はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

広がるDeFi(分散型金融)エコシステム|Kyber network寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Kyber network寄稿

前回の記事『DeFi(分散型金融)が歩んできた歴史』では、Ethereumで展開されるDeFiプロトコルに1兆円規模の資金が集まっていること、そしてその市場規模がEthereum発足からICO、DEXといった地道な開発コミュニティの努力の歴史によって裏付けられたものであることを示しました。

DeFiアプリケーションも、Binance等の取引所に資金を預けずにトークン売買ができるようなシンプルなDEX(分散型取引所)からスタートしました。しかしDeFiコミュニティの発展と開発者の参入は増え続け、現在ではDEXだけでなく、複雑な金融機能もスマートコントラクトで表現したアプリケーションが揃っています。

こうしたDeFiアプリケーションが増えることで、集権的な主体に依存せずに暗号資産を運用できる選択肢が与えられたことになりますし、何よりも世界中の人々に「インターネットさえあれば、居住地や身分に関係なく、高度な資産運用ができる」環境を提供することができます。

現在多くのユーザーに支持されているDeFiアプリケーションを紹介します。

分散型ステーブルコイン

「DeFiアプリケーションを運用する」と言っても、暗号資産はドルや円など法定通貨に比べるとボラティリティが高く、暴落リスクも伴います。したがってDeFiユーザーには、ドルや円と同じ価値を持つステーブルコインが不可欠であり、それなくしてDeFi利用を広げることはできません。

MakerDAO

MakerDAOは、イーサリアム上で分散型ステーブルコインDAIを発行するプラットフォームです。DeFiを開発するチームの中でも最も歴史があり、多くの開発者やユーザーから厚い信頼を集めています。

ユーザーはETHや他の暗号資産を担保としてロックすることでステーブルコインDAIを借り入れ、それを売ったり貸したりして運用することができます。DAIを発行するユーザーが増えると、市場にDAIがたくさん放出されます。一般ユーザーはそのDAIを購入することで、暗号資産のボラティリティを回避できます。

MakerDAOのこちらのページでウォレットを接続すれば、すぐに担保と引き換えにDAIを発行できます

ステーブルコインはUSDTやUSDCなど、ある主体が責任を持って発行する便利な方法もありますが、それは同時に彼らにコインの凍結権限があることも意味します。利便性は非常に高いものの、発行主体や特定国家の管理下に置かれたコインでは、不当に政府に迫害される人々や一定国に住む人々などに対して、国境や立場を超えたDeFiを提供することができません。

そんな観点から、DAIのような「分散型」ステーブルコインはDeFi内でも圧倒的な存在感を放っています。

様々なDEX (Decentralized Exchange、分散型取引所)

トークン交換をEthereum上のスマートコントラクトで実行できるのがDEXですが、同じDEXでもたくさんのプロトコルが稼働しています。また、単純に交換するだけでなく、マーケットメイカーとしてDEXを利用することもできます。

Uniswap

引用元:Uniswap Protocol Analytics

UniswapはシンプルなDEXで、最も多くの取引高を誇るプロトコルです。ユーザーは資産を預ける必要なく、ウォレットから直接トークン売買ができます。

取引所のようなオーダーブックは存在せず、トークンが貯まっているプールから売買する販売所形式であり、新規ユーザーも使いやすいUXが好まれています。

単純に売買する(テイカーになる)だけでなく、自分のトークンをプールに拠出する(メイカー, 流動性提供者になる)こともできます。テイカーが売買する度に0.3%(変更可能性あり)の手数料を得ることができるため、暗号資産の運用手段としても注目されています(場合によってはimpermanent lossと呼ばれる損失が出ます)。

こちらからウォレットを繋げば、トークン売買でなくマーケットメイカーになれます(ETHと、それと同額のトークンをプールに提供)

KyberSwap

Uniswapと同じ販売所形式ですが、こちらはユーザーが自由にマーケットメイカーになることはできません。マーケットメイクするのは複数のプロの流動性提供者であり、彼らは提示するレートを競いあう仕組みです。

したがってUniswapにはトークン種類やユーザー数で劣るものの、トークン交換を求めるユーザーにベストレートを提供できる可能性が高くなっています。リミットオーダー(指値注文)が可能であるなど、DEXとして多機能であることが特徴です。

単純な売買だけでなく、資金を預けることなく指値注文も可能

Curve

引用元:Curve

Curveはステーブルコイン同士の交換に特化したDEXです。DeFiで利用されるドル建てステーブルコインはDAIだけでなく、Tetherの発行するUSDT, Circleの発行するUSDCなど数種類があります。

また、WBTCやrenBTCなどBTC建てステーブルコインも数種類存在します。これらの「同じ価格のものを交換する」ことに特化したメカニズムを持つのがCurveです。もちろん、流動性を提供して手数料を得ることもできます。

