はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

分散型ID(DID)とは 主な仕組みとメリットを解説【後編】 XSL Labs寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

分散型IDとは(後編)

前回の記事では、私たちはDIDの様々なユースケースを提示しました。本記事では、DIDが問題を解決する仕組みについて技術的な解説を行っていきます。

また、続いて、DIDがどのようにして、インターネットの巨人に対して対抗する存在になり得るのかを説明していきます。

関連:DID(分散型ID)とは 将来的なユースケースを解説【前編】|XSLラボ寄稿

(本記事はXSL LabsのDIDに関する記事のPart2・3を基にしているため、前半部分については前編と重複する内容があります)

今回は、DIDに使われている、暗号署名や公開鍵暗号、証明可能な証明(Verifiable Credentials)などについて紹介していきます。

DIDは統一資源識別子(URI)の特殊なタイプであり、各ユーザーに一連の文字から構成される匿名IDを割り当てることが出来ます。SYLメソッドを使用すると次のようになります。「did:syl:6fb56ca533abb42」。この識別子は証明の発行者が主張する内容にリンクされ、ユーザーのウォレットIDまたはIPFSの分散型サーバーに格納されます。

検証可能な証明と公開鍵暗号方式

これらの文書は検証可能な証明とよばれ、DIDの保有者による申し立ての検証を必要とする全てのエンティティが、その主張が正確であることを検証できるようになります。

DID保有者に関する主張は、信頼されたサードパーティーが代わりに行うことも可能です。これを情報の信頼が連鎖していると捉えることも可能です。この連鎖から、国家機関、学校、病院、企業などの信頼できる情報発行者のリストを作成することが出来ます。

最初のDIDは彼らのものでなければなりません。彼らはその後他のDIDユーザーに、彼ら自身に関する情報が含まれた検証可能な証明を発行することが可能になります。検証可能な証明はそのようにして、検証済みであり且つユーザーが検証可能な信頼できる情報を提示することが可能になります。

これらの発行者による証明書は、信頼された第三者による暗号署名によって検証可能になり、公開鍵・秘密鍵の仕組みが関わっています。これらの鍵は一方向性暗号を用いて情報の暗号化を可能にし、二つの鍵のうち一方の鍵に含まれる関数によって簡単に暗号化することが出来ます。同時に、もう一つの鍵を知らなければ、復号化することはできません。

DIDの場合、DIDを持つ各エンティティは、DIDドキュメントと呼ばれるスマートコントラクトで誰もが参照できる公開鍵と、DID保有者のみが保有する秘密鍵があります。

暗号化ハッシュ関数

証明書に署名するには、その正しさを保証するために、公開鍵暗号方式と、暗号ハッシュ関数という二つのプロセスが関わります。

ハッシュ関数とは、データを特徴づけるハッシュを得るために利用される一方向性の関数です。最初のデータセットがどのようなものであっても、結果として得られるハッシュは常に同じです。

デジタル署名では、特に暗号化されたハッシュ関数に着目しています。ハッシュ関数は、別のデータセットが同じハッシュを生成することが極めて低い可能性であることを保証するため、この関数を利用し、文書の完全性を確保することが可能です。暗号ハッシュ関数と非対称公開鍵暗号を組み合わせ、署名の5つの特徴である真正性、偽造防止、再利用不可、変更不可、取消不可を確保できます。

暗号署名の例

例えば、エンティティAはDID対象者Bに発効された証明の作成者および発行者であることを暗号署名を足すことで保証したいとします。

エンティティAはハッシュ関数を用いて証明を含むドキュメントのハッシュを生成し、このハッシュを秘密鍵を用いて暗号化します。エンティティAは、その文書の署名を取得し、文書の末尾に添付してから、DID保有者Bに送信します。

文書の正当性を確認するには、BはAの公開鍵を用いて署名を復号する必要があります。仮にこれがうまくいかない場合、そのドキュメントはAによって送信されたものではないということができます。

