欧州のデジタルユーロ実験
EU圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)は14日、中銀デジタル通貨(CBDC)の「デジタルユーロ」プロジェクトを調査フェーズに移行する方針を発表した。今後24ヶ月間、CBDCのデザインや利用に関する課題を調査する形となる。
ECBの発表によれば、デジタル・ユーロの発行は定まったものではなく、発行の是非は今後決定されるものだと説明。欧州圏における共通のデジタルな法定通貨が実現した場合でも、現金と併用して存在する方針も示した。
調査フェーズでは、利用者のニーズに基づいたデザインを検討。フォーカスグループなどを用いて、プロトタイプを構築、リスクレスで誰でもアクセスできる効率的なデジタル・マネーを目指すという。
また、欧州圏における規制の枠組みの変化についても議論を進める予定だ。ECBの役員であるFabio Panetta氏は「欧州議会などの政策立案者と連携していく」と説明しており、CBDCのもたらす規制的な検討事項を随時報告すると説明した。
デジタルユーロについて、ECBのChristine Lagarde(クリスティーヌ・ラガルド)総裁は以下のようにコメントした。
デジタルユーロに関する報告書を発表してから9ヶ月が経った。この間、我々はさらなる分析を行い、市民や専門家に意見を求め、いくつかの実験を行い、有望な結果を得ることができた。これらのことから、我々はギアを上げてデジタルユーロのプロジェクトを開始することを決定した。
デジタル時代においても、市民や企業が最も安全なお金である中央銀行のお金を利用できるようにすることを目指す。
デジタルユーロ検討の経緯
ECBは過去9ヶ月間、デジタルユーロに関する調査を実施しており、今回発表された調査フェーズへの移行は、研究結果に基づく動きと言える。
欧州中央銀行やユーロ圏各国の中央銀行は20年9月、中銀デジタル通貨に関するタスクフォースを通じて実験的作業を開始。CBDCに関する評価や、技術的な実現可能性(フィージビリティ)を調査していた。
実験では以下の領域で調査が行われ、評価対象となったデザインでは大きな技術的障害は確認されなかった。
- デジタルユーロ台帳
- プライバシーと資金洗浄対策
- 流通量の制限
- オフラインでのアクセス
調査ではブロックチェーンやユーロシステムの銀行間決済システム「TIPS」などは秒間4万以上の取引を処理できたと報告。また、調査結果は中央集権的な枠組みと分散化された要素の共存は可能であることを示唆したという。
他にもデジタルユーロのインフラが環境に優しいとECBは説明。「1秒で何万件もの取引を処理するために消費する電力はビットコイン(BTC)などの暗号資産の電力消費に比べればごく僅か」だと主張した。
一方、ケンブリッジ大学の統計データではビットコインの採掘における電力消費量の推定値が減少傾向にあることが確認されている。