CoinPostで今最も読まれています

KNCを通してDeFiトークンの価値を考えてみる|Kyber network寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

KNCを通してDeFiトークンの価値を考えてみる

仮想通貨について情報収集をしていると、必ず分散型金融(Decentralized Finance、DeFi)についての話題が目に入るはずです。今回はそんなDeFiプロダクトが発行するDeFiトークンの価値を考える方法について書きます。

DeFiに関するある程度の知識を前提とするので、まだDeFiの全体像がつかめていない方は、ぜひ以下の記事を参考にして学んでみてください。

参考:広がるDeFi(分散型金融)エコシステム|Kyber network寄稿

参考:DeFi(分散型金融)が歩んできた歴史|Kyber network寄稿

DeFiトークンを保有する意味

Coingeckoの “Top 100 DeFi Coins by Market Capitalization” を見ると、様々なDeFiトークンがあることが分かります。よく話題になるトークンといえば、

  • Uniswap の UNI
  • Maker の MKR
  • Compound の COMP
  • Curve の CRV
  • Synthetix の SNX

などがあり、その他の有力DeFiプロトコルもほぼトークンを発行しています。例えばUniswapやMakerの重要な決定事項はそれぞれUNI、MKR保有者の投票により決定されるため、これらのDeFiトークンはガバナンストークンとも呼ばれます。

ガバナンストークン保有者は通常、手数料率変更や具体的アップグレードなどプロトコルの改善提案を行い、投票で決定します。さらに決定事項を実際に行動に移し完遂するなど、全ての面において大きな貢献を行います。

最も大切な決定事項の一つに、プロトコル収益の分配方法があります。通常DeFiプロトコルは、利用されるにあたって手数料を徴収しています。

この収益の使途はガバナンストークン保有者で決定することが普通です。したがって、収益はガバナンストークン保有者への報酬として利用されることが強く期待されることになります。

この収益こそ、DeFiのガバナンストークンに価値があると考えられている理由です。

KNCトークンの実例

ガバナンストークンの役割についてよく知るため、Kyber Networkのガバナンストークン、KNCの実例を紹介します。Kyber Networkは、DeFiでも特にDEXなどに対して流動性を提供するプロトコルです。

Kyber Networkのプロトコル収益

tracker.kyber.network を開くと、Kyber Networkの取引高を知ることができます。

trackerを見れば、例えばこの直近1ヶ月Kyber Networkで記録した取引高は約6億3000万ドルであることが分かります。これが仮に1年続けば、年間取引高は約75億8000万ドルになります。

Kyber Networkでは現在、各取引高のうち 0.1%のETHをプロトコル収益として徴収しています。月間取引高を6億3000万ドルと仮定すると、1ヶ月あたり63万ドル分のETHがKyberプロトコルが稼ぐ手数料となります。同じ取引高が続くと仮定すれば、年間で756万ドル分のETHです。

この収益の使い道は、Kyber Networkのガバナンストークン、KNCの保有者が決定します。

KNC保有者によるガバナンス

Kyber Networkでは、kyber.org にて、KNC保有者の投票によるガバナンスを行っています。

引用元: kyber.org

KNC保有者はこちらに保有KNCをステークすることで、投票に参加することができます。上記の画像ではまさに、「Kyberプロトコル収益をどのように分配するか」を決定するための投票が行われています。KNCをステークした保有者は、好きな選択肢に投票します。

Kyberは現在ETHでの収益分配として、以下の3つ分配先を定めています。

  • 供給を減らすため、ETHでKNCを購入し、KNCをバーン(消滅)させる
  • KNCをステーク&投票した人にETH分配
  • Kyberの流動性を提供している人たちのインセンティブとしてETH分配

上記の3つの分配率を投票で決定し、分配することにしています。

このような分配方法は各プロトコルにより異なりますし、Kyberの場合も提案さえあれば、分配先や使途を投票で変更することも可能です。例えば、収益の30%は開発費として備蓄する、などの決定も考えられるでしょう。

このように、KNCを保有してガバナンスに参加すれば、Kyber収益の分配を受けることができます。そのためKNC保有者にはKyberプロトコルを改善し、持続的なものにするため盛んにフォーラムで議論するインセンティブがあります。