復号出来た場合、BはAが使用したのと同じハッシュ関数を使用して、Aの署名が平文出含まれている該当の文書のハッシュを生成します。

二つのハッシュが同一であれば、署名が検証され、Aが文書を送信したこと、署名後に修正が行われていなことが確認できます。この暗号署名は、紙の文書と同様に、文章を認証する法的価値を持つことになります。

続いて、DIDがどのようにして、インターネットの巨人に対して対抗していけるのかを説明していきます。

IDデータの散逸対策

サービスがDID保有者の特定のID情報を必要とする場合、検証可能な提示(Verifiable Presentation)と呼ばれる新しい検証可能な証明が発行されます。

この新しいタイプの証明は、一人以上の発行者が発行した、一つ以上の検証可能証明から抽出された、一つ以上のデータで構成されます。これには、暗号署名が施され、文書のみが情報を必要とする検証者と共有されます。

DID保有者はどのデータを共有したいかを選択するただ一人の存在になるため、共有される情報の範囲を完全に管理することが出来ます。

また、DID保有者は、自分のID情報が検証を要求するサービスの要件を満たしているか検証されている間は情報を開示しないことも可能です。

これらの新しい検証可能な証明あるいは検証可能な提示は、生年月日を含む証明書から、DID保有者の生年月日が特定の日付の前或いは後であることを、生年月日そのものを含まずに組み合わせることが出来るゼロ知識証明になります。

対抗勢力としてのDID

非中央集権的な認証情報は、FacebookやGoogleのようなインターネットの巨人が持つ力を弱めることにもなります。

これらの企業は、インターネット上でのユーザーの活動、データ、プライバシーをコントロールし、それらを利益や政治的目的のために利用しています。

このような個人データの集中化は、プライバシーとは相容れないものであり、GoogleやFacebookによって生活のありとあらゆる側面が支配されるという危険性があります。

IDを提供するサードパーティーサービスもまた、同様にユーザーの認識なしに彼らをサービスのデータベースがハッキングされるリスクにさらしながら、集権的なアカウントからデータを収集します。また、サードパーティーは、この種の攻撃に備えているテックジャイアントよりもさらに危険でもあります。

このように接続アカウントが一本化されることで、ユーザーはハッカーによるデータの盗用、データを預かる側の力が高まるという二重リスクにさらされています。

DIDはその分散化とユーザーが自分のアイデンティティに対して主権を持つことで、自分の情報がどのように使用されるかを選び取ることが出来、巨大企業に対抗する重要な力になっていきます。

DIDはユーザーが全てのサービスに接続出来る単一の識別子の実用性と、ユーザーのデータのセキュリティを兼ね備えています。DIDが社会的に重要になるにつれて、インターネット上の私たちのアイデンティティはますます安全なものになるでしょう。

XSL LabsのSDIは既存のDIDと同様に使用でき、相互運用が可能です。最終的に、多くの人が分散型の識別子を利用するようになれば、自分自身がDIDを所有していなければ情報へのアクセスを要求することはできなくなり、詐欺やデータ盗用といったリスクはゼロに近づくでしょう。

XSL LabsのSDIの詳細については、Webサイトwww.xsl-labs.org を参照できます。XSL Labsによって開発されたエコシステム、およびプロジェクトのホワイトペーパーを紹介するビデオと説明が記載されています。

