はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

「CBDCが金融システムを混乱させる可能性」、米格付け会社フィッチ

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

CBDCのリスク

米格付け会社のフィッチ・レーティングスは、一般向けの中央銀行デジタル通貨(CBDC)の広範囲に及ぶ導入は、リスク管理が不十分な場合、金融システムを混乱させる可能性があると指摘した。

フィッチが言及しているのは、いわゆるリテール型(小口決済型)と呼ばれるCBDCで、以下の二つを主なリスクとして示した。

①市中銀行の預金口座からCBDC(中央銀行)の口座へ、資金移動の流れが急速に増加するリスク。

②中央銀行と一般経済との接点が増えることで、サイバーセキュリティの脅威が高まる可能性。

リテールCBDCの場合、これまで中央銀行と直接の取引関係を持たなかった個人が、CBDCを小口決済に利用することになる。そのため、アクセス数の急速な増加などにより、中央銀行システムが抱えるリスクも増大し得ると考えられる。

急速な資金移動のリスク

広範にわたる資金移動によって「金融の仲介機関(市中銀行)の排除」が起こり、金融システムの混乱につながりかねないとフィッチは指摘している。

資金移動リスクとその影響に関しては、下記の「SBI R3 Japan」の解説記事が詳しい。その論旨を以下にまとめた。

  • 市中銀行に預金口座を持つ一般消費者が、利便性と安心感から中央銀行口座に資金を移動する動きが広まると、市中銀行が資金不足に陥る。
  • 従来の預金モデル(一般消費者が長期にわたり預金を預けっぱなしにする)が崩壊すると、企業へ貸し出していた資金の回収が急務となり、貸し剥がしが起こる可能性
  • 市中銀行は金融市場から資金調達を行うが、マーケットの仕組みは複雑で、市場調達リスクを抱えることになる
  • ドルなどの外貨調達の場合は、海外の金融機関が貸し渋りを起こす可能性も

このような観点から、金融市場を不安定化させ、金融危機に類似した問題を発生させかねないという結論に至っている。

関連:CBDCの落とし穴~ロイター記事より~(前半)

CBDCの利点

フィッチは、CBDCの利点として、キャッシュレス決済の強化による恩恵(決済コスト、スピード、回復力の向上)、銀行口座を保有しない層の金融包摂、金融取引データの追跡能力の向上による金融犯罪防止などをあげている。

さらに、プログラム可能なCBDCの特性を生かし、災害支援や景気刺激策の一環として、CBDC口座への直接送金など、新たな政策の選択肢を広げる可能性にも言及した。

しかし、これらの利点の多くは、立場が変わると欠点ともなりかねない。ユーザーの視点から見ると、中央銀行による金融取引データの掌握は、重大なプライバシーの侵害と捉えることもできる。また、個々の電子ウォレットの保有額に対する制限などが設けられた場合、一般ユーザーが、現金の代わりにCBDCを利用するメリットがあるのか、疑問も生じるだろう。

米国はCBDCに慎重な姿勢

日本を含む世界の多くの中央銀行が、CBDCプロジェクトに取り組んでいるが、その進捗状況には大きな開きがある。世界4大会計事務所の一つ、PwCは、リテール型とホールセール型(銀行間)のプロジェクトに分けて、各国のCBDC開発の成熟度ランキングを発表しているが、日本はホールセール型で10位にランクインしている。

関連:デジタル通貨(CBDC)プロジェクトが進む国ランキング=PwCレポート

一方、CBDCの取り組みに慎重な姿勢を見せる米国はいずれにもランクインしていない。

米連邦準備銀行(FRB)の一つであるボストン連銀は、昨年の夏から、マサチューセッツ工科大学(MIT)とCBDCの共同研究を進めているが、同行のEric Rosengren総裁は、先週、CBDCの発行には今後さらなる調査が必要になると発言している。

世界の基軸通貨である米ドルをデジタル化するにあたっては、流動性やセキュリティなどの観点からも、他国の通貨とは異なるレベルの課題が生じることは想像に難くない。

Rosengren総裁は、金融包摂の向上や国際金融取引コストの低下、金融政策導入の際の柔軟性をCBDCの利点として挙げる一方、政策面に対する影響やトレードオフについては、十分に考慮すべきだと主張している。