大型アップデートの綿密な提案があれば、保有者間で多くの議論が起こる
引用元:KNC Token Migration & Upgrade Discussion

KNCのリターンを計算する

Kyberは取引高に比例して収益を高めていくため、取引高の成長を考えることでKNC保有のリターンを考えることが可能です。例えば現在の1KNCの価格が 1.64ドルであったとします。

引用元:CoinGecko

  • 1KNC = 1.64ドル
  • 年間予想収益 = 756万ドル

この年間収益の756万ドルをKNC保有者で分けることになりますが、KNCを持っていれば無条件で受け取れるわけではなく、ステークして投票することが必須条件になっています。現在ステークされているKNCの量は、kyber.org で確認できます。

引用元:kyber.org

左上の Total Stake を見れば、約6000万KNCがステークされていることが分かります。ステークは追加されたり引き出されたりもしますが、年間を通して6000万KNCがステークされると考えるとすれば、756万ドルを6000万KNCで分配することになります。

756万ドルを6000万で割ると、0.126ドルです。つまりKyberガバナンスに参加していれば、1KNCあたり年間0.126ドルを受け取れる計算です。

現在のKNC価格1.64ドルで考えると、年間リターンは約7.7%であると言えます。あくまでも取引高や手数料率、ステーク量が年間通して不変であることを前提に計算しています。特にKNC自体の価格下落には別途の注意が必要です。

stakingrewards.com では、KNCのようなガバナンストークンを始めとした、ステークにより分配が受けられるトークンのリターンを自動で計算してくれます。

左枠に保有KNCを入れれば月間と年間リターンを計算してくれる。
引用元:Staking Rewards

各DeFiの重要指標を考えた上で投資する

DeFiトークンの価値を支えているのはプロトコル収益と、その分配の見込みです。したがって中長期的な保有を考えるのであれば、

  • プロトコルの収益構造
  • 将来的な伸び率
  • 時価総額
  • ステーク率
  • 保有者間のディスカッション

など、リターンに関係する情報をできる限り勤勉に集め、熟慮の上に決定することが大切です。KNCの例で言えば、将来的に取引高が2倍(半分)になればリターンも2倍(半分)であり、手数料率を0.05%に下げて取引高が変化無ければリターンは半分になります。

プロトコルの重要な変更は全てリターンに影響するので、フォーラムでの議論は一定程度確認しておく必要もありますし、自ら積極的に提案して議論を喚起し、改善に貢献することも必要でしょう。

その他、株式のように収益と時価総額から評価を数値化して分析のサポートをしているウェブサイトもあります。

Token Terminalでは、各プロトコルの収益などの指標がまとめられています

DeFiトークンに投資する際は、こういった指標を元に具体的な計算もしてみてください。一言で「収益」と言ってもそれぞれ意味が違う場合があるので注意しましょう。

Uniswapなどは現在のところ、まだトークン保有者へ分配するための収益を徴収していません。そういった場合、今後の見込みをしっかり調査することが大切です。

参考:初心者でもわかるUniswap完全ガイド|Kyber network寄稿

自分が長期的視点で投資しようとするトークンがあるならば、その仕組みを細かく調査し、stakingrewards.comToken Terminal 等のサイトでデータをよく吟味することを心がけることをお勧めします。そして何よりDeFiの魅力は誰もが参加できる分散ガバナンスです。

自分がトークンを保有するプロトコルについて最もよく知り、提案や実行により主体的に関わることが大切で、DeFiを楽しむ秘訣でもあります。それが結果として投資効果を高めることに繋がるはずです。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
07/27 土曜日
08:10
マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
07:35
BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
07:05
野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
06:40
米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
06:20
ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
07/26 金曜日
17:10
「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
17:10
ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
15:13
ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
14:43
Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
14:15
カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
12:55
アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
12:14
仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
11:00
トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
10:30
BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。
10:00
ソラナ初事例、パラオ共和国がデジタルID発行
主権国家が仮想通貨・ブロックチェーンであるソラナ上で、法的アイデンティティを発行する初めての事例となった。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア