「国際DeFi連合」が公開書簡
世界各地から350社を超える暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン企業が参加する複数の業界団体が、分散型金融(DeFi)の規制のあり方について、連名で金融活動作業部会(FATF)宛ての公開書簡を送ったことがわかった。
FATF:金融活動作業部会
FATF(Financial Action Task Force)は、資金洗浄対策やテロ資金対策の国際基準(FATF勧告)を策定し、その履行状況について相互審査を行う多国間の枠組みのこと。G7を含む37カ国・地域と2の国際機関がFATFに加盟しており、FATF勧告は、世界190以上の国・地域に適用される。1989年設立。
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いわゆる「国際(世界)DeFi連合」(Global DeFi Coalition)として連携する以下の6団体は、この新しい金融セクターにおける規制原則として6つ指針を提案した。この提案は、6月25日に発表されたFATFの仮想通貨ガイダンス適用に対する報告を受けたもので、連合は「バランスの取れた」アプローチを求めている。
- ACCESS(シンガポール)
- ビットコイン協会(Bitcoin Association:スイス)
- ブロックチェーン協会(Blockchain Association:米国)
- Blockchain for Europe(欧州)
- CryptoUK(英国)
- INATBA(International Association for Trusted Blockchain Applications、ベルギー拠点)
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規制プロセスには業界のインプットが不可欠
「国際DeFi連合」6団体からFATFへの書簡では、業界が規制に関する推奨事項を提案することで、当局が「潜在的な規制の不備」を回避できるようにサポートすることを目的としていると述べている。
規制の主なリスクは、早まった規制によりイノベーションが阻害され、独創的な新しいアイディアが生まれないことだと連合は指摘。昨年、「驚異的な成長」を遂げた一方で、まだ「革新と実験の初期段階にある」DeFiについて、規制当局が十分に理解し、適切に規制アプローチを調整することが極めて重要だと主張した。
そのため、規制当局と業界関係者がグローバルレベルで、また地域レベルで協議できるフォーラムの設立や、規制当局が業界のワーキンググループに参加し意見交換を行う機会を設けるよう提案した。
また、規制を設計する時点で、技術そのものに対してではなく、活動やその結果に対して規制を設けるように注意する必要があると強調した。例えば、紙には詩を書くことも、契約書を書くこともできるが、契約書は規制しても詩を規制すべきではないと述べ、「紙や(ソフトウェアの)コードではなく、活動主体や提供される活動を規制しよう」と提案した。
6つの提案
書簡では、DeFiのメリット(コスト削減、透明性の向上、システムリスクの軽減、金融包摂、プライバシー保護など)を説明し、中央集権的なシステムで起きる犯罪を防止するための規制を、DeFiに強いるべきではないと強調した。また、仲介者の存在しない分散型金融では、管理者の役割や責任に焦点を当てるのではなく、システムと違法行為の監視をサポートする技術的ソリューションの採用など、新たな規制の枠組みが必要となるとした。
以下が、FATFへの具体的な提案となっている。
1. 事業者に課せられる規制は、対応するビジネスモデルに関連する、より広い文脈の要素を考慮すべきである。(例:顧客資金にアクセスしないデータ処理業者に、顧客資産の凍結など技術的に不可能なことを求めない。)
2. デジタル化(完全に自動化)されたプロセスに、アナログや手動ステップの導入を要求しない。(対面での顧客確認を要求するなどがその一例)
3. 金融仲介業者が顧客確認で協力することを許可する。(第三者による身元証明を有効とすることで、一つの取引に多くの業者が関わるDeFiで、同じKYCの義務を繰り返さなくて済むようにする。)
4.差別化されたリスクベースのアプローチを採用する。(パブリック・ブロックチェーン上の取引リスクは、プライベートな取引よりもマネーロンダリングのリスクが低いことを認識し、それに見合った対策を適用する)
5. 基本的な規制原則のガイドラインは、Defi業界と共同で策定されるべきである。(コード作成者を含む業界の専門家と協力して、急速に発展する分野の最新の情報を取得し、適切で柔軟な規制の対応を図ること)
6. 仮想通貨のグローバルな性質を考慮し、規制当局と業界の間で協力と連携を強化する。