期待されるステーキングの収益性
米金融大手JPモルガンのアナリストは、よりエネルギー効率の高いブロックチェーンの普及が進むと、暗号資産(仮想通貨)のステーキングから発生する利益は、個人投資家だけではなく、機関投資家にとっても新たな収入源となるだろうと主張している。
米フォーブス誌の報道によると、JPモルガンは新たなレポートの中で、イーサリアム(ETH)がプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行すると、PoSコンセンサス・メカニズムの採用が他のブロックチェーンでも推進される可能性が高いと指摘。
現在、仮想通貨のステーキングは年間で90億ドル(約1兆円)相当の収益を生み出しているが、イーサリアム2.0移行完了後、業界全体での収益総額は200億ドル(約2.2兆円)、2025年までには400億ドル(約4.5兆円)にまで急拡大すると予想している。
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現行のイーサリアム・メインネット(PoW)は、2022年までにイーサリアム2.0に統合され、PoSへと完全に切り替わる予定。
レポートでは、米大手取引所コインベースの場合、2020年に1,040万ドル(約11.6億円)だったステーキングによる収益は、2022年には2億ドル(約223億円)となると推定した。
米コインベースは、イーサリアム2.0のステーキング代行サービスを今年4月から開始している。
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ステーキングの利回り
ステーキング関連データサイト「Staking Rewards」は現在、218の仮想通貨銘柄と1万7507のステーキング・プロバイダーを追跡しているが、その平均報酬率は14.95%に上ると発表している。
JPモルガンは、現在の「ゼロ金利環境」では、利回りが投資のインセンティブになっており、ステーキングで得られる高い利回りによって「ドルや米国債、マネーマーケットファンドなどの他の資産クラスへの投資と比較した場合の、仮想通貨保有の機会費用を軽減できる」と説明している。
安定した収益を手にするには
継続してステーキング報酬を受け取れるか否かは、仮想通貨市場のボラティリティに依存するところが大きい。利回りが高くとも、ステークした資産自体の価値が下落すると、実質的に得られる収益も縮小する。仮想通貨市場が成熟し、ボラティリティが低下することで、ステーキングから安定した収入を得ることが可能になる。
そのため、JPモルガンのアナリストは、仮想通貨のボラティリティの低下がステーキング市場の拡大を後押しする重要な要因となるだろうと指摘した。
また、ステーキングに対する懸念事項として、アナリストは、トークンの新規発行によるインフレの可能性をあげた。仮想通貨の価値を維持するためには、新規にトークンを発行する際のプロトコルに、インフレ抑制の仕組みが実装されていることが重要だと注意を促した。
堅調なETH2.0ステーキング
CryptoQuantのデータによると、6月25日時点でのETH2.0へのステーキング額は591万6192ETHと堅調に推移している。
また新規に預け入れたアカウント数(32ETH以上)も、6月25日までの直近2ヶ月間で、6911から3万4,910と約5倍となり、飛躍的な伸びを見せているようだ。