仮想通貨マイニングの環境負荷を懸念
米ニューヨーク州が、ビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)マイニングを制限する法案の審議を進めている。民主党のKevin Parker上院議員らが起草したこの法案は、上院において36対27で可決、州下院に送られたところだ。
同法案は、環境上の懸念から「炭素ベースの燃料を利用する発電施設」内で行われる仮想通貨マイニングについて、新たに操業許可を与えることを禁ずるものとなる。また、既存のマイニング業者は現在のエネルギー使用レベルを上限とし、エネルギー消費を増加させる計画がある場合には、操業許可を更新しないものとする。
こうした法案の規定は、ビットコインなどプルーフ・オブ・ワーク(PoW)のコンセンサスアルゴリズムを持つすべての仮想通貨マイニングについて適用されるとしている。
ニューヨーク州当局では、マイニングセンターの電力消費量や、温室効果ガスなど汚染物質の排出量、水・大気・動物など環境への影響などについて、評価書を発行することも求める。
ニューヨーク州は、2019年の「気候リーダーシップ・地域保護法(Climate Act)」で、2050年までに炭素排出量を1990年比で85%以上削減することを目標に掲げており、今回の動きもその一環だ。
法案は、仮想通貨マイニングが「ニューヨーク州で拡大している産業」であり、多くの場合は使われなくなっていた化石燃料発電所を再利用していることが多いと指摘。エネルギー消費量が大きいことから、削減目標の妨げにもなると懸念している。
炭素排出量削減に取り組む企業
一方、こうした仮想通貨マイニングの制限に向けた動きに素早く対応している企業もある。
ニューヨーク州北部でビットコインマイニングおよび発電施設を運営しているGreenidge Generationsを含むグループ企業Greenidge Generation Holdingsは、今年6月1日より、マイニング事業で生じるすべての温室効果ガス排出量を相殺すると宣言した。
またマイニングで得た利益の一部を、ニューヨーク州や米国全土の再生可能エネルギープロジェクトに投資する予定だという。
利用するカーボンオフセット(排出量相殺)プロジェクトは、継続性があり、検証可能なものを選ぶために、American Carbon Registry(ACR)などの団体が提供する信頼性の高いプロジェクト一覧から選定する計画だ。
Greenidge Generation HoldingsのCEO、Jeffrey Kirt氏は、次のようにコメントした。
私たちは、完全にカーボンニュートラル(炭素排出量を差し引きゼロにすること)でありながら、今までと同様にビットコインの取引検証など処理を行って、そのネットワークを保護していくことができると示したい。他の企業にも、温室効果ガスの排出量を削減する試みに参加するよう呼びかける。
また同社は、2017年にガス火力発電を開始して以来、すでに毎年発電事業により排出される二酸化炭素の100%を相殺するために、地域温室効果ガスイニシアチブ(RGGI)にも参加していると説明。
RGGIは、米国北東部を中心に州を横断して行われているプログラムで、参加企業はオークションを通じて、あらかじめ上限が規定された全体のCO2排出量から、その企業が使える枠を購入。オークションの利益は、再生可能エネルギーなどのプログラムに投資され、クリーンなエネルギー経済の創出に寄与する。