関連:DID(分散型ID)とは 将来的なユースケースを解説(前編)|XSL Labs寄稿

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08:50
ソニー銀行の米銀免許申請、通貨監督庁にICBAが否認を要求
ソニー銀行が米国で信託銀行の国家免許を申請したことについて、米組織ICBAが強く反対すると表明。通貨監督庁に書簡を送付して反対理由を説明し、ソニー銀行の申請を認可しないように要求した。
07:45
バイナンス、ブラックロックのトークン化ファンド「BUIDL」を取引担保として受け入れ
仮想通貨取引所バイナンスがブラックロックの「BUIDL」を取引所外担保として統合した。BUIDLはBNBチェーンで新シェアクラスも立ち上げる。
06:50
ビットマイン、45億円相当のイーサリアムを追加購入 新CEOにHSBC元幹部を任命
ビットマインが3000万ドル相当の仮想通貨イーサリアムを追加購入した。同社は新CEOにHSBCアジアTMT投資銀行部門の元責任者を任命した。
06:25
ビットコイン長期保有者が1カ月で12兆円相当BTCを売却、初期投資家も2400BTCを取引所へ送金
ビットコインの長期保有者が過去1カ月で約81万5,000BTCを売却し、2024年1月以来の高水準となった。初期保有者のオーウェン・ガンデン氏も2400BTC以上を売却している。
05:50
ストラテジーのセイラー会長、6900億円相当のビットコイン売却の噂を否定
ストラテジーのマイケル・セイラー会長が47000BTCの売却憶測を否定した。オンチェーン上の動きは保管業者の入れ替えによるもので、実際に購入ペースを加速させていると説明。
11/14 金曜日
21:20
CourtYard(コートヤード)でトレカをNFT化|使い方を初心者向けに徹底解説
トレーディングカードをNFT化して取引できるCourtYard(コートヤード)の使い方を解説。アカウント開設からPolygon上での取引方法、ガス代準備、リスクまで初心者向けに図解で詳しく紹介します。
21:00
ビットコインウォレットのおすすめは?種類・選び方・アドレス作成手順まで解説
ビットコインウォレットの種類や違い、安全な選び方を徹底解説。ハードウェア・ソフトウェアの比較からアドレス作成、セキュリティ対策まで初心者にもわかりやすく紹介します。
17:19
米ビットコイン現物ETF、過去2番目の規模の純流出 リスクオフが加速
11月13日、ビットコイン現物ETFは8.7億ドル(約1,340億円)の純流出を記録し、過去2番目の規模に。イーサリアムETFも3日連続で流出。FRB当局者の慎重発言を受け、仮想通貨と米国株が同時に下落。専門家は健全な調整との見方も。
16:46
Aptos Labs CBOが語る日本戦略|独占インタビュー
Aptos Labs CBO Solomon Tesfaye氏独占インタビュー。日本の大手金融機関との協議、ステーブルコインUSD1の展開、グローバル戦略を語る。
16:32
ビットコインのみ投資へ 欧州初のルクセンブルク国家ファンドがETF経由で1%配分
ルクセンブルク財務相が、国家ファンドFSILが他の仮想通貨ではなくビットコインのみに1%配分したことを明言。欧州初の国家レベルでのビットコイン投資となる。
15:06
ヴィタリック、分散化の原則を強化する「トラストレス宣言」を発表 中央集権化に警鐘
イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏らが「トラストレス宣言」を発表。検証可能性や検閲耐性など6つの核心要件を定義し、利便性優先による中央集権化リスクに警鐘を鳴らした。トラストレスこそがイーサリアムの本質であり、信頼できる中立性を達成する唯一の方法だと強調している。
15:06
JPYC、米サークル社オンチェーンFX網のパートナー通貨に採択
JPYCが米CircleのオンチェーンFX網「StableFX」で日本円パートナーに採択。USDCとの即時交換に対応し、国際送金・決済インフラで円建てステーブルコインの役割が拡大する見通し。
13:35
日本円ステーブルコインJPYC、発行額2億円突破
JPYC株式会社は、日本円建ステーブルコイン「JPYC」の累計発行額が2億円を突破したと発表。正式発行から約18日間での達成。保有者数は約3.1万人に達し、JPYC EXの口座開設数も6,000件に到達した。
11:57
「ビットコイン、株高に反応鈍く下落時は増幅」Wintermuteが非対称性を指摘
Wintermuteの最新レポートによると、ビットコインはナスダック指数と0.8の高相関を維持するも、株高局面で反応が鈍く下落時のみ敏感に連動。この負のスキューは2022年以来最高水準で、通常は市場底値圏で見られるパターン。資金の株式市場シフトと流動性低下が背景に。
11:49
大手銀BNYメロン、ステーブルコイン準備金のためのMMFを立ち上げ
大手銀BNYメロンがステーブルコイン発行者向けのマネー・マーケット・ファンド「BSRXX」立ち上げを発表。ジーニアス法対応の準備金ファンドとなる。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