暗号資産の貸し借りができるレンディングプラットフォーム

ステーブルコインなどの暗号資産を保有している場合、それを貯蓄/運用する手段が必要です。最も簡単な運用手段は「暗号資産を貸し出して利息を得る」ことであり、その機能を提供するDeFiプロダクトも多く利用されています。

CompoundAAVE

CompoundのMarket Overview画面

CompoundとAAVEは、暗号資産の貸し借りをイーサリアム上のスマートコントラクトで仲介するDeFiアプリケーションです。「暗号資産を貸し出し、利息を得たい」と考える世界中のユーザーがCompoundやAAVEのスマートコントラクトに暗号資産をプールします。

そして「暗号資産を借り入れて、それを運用したい」と考えるユーザーは、そのプールから暗号資産を借り入れることができます。借り手が払った利息が、貸し手が受け取る利息の原資となります。

DeFiは全ての人に平等にサービスを提供するため、ユーザーの身分確認は一切ありません。したがって暗号資産を借りたいユーザーは必ず、借りる金額以上の担保を提供する必要があります。

担保の価値が下落して借入額を下回りそうになると精算され、担保が借金返済に利用される仕組みです。担保を提供し、利息を払ってまで暗号資産を借りる主な理由の一つは、トークンをショートするためです。

ウォレット接続すればここですぐに暗号資産を貸し出せる。貸し出した資産を担保として暗号資産を借りることもできます

このように、取り扱い通貨や精算方法などに各プラットフォームの違いが生まれています。

その他デリバティブなど

暗号資産の運用や決済受付が広がると、オプションや先物取引などデリバティブが必要となりますし、その他高度な暗号資産運用方法もDeFiで活用されています。

Opyn

引用元:Opyn

Opynのトップページでは、

  • Hedge ETH risk
  • Hedge DPI risk
  • Hedge UNI risk

など、トークンのボラティリティリスクを緩和するためのオプションが提示されています。各暗号資産のプットオプションやコールオプションが並んでおり、ユーザーは気に入った条件のオプションを購入したり、反対に発行して売却することができます。

Opynではオプションの条件がトークン化されているため、他のDeFiプラットフォームを活用しつつ、ユーザー間でのスムーズなオプション売買が可能です。

TokenSets

暗号資産のポートフォリオを管理するDeFiアプリケーションです。例えばBTCとUSDを一定割合で運用しつつ、マーケットが一定の動きを見せると自動的にリバランスを行う、など条件を自由に規定した暗号資産運用を実現しています。

このリバランス機能を利用し、暗号資産の様々なインデックスを構築することも考えられています。複雑なポートフォリオ戦略も単一のトークンで表現されており、ユーザーは好みの戦略を取ったトークンを購入するだけで、多種多様な資産運用を実現することができます。

様々なポートフォリオや投資戦略を表現したトークンが購入可能

Yearn Finance

これまで述べたようにDeFi領域では、

  • ステーブルコインを借りる
  • DEXのマーケットメイキングをする
  • 暗号資産を貸し借りする
  • その他高度な戦略を簡単に行う

など、細かく考えると膨大な運用選択肢があります。

たとえばYearn Financeの “Vault” はそんな状況の中、コミュニティで議論することで「最良のDeFi運用戦略」を決定し、それをスマートコントラクトに規定します。ユーザーがそのスマートコントラクトに暗号資産をロックすれば、それを規定された戦略通りに運用し、利益を上げて還元してくれます。

Yearn Financeが提供するVaults. シンプルなものから複雑な戦略まで (beta版ゆえにリスクが伴います)

エコシステムとしてのDeFi

いくつかのDeFiアプリケーションを列挙しましたが、これらの資産の動きがスマートコントラクトで規定されること、そしてそれがプロダクトの枠組みを超えて密接につながっていることが重要です。

  • ほぼ全てのDeFiアプリケーションがDAIを活用
  • KyberSwapやOpynはUniswapのプールを活用
  • TokenSetsがポートフォリオ分散のためKyberを活用
  • Yearn Financeは全てのDeFiを利用して運用

これらの事例から分かるように、お互いのスマートコントラクトやそこに集まった流動性を利用することで、複雑なDeFiアプリケーションが成立しています。

銀行などの金融機関はオープンAPIに取り組むことで投資や資金管理の利便性を高めていますが、DeFiではより簡単に開発者が他プロジェクトのスマートコントラクトを利用し、複雑な機能を実現することができます。

