金融システムの安定性への影響
米連邦準備制度理事会(FRB)は8日、最新の金融安定性報告書を発表。資産評価と企業及び一般家庭の借入、財務レバレッジ、資金調達リスクに関する脆弱性を分析し、金融システムの安定性に与える影響をまとめた。
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その中で資金調達リスクに関しては、銀行は収益性が高く資本も充実していたと評価する一方で、一部のMMF(マネー・マーケット・ファンド)や債券、銀行ローンのミューチュアル・ファンドなどの資金運用手段には、構造的な脆弱性が見られると指摘。さらに、ステーブルコインにも資金調達上の脆弱性があると付け加えた。
ステーブルコインとは
ビットコイン(BTC)などの一般的な銘柄と違って、価値が常に安定している(=stable)仮想通貨を指す。米ドルと1:1の価値になるように運用されるものなど、複数の種類のステーブルコインがある。
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急成長したステーブルコインがもたらすリスク
報告書では、今月1日に米金融市場作業部会(PWG)が発表したステーブルコインのリスクに関する内容を踏まえ、ステーブルコインがもたらすリスクを分析している。
PWG報告書では、ステーブルコインの発行量はこの12ヶ月間で500%増加し、2021年10月時点で全ステーブルコインの時価総額が1,270億ドル(約14.3兆円)に達したと指摘した。
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FRBは、このように急激な成長を遂げたステーブルコインの懸念について以下のように説明した。
- ステーブルコインの裏付け資産の一部には、価値や流動性が低下する可能性のある資産を含んでいる
- 裏付け資産の価値が損なわれた場合、保証された価値で償還に応じることができない可能性がある
- MMFと同様の構造的脆弱性があり、取り付け騒ぎにつながる恐れがある
- このような脆弱性は、裏付け資産に関する透明性やガバナンス基準の欠如によって悪化する可能性がある
- 決済にステーブルコインが使われた場合、その成長力とも相まって決済及び金融システムにリスクをもたらす可能性がある
市場参加者のセンチメント
報告書では今後12ヶ月~18ヶ月間の金融安定性に対するリスクについて、ブローカー・ディーラーや投資ファンド、政策諮問企業及び大学の有識者などを含む26人の意見をまとめたコラムを公表している。調査は8月から10月中旬にかけて行われた。
回答者の約70%が、持続的なインフレ圧力と金融引き締めを最大の懸念事項として挙げ、コロナウィルスに対する懸念を上回った。
次に大きな割合を占めたのが、中国の規制及び不動産リスク、米中関係の緊張が高まるリスクについてだった。報告書本文の中でも、中国の不動産部門からの圧力が中国の金融システムの緊張を高め、米国に波及する可能性があると指摘された。
今年5月の調査では9位だった仮想通貨及びステーブルコインに関する懸念は、今回の調査では第5位となった。仮想通貨市場の成長に伴い、市場参加者の関心が高まった結果とも捉えられるかもしれない。
PWG報告書の作成にあたっては、ステーブルコインの規制について、仮想通貨業界関係者からのインプットも含め活発な議論が行われたようだ。最終的に報告書では、投資家保護、市場の完全性、違法利用の防止の観点から、国家レベルの法律の枠組みを決めることを進言し、リスク対応の具体的な提言も行なった。