CoinPostで今最も読まれています

DeFiが抱える課題のソリューション「Kyber3.0」と2021年の展望|Kyber Network寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Kyber Network レポート

Kyber Networkの開発進捗や方向性、月ごとの取引量の変化などを、エコシステムレポートとして毎月公開しています。この記事では、2月のエコシステムレポートから、Kyber Networkの現状や成長を示す統計、ホットトピックなどをお届けします。

2021年の方向性

Kyber Networkは流動性プロトコルとして、Ethereumで稼働するDEXなどDeFiプロダクトのトークン交換需要に応えています。「リザーブ」と呼ばれるプロフェッショナルなマーケットメイカーが戦略的に流動性を提供し、Kyberにて行われる1日10億円規模の取引量を長らく牽引してきました。

しかし、プロフェッショナルが責任を持って流動性を提供する方法は制限も大きく、Uniswapなど、誰でも流動性が提供できるプロトコルに主役の座を明け渡す要因にもなってしまいました。

そこで2021年にはUniswapのように、誰もが流動性を提供できるシステムAMM(Automated Market Maker)を改良してローンチすることが決定しています。それが Kyber DMM(Dynamic Market Maker)です。

多くのユーザーにKyber DMMを通して流動性提供してもらい、ベストレートを提供して取引高を奪還していく狙いです。

KNCトークンの変更点

Kyber Networkでは先月、KNCトークンの今後について熱い議論が交わされました。抽象的なテーマとしては、「KNCトークンコントラクトを変更しよう」というものです。

トークンコントラクトとは、KNCを発行、記録しているスマートコントラクトです。

コントラクトを変更すると、現在の制約を排除することができます。排除できる最も大きな制約とは、「KNCトークンの追加発行」です。

コントラクトの変更自体は特に大きな変更ではありませんが、「制約あるコントラクトから移行し、トークンの追加発行が可能な体制にする」ことが大きな争点として議論が進みました。

追加発行は既存トークンの価値を希薄するので、保有者からは忌避されます。しかしKyber 3.0でDMMを導入する場合、ユーザーに対するインセンティブが必要となります。

わざわざ流動性をUniswapや他のDeFiでなく、Kyber DMMで提供することを選択してもらうためには資金が必要ですし、その他の状況に対応するため、柔軟なトークンモデルが求められます。

最初はやはり大反対の意見も多かったものの、

  • 実際、追加資金なしでDMMの成功が難しい
  • YFI, AAVEでは20~30%の追加発行を行ったが価格は下落していない

といった理由から、「多少のトークン希薄があっても、成長がそれを上回るであろう」と考える意見が優勢になっています。

このフォーラムのトピックでは140のコメントとそれに対する返信が集まり、非常に活発なトピックとなりました。

そして3月には実際の投票が行われ、圧倒的賛成により可決しました。

トークンコントラクトの変更により、今後はKNCの最大発行数を変更することができるようになります。その是非やその時期、方法や目的については更なる提案と議論が行われる予定です。

DMM ホワイトペーパー公開

Kyber Network開発の目玉である DMM(Dynamic Market Maker)のホワイトペーパーが、Kyberリサーチャー Andrew NguyenとCEO Loi Luuにより公開されました。

通常のAMM(Automated Market Maker)とは異なり、手数料率が自由に変化したり、価格帯を表すカーブを自由に設定できる強みがあります。これは現在主流となっているAMMの資本効率性を強く高めるための変更点であり、長年AMMを苦しめてきた問題点を解決する試みです。

しかし、3月にUniswapがversion 3.0 を発表し、新たな概念 「Concentrated Liquidity(集中流動性)」を導入することになりました。これにより資本効率性を最大4,000倍、将来的には20,000倍にまで高めることが可能となります。

Kyber Networkが導入するDMMが今後、Uniswap v3を超える開発を続けることに注目が集まります。

Kyber Networkの取引高

Kyber Networkの成長指標は取引高です。Kyber Networkを通した取引高が高まるほど、ユーザーはレートに満足している証拠ですし、KNCトークンの価値も高まり、Kyberエコシステム全体が取引高から恩恵を受けることになります。

2021年2月までの取引高が集計されています。

2021年は、1月にはこれまでの最高値である約700億ドルを記録しています。2月は少し落ち着いたものの、今後も改良を続けて取引高を伸ばしていくことが大切です。

Kyberに取引高をもたらしているもの

取引高こそKyberの重要指標ですが、その取引高は様々なアプリケーションからもたらされています。

もっともKyberの流動性を利用しているのは、DEXアグリゲーターの1inch.Exchangeです。ユーザーが1inchを通してトークン交換を行うと、1inchはベストレートを提示する流動性プロトコルを探します。

Kyberがベストレートであれば、1inchはKyberから流動性を引っ張り、ユーザーに提供します。彼らは1ヶ月で200億円以上の取引高をもたらす、最もKyberを利用しているアプリケーションです。

今後ユーザーがトークン交換や高度なDeFi運用をしたい場合、モバイルから気軽に行うシーンが多くなると見込まれるため、モバイルからの流入額を増やすことも重要です。したがって、KyberSwapやTrust、 その他モバイルアプリケーションに対して使いやすい、統合しやすい環境を作ることが不可欠です。

Kyberに流動性を提供するリザーブの指標

Kyberは流動性プロトコルとして、多くのユーザーやアプリケーションからのトークン交換に応えます。その流動性を提供しているのは、リザーブと呼ばれるグループです。

Kyberを通して流動性提供しているリザーブは、プロのマーケットメイカーです。特に名前を明かさないチームもありますし、APRと呼ばれる特定トークン発行チームがいます。

Kyberの取引高のほとんどは、大量のトークンを保有している戦略的なマーケットメイカーであることが分かります。

よく取引されているコイン

Kyberに限らずですが、DeFi領域ではやはりステーブルコインの需要が大変に強く、「ほとんどがステーブルコイン」と言っても差し支えないほどの割合です。

USDCやUSDTは特定主体が発行するステーブルコインであり、流動性も非常に高くトレードに重宝されています。ステーブルコインを購入し、それを貸し出して金利を稼いだり、ステーブルコインを売却してETHの価格上昇を狙うなど、堅実な運用を狙う人から投機的トレーダーまで、多くの需要を満たしています。

今後のKyber展望

今後の注目ポイントは、Kyber3.0とUniswap v3がどのように競争していくのか、という点になることでしょう。Kyber3.0で導入されるDMMはあくまでも「AMMの資本効率化」にありましたが、Uniswap v3も大幅に資金効率を高めることに成功しています。

DeFiユーザーや開発者は必ず入念に比較した上で大金の利用を決定するため、今後もアップデートを続けてプロトコルを磨き上げることが必要です。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
07/27 土曜日
08:10
マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
07:35
BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
07:05
野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
06:40
米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
06:20
ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
07/26 金曜日
17:10
「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
17:10
ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
15:13
ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
14:43
Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
14:15
カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
12:55
アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
12:14
仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
11:00
トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
10:30
BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。
10:00
ソラナ初事例、パラオ共和国がデジタルID発行
主権国家が仮想通貨・ブロックチェーンであるソラナ上で、法的アイデンティティを発行する初めての事例となった。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア