デジタルシェケルを実験的に発行か
イスラエル銀行(中央銀行)のAndrew Abir副総裁はパイロットプログラムの一環として、同行がすでに中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行したと述べていた。The Jerusalem Postなどが報道した。
この発言はデジタルシェケル(シェケルはイスラエルの法定通貨)をめぐる会議の席で行われたもの。この席で副総裁は「イスラエル銀行によるデジタルシェケル発行の可能性は理論的なものにすぎなかったのではないか」と批判を向けられた。これに答えて、すでに実験の一部として発行していることを明かした形だ。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)
CBDCとは「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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ただ発行はあくまでも実験として行われたもので、今後数年の内にデジタルシェケルを実際に人々が利用するものとして発行する可能性は低いという。
副総裁は「今後5年間でCBDCが現実に発行されるかどうかは分からない」とした。他の国もCBDCの開発や検討を始めている段階であることを考えると、以前よりも可能性は上昇したものの、5年以内にデジタルシェケルがローンチされる可能性は50%に留まっているという。
CBDCはビットコインを促進しない
また副総裁はデジタルシェケルに人々が期待している点についても、いくつか方向性を説明した。まず、デジタルシェケルは銀行を排除するものではないと指摘、「銀行は、今後の決済システムにおいても重要な部分であり続ける」と述べる。
さらに、CBDC発行は「ビットコイン(BTC)など暗号資産(仮想通貨)を保護することを意味しない」として次のように話した。
(CBDCは)決済システムに関することだ。その点、ビットコインは決済システムではなく、通貨でもない。最良のシナリオではビットコインは金融資産であり、最悪のシナリオではネズミ講のようなものとなる。
脱税やマネーロンダリングとCBDCの関係性については次のように語る。
デジタルシェケルは、税金を回避したい人々に現金の使用をやめさせることはないだろう。脱税したい人は、CBDC以外を用いてそうするだろう。不正な資本蓄積や金融犯罪の問題に対処するには別の方法があり、CBDCはこれらの問題に応えるものではない。
デジタルシェケルのもたらす利点
イスラエル銀行は、5月にデジタルシェケルを検討するワーキングペーパーを発表し、これに対する意見を広く募集していた。CBDC発行のメリットが、そのリスクやコストを上回る場合には、発行を検討する方針だ。
この際、デジタル法定通貨のもたらす恩恵としては、主に以下の点などを掲げている。
- 効率的で進化した安全な決済手段を構築する
- 決済システムにゆとりを持たせ、緊急時にも適切に機能させる
- 国際決済のための効率的で安価なインフラを打ち立てる
この他、プライバシーの確保や、不正行為への資金流入防止も挙げていた。不正行為については、今回副総裁が発言したように、それらを完全に防ぐことは想定していないようだ。
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