仮想通貨はデジタル化戦略の一環
ベトナムのファム・ミン・チン首相が、ベトナム国立銀行(略称SBV、ベトナムの中央銀行)に、2021年から2023年の期間で、ブロックチェーン技術に基づく暗号資産(仮想通貨)の試験プログラムを行うように求めたことが分かった。地元メディアThe Phnom Penh Postが報道した。
首相は、デジタル政府に向けた電子政府開発戦略「No 942/QD-TTg」に署名したところで、仮想通貨の調査もこの戦略の一環だ。仮想通貨の他、人工知能(AI)、ビッグデータ、拡張現実や仮想現実(AR/VR)についても、電子政府構築のために開発・活用することが目指される。
第942号によると、仮想通貨の研究・構築・試験運用は、コアテクノロジーを開発しコントロールするための重要な位置づけにあるとして、仮想通貨の研究や試験運用を管轄する機関をベトナム国家銀行(中央銀行)に定めた。実施期間は2021~2023年と明記している。
これまでベトナム国立銀行(SBV)は、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨はベトナムで法的に認められておらず、決済手段としての使用にも法的根拠や保護がないと強調してきた。2018年には、マネロンやテロ資金調達、脱税のリスクを挙げて、商業銀行などが仮想通貨の取引を行わないように求めている。
しかしこうした姿勢は少しずつ変化している模様だ。ベトナム財務省も、仮想通貨についての調査を実施し管理方法を提案するための特別なワーキンググループの設立を発表している。
「デジタルマネーは避けられないトレンド」
ホーチミン経済大学イノベーション研究所のHuynh Phuoc Nghia副所長は「デジタルマネーは避けられないトレンド」で、ベトナム政府が仮想通貨のパイロットテストの方法を研究して実行する時が来たと話した。
パイロットテストの実施は、政府が仮想通貨のプラス面とマイナス面を見つけることや、より適切な管理メカニズムを構築することに役立つという。また、ベトナムではキャッシュレス決済が増加しており、中央銀行がデジタル通貨を認めることは、それを促進させるだろうとも付け加えた。
ベトナムでは仮想通貨の法的根拠は整備されていないが、国民の仮想通貨への関心は高い。調査企業Statistaによると、2020年にベトナムは「仮想通貨を使用または所有したことがある」者の割合が世界で二番目に高かった。首位のナイジェリアが32%、ベトナムが21%でこれに続いている。
またベトナムのテクノロジー企業関係者からは、仮想通貨の正式な定義が必要だという声も挙がっている。「仮想通貨、デジタル通貨、電子マネー」など、様々な言葉が使われていることで混乱を招く可能性があると指摘した格好だ。
なお、今回ベトナム政府がパイロットテストを行う仮想通貨とは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるか、ビットコインなど民間の仮想通貨なのか、その方向性はまだ報じられていない。
CBDC(中央銀行デジタル通貨)
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨を指す。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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フィリピンでも仮想通貨に関心高まる
アジアの事例としてはフィリピンで、国内最古の証券取引所「フィリピン証券取引所(PSE)」が、将来仮想通貨取引を提供することを希望していることが分かった。
PSEのCEO、Ramon Monzon氏はCNN Philippinesに、関心の高まりを考えると「仮想通貨はフィリピンでもはや無視できない資産クラス」だと話した。先に引用したStatistaの調査で、フィリピンは仮想通貨ユーザーが世界3番目に多い国にランクインしている。