環境問題で銀行に矛先
環境保護団体のグリーンピースとWWFが発表した新たなレポートによると、英国の銀行は、年間8億500万トンのCO2排出に融資などで間接的に関わっており、CO2排出量の国別ランキングにおいて、銀行セクターのみで9位に位置するという。
レポートは「英国が資金援助した排出量」を明らかにするもの。英国の金融セクターによって資金を調達した二酸化炭素の排出量を2019年のデータを基に推定している。
それによると、ロンドン(=英国)の銀行は英国の年間純排出量の1.8倍にあたる8億500万トンのプロジェクトに融資や投資などで資金を提供してきた。8億500万トンのうち、銀行が4億1500万トン、アセットマネージャーが3億9000万トンとなっている。
また、英国の金融業を国として見た場合、この「国」はCO2の排出量で他国と比較し9番目に位置するという。これはドイツよりも上位に位置する。こういった結果をもとにレポートでWWFとグリーンピースは、パリ協定で示された目標に向けた新たな規制の導入を求めている。
環境問題において、銀行が批判の矢面に立たされるのは英国だけではない。グローバルな銀行は化石燃料のプロジェクトや企業に多額の投資を行ってきたため、多くの批判を浴びている。
5月21日には、主要7カ国からなるG7が、石炭火力への公的な資金提供を終了することに合意したばかりで、環境問題への世界的な関心はますます高まっている。
なお、レポートによると、今回推定に採用した手法では金融業を完全には網羅できておらず、「今回の分析は最終的かつ包括的なものでもない」としている。
ビットコインと環境問題
ビットコインもまた、マイニングによってエネルギーを浪費しているとの批判を受けてきた。
ビットコインの二酸化炭素排出量は、2019年の研究(Chirstian Stollら、2019)によると、2億2900万トンとされる。これはヨルダンやスリランカと同等の排出量だという。
また、マイニングの盛んな中国における研究(Shangrong Jiangら、2021)では、政府による介入の無かった場合、中国のビットコイン産業は2024年に1億3000万トンを排出すると予測されている。
電力の消費で見た場合、ケンブリッジ大学によると、ビットコインの現在の電力消費量は、オランダ一国の電力消費量よりも多いという。
一方で、マイニングはクリーンな電力を使用しているとの反論もある。同大学の研究によると、ビットコイン(PoW)のマイニングは平均で39%が水力発電などの再生可能エネルギーから供給されている。これは、中国でマイニングが盛んな背景に、豊富な水資源を活用した水力発電による、安価な電気代の提供があるためだ。
ビットコインと伝統的な金融業との対立で見ると、ビットコイン支持者にひとつの論拠を与えたとも見れる今回のレポートだが、議論は絶えない。