さらに、債務超過の危機にあるポジションの精算など、上記DeFiプロトコルの運営をより円滑にするため、個人ユーザーの参加が求められる場面も少なくありません。

スマートコントラクトを組み合わせて欠けているピースを埋めることに加え、ユーザーたちがもっと簡単に参加できるようなオープンネスを磨き上げ、より堅牢なDeFiエコシステムを実現させることが期待されています。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
07/04 金曜日
17:43
マックハウス、仮想通貨事業でゼロフィールドと基本契約
アパレル大手マックハウスが暗号資産事業に参入。国内マイニングシェア1位のゼロフィールドと基本契約を締結し、ビットコイン購入とマイニングの両輪戦略で収益多様化を目指す。
17:11
SMBCグループ、事業共創施設「HOOPSLINK」を丸の内に開設 Web3や生成AIの活用を目指す
SMBCグループが事業共創施設「HOOPSLINK」を丸の内に開設。Web3などを活用し、スタートアップから大企業まで多様なパートナーと新事業を創出。
15:08
みんなの銀行、ソラナ基盤のステーブルコイン事業化に向け共同検討を開始
みんなの銀行がソラナ(SOL)基盤のステーブルコインとweb3ウォレットの事業化に向け共同検討を開始。Solana Japan、Fireblocks、TISの3社と協業し、新たな金融体験の創出を目指す。
13:50
米上場アンバー・インターナショナル、約37億円調達で仮想通貨準備金戦略を加速
米上場のアンバー・インターナショナルが機関投資家から2550万ドルを調達し、1億ドルの仮想通貨リザーブ戦略を強化。パンテラ・キャピタルなど著名投資家が参加。
13:00
米ストラテジー社に集団訴訟 ビットコイン保有リスクを軽視と主張
米国でストラテジー社に対する集団訴訟が提起された。ビットコイン投資戦略を過大評価しリスクを軽視したと主張している。新会計規則適用後の損失計上が争点の一つになっている。
12:55
メタプラネット支援コンソーシアム、タイ上場企業買収でビットコイン戦略を東南アジアに拡大
メタプラネット支援者らが筆記るコンソーシアムがタイ上場企業DV8の買収計画を発表した。日本で成功したメタプラネットのビットコイントレジャリー戦略をタイで再現し、さらに東南アジアに展開する第一歩として注目される。
12:36
オルタナ信託、BOOSTRY・ALTERNAと連携しデジタル証券の管理体制を強化
デジタル証券特化の「オルタナ信託」設立。BOOSTRYとALTERNAが協業を深化し、STの取得から販売まで一貫した新たな枠組みを構築する。
11:35
米雇用統計好調でビットコイン一時11万ドル超、アーサー・ヘイズが下落リスクを警告する理由は?
米国6月雇用統計が予想を上回る14万7000人となり、ビットコインは一時11万500ドルまで上昇した。しかしBitMEX創業者アーサー・ヘイズ氏は、米財務省がステーブルコインを国債購入の受け皿として活用することで市場から流動性が奪われ、8月開催のジャクソンホール会議前に9万ドル水準へ下落すると予測した。
11:00
アルトコイン取引の増加傾向続く 仮想通貨OTCレポートが公開
Finery Marketsは、仮想通貨のOTC取引に関する2025年上半期のレポートを公開。ビットコインやイーサリアム、ステーブルコインの他にアルトコインの取引が増加傾向を継続していると指摘した。
10:35
「1兆ドル予測は楽観的すぎた」、 JPモルガン ステーブルコイン時価総額の2028年予測を下方修正=報道
JPモルガンはステーブルコイン市場の2028年予測を5000億ドルとし、他社の1-4兆ドル予測を否定。決済利用は6%に留まり、主用途は仮想通貨取引と指摘。
10:00
ビットコイン、クジラによる売却と機関投資家の需要が拮抗=報道
仮想通貨ビットコインの大口保有者が過去1年で50万BTCを売却する一方、機関投資家の需要増加により価格が膠着している。今後のビットコイン価格については様々な見解がみられる。
09:30
ロビンフッドCEO OpenAI株式トークン化を「革命の種」と表現も、提携否定で波紋広がる
ロビンフッドがOpenAI株式トークン化サービスを欧州で開始したが、OpenAIは提携を否定。テネフCEOは「トークン化革命」と強調するも、未上場株式の権利問題が浮き彫りに。
09:16
仮想通貨SEI、国内取引所OKJに新規上場へ
国内暗号資産取引所OKJが2025年7月8日からセイ(SEI)の取扱いを開始。ゴールドマンサックス・Robinhood出身者が開発した高速ブロックチェーンで、米国でETF申請も話題。入出庫は7月8日、売買は7月11日17時開始予定。
09:00
ビットコイン今年4度目11万ドル超え、株価相関強まり最高値更新も視野に|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは3日に今年4度目となる一時11万ドル突破を記録した。7月3日から4日にかけて、トランプ政権の大きく美しい法案が可決されたことに加え、米雇用統計が底堅い推移を示したこと、さらにシンシア上院議員が暗号資産の減税法案を提出したことが追い風となった。
08:05
ETF購入減速でビットコイン価格上昇に陰りか、ETHは蓄積量が過去最高に=Cryptoquant分析
仮想通貨ビットコインETFとMSTR(ストラテジー)の購入は大幅減速、全体需要の縮小で価格上昇が鈍化。一方、イーサリアムは6月に蓄積アドレスが史上最高を記録、機関投資家による大量保有が続く。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