仮想通貨トークンの登録を一時停止
米証券取引委員会(SEC)は10日、ワイオミング州を拠点とする自律分散型組織(DAO)「American CryptoFed」が発行を計画していた暗号資産(仮想通貨)トークンの登録差し止めを発表した。今後、正式な行政判断がおりるまで、これらのトークンの登録は保留されるという。
SECは、申請書類に重大な欠陥があったとして、次のように述べた。
SEC執行部は、申請書類に、2つのトークンや、監査済み財務諸表を含むAmerican CryptoFedの事業、経営、財務状況に関する必須情報が含まれていなかったとしている。
ワイオミング州では4月、DAOを法人として正式に認める法案が承認されており、American CryptoFedはこれを受けて同州で初めてDAOとして登録した組織だ。
関連:米ワイオミング州、自律分散型組織(DAO)の法人化法案が成立
DAOとは
「Decentralized Autonomous Organization」の略。一般的な企業などとは違い、経営者のような中央管理者が存在しない。参加メンバーやアルゴリズムによって運営管理が行われる。
▶️仮想通貨用語集
ステーブルコインとガバナンストークン
American CryptoFedは、2021年7月にモバイルバンキング企業mSHIFTによって設立されたDAOで、2種類のトークンを発行しようとしていた。
1つ目は、ステーブルコイン「Ducat」。ゼロインフレ・ゼロデフレを目標としたアルゴリズムを用いており、米ドルと紐付けされるが、ドルがインフレした分だけ、ドルに対して高くなるよう設定されている。
American CryptoFedの公式サイトによると、Ducatは、日常的取引や、価値の保存手段として使われることが想定されるものだという。
2つ目は、ガバナンストークン「Locke」。これを取得した者は、American CryptoFedの運営や方針決定についての投票を行えるようになる。将来的にはLockeの保有者が、DAO中心メンバーの影響を受けずに組織の方向性を決定していくことが想定されている。
American CryptoFedは9月、これらのトークンについてSECに申請書を提出し、承認を求めていた。その際、当該トークンは証券ではなく、ユーティリティー・トークンであるとしており、承認されるまではトークンの取引や送信を制限すると述べていた。
申請は、仮想通貨を支持するSEC委員として知られているHester Peirce氏が構想しているセーフ・ハーバー草案に示されたガイドラインに沿って行われた。しかし、このガイドラインはSECに正式に認められておらず、まだ草案段階のものであり、今回はうまく機能しなかったようだ。
関連:仮想通貨の規制猶予提案、更新:米SEC「クリプトママ」
SECの指摘
SECは、申請書には必須情報が不足している他、トークンが有価証券であるかどうかに関する矛盾した記述が含まれていたと指摘した。また、American CryptoFedは、ガバナンストークンLockeを福利厚生制度を通じて従業員に配布する意図があるとしているが、それが法的に配布されない可能性があることを開示していないとも述べている。
こうした状況により、投資家に必要な情報を提供していないと判断した格好だ。
今回のSEC命令は、2つのトークンの登録を停止することが、必要かつ適切であるか判断するための行政手続きを開始するものである。行政法判事が、これらのトークンの登録を却下または一時停止するかどうかを決定するまで、トークンの登録は保留されることになる。