関連:ボストン連銀総裁「CBDCの金融安定に対する脅威など、米国はトレードオフを考慮すべき」

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08/12 火曜日
20:03
米ウォーレン議員、仮想通貨規制強化を求めトランプ政権の影響に懸念
米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米国には強力な仮想通貨規制が必要であると主張し、共和党主導の規制は業界への便宜供与であるだけでなく、トランプ大統領の腐敗を助長すると警告した。
17:54
ビットフライヤー、イーサリアムのステーキングサービスを開始
仮想通貨取引所ビットフライヤーがイーサリアム(ETH)ステーキングサービスを開始。年利2.03%で毎週報酬付与、資産ロック不要でいつでも売却・送付可能となっている。
17:00
「Web3決済の社会実装へ」UPCXのCEOが語る実用化戦略|WebXスポンサーインタビュー
大規模カンファレンス「WebX 2025」のタイトルスポンサーとしてブース出展を決めた、UPCX中野誠CEOの独占インタビュー。2016年からブロックチェーン開発に従事し、日本の暗号資産取引所への上場を実現。WebX 2025での展示内容や決済分野でのWeb3実装について聞く。
15:05
CEAが240億円相当のBNB購入 IPトークンの仮想通貨トレジャリー企業も登場
CEAが仮想通貨BNBトークンを240億円相当購入し、BNB財務戦略を進めている。一方、ヘリテージはストーリープロトコルのIPトークンを120億円相当購入する計画だ。
13:02
メタプラネット、約90億円でビットコインを追加購入
株式会社メタプラネットは2025年8月12日、仮想通貨ビットコインのトレジャリー事業の一環として518BTCを追加購入。保有量は18,113BTCに達し、戦略的な財務運用が続いています。
11:00
ビットマインのイーサリアム保有量7000億円突破 「5%の錬金術」戦略進める
ビットマインの仮想通貨イーサリアム保有量が7,350億円相当を突破。100万ETH超を保有する初のトレジャリー企業になった。シャープリンクも新たに資金調達しETH蓄積を進める。
09:51
ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジン、仮想通貨決済を導入
Shift4は、ジェフ・ベゾス氏の米宇宙開発会社ブルーオリジンのニューシェパードへの搭乗に仮想通貨決済を導入したことを発表。ビットコインやイーサリアムなど対応銘柄の例も挙げた。
08:57
トランプ一族関連のWLFIトークンの財務戦略、仮想通貨企業ALT5が開始へ
トランプ一族関連のWLFIトークンの財務戦略を開始することを仮想通貨フィンテック企業ALT5が発表。資金調達を行い、総供給量の約7.5%を保有する計画だと述べている。
08:52
ビットコイン最高値圏から反落、米CPI発表を前に警戒感強まる|仮想NISHI
アナリスト仮想NISHIのビットコイン最新相場分析。過去最高値から反落の背景と今後の展望。米CPI発表前の市場心理、イーサリアムとの連動性、オプション市場動向を専門アナリストが解説した。
08/11 月曜日
19:45
エルサルバドル、新法可決でビットコイン投資銀行実現へ
エルサルバドルが投資銀行法を可決し、機関投資家向けビットコイン投資サービスが解禁となる。投資銀行の設立条件は、最低資本金5000万ドルで、25万ドル以上の資産保有者がサービスの対象となる。
18:45
トランプ政権、仮想通貨評議会高官が退任 民間復帰へ
米ホワイトハウス仮想通貨評議会のボー・ハインズ事務局長が退任し民間復帰する予定だ。同氏はトランプ政権の仮想通貨政策報告書作成をデビッド・サックス氏と共に主導していた。
09:30
アーサー・ヘイズ、先週売却のイーサリアム買い戻し 予想外の相場上昇で方針転換か
仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏は先週売却したイーサリアムなどの銘柄を買い戻した。短期下落予想が外れ、ETHは4,200ドルを突破して7日間で約20%上昇している。
08/10 日曜日
12:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、リップル裁判終結やイーサリアム関連の投資根拠分析など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン1730万円台回復、利下げ期待で反発も来週CPI警戒|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコイン相場はFRB人事のハト派傾斜や利下げ期待で1730万円まで回復。雇用統計下振れによる景気後退懸念から一時1660万円まで下落したが、トランプ政権の仮想通貨政策やETF資金流入回復で持ち直し。来週のCPI発表がカギ。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|米401k仮想通貨投資解禁の大統領令に高い関心
今週は、アーサー・ヘイズ氏と金持ち父さん著者ロバート・キヨサキ氏によるビットコイン下落可能性の指摘、トランプ大統領による米401k仮想通貨投資解禁の大統領令への署名に関するニュースが最も関心を集めた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