットコインが犯罪行為に利用された事例を考慮し、薬物売買やオンラインカジノなど、違法な経済活動を防ぐためである」と主張。
中国人民政治協商(CPPCC)のメンバーの多くからは、財務監視を行うことで、犯罪行為を少しでも減らすことに繋がることから、デジタル人民元が早急に実装される事を期待しているという意見が出ているという。
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一方、デジタル人民元の財務監視については、中国国内の事業者からも影響を懸念する見方が出ている。
中国のマカオ特別行政区業者は、中国国民、特に富裕層は、政府による高額な資金移動の監視を嫌っており、「彼らはカジノエリアを郊外に変更する可能性があり、大幅な顧客流出が考えられる」と予測。今後、デジタル人民元を導入する上で、政府と富裕層の関係性も重要な課題となる可能性も懸念している。
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