投資家保護の重要性
米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は1日、「デジタル資産のコンプライアンスと市場の一体性サミット」(DACOM 2021) に登壇し、ジェイ・クレイトン前SEC委員長と暗号資産(仮想通貨)規制について議論した。
ゲンスラー委員長はまず、2.6兆ドル(約294兆円)の資産クラスとなった仮想通貨の空間には、十分な投資家保護の体制が欠如していると指摘。SECの中核的役割は投資家保護であるとした上で、仮想通貨は大きな可能性を秘めているが「信頼ある環境のみで発展できる」と規制の重要性を強調した。
同委員長は仮想通貨セクターを19世紀の西部開拓時代を意味する「ワイルド・ウェスト」に例え、多くのプロジェクトが規制当局を回避しようとしていると批判した。しかし、そのようなプロジェクトは、その形態に関わらず「公共政策の方針の外では、順調に発展することはできないだろう」と付け加えた。
さらに、市場取引でどのようなリスクを取るかは投資家自身の判断に委ねられている一方で、投資家保護と不正防止の観点から、仮想通貨の発行者は「完全かつ公正な情報開示を行うべき」であると強調。仮想通貨がSECの規制下に入らなければ、将来的に金融不安が生じる可能性があるとの懸念を示した。
SECへの登録
機関投資家の仮想通貨市場参入について尋ねられると、ゲンスラー委員長は、秘密鍵管理など仮想通貨の特性からカストディ機能の向上が必要であると指摘した。そのため、中央集権型、分散型を問わず仮想通貨取引所はSECに登録する方向で検討すべきだと主張。登録が困難な場合はSECと協力し解決策を見つけてほしいと注意を促した。
取引所であれレンディングであれ、これらの(仮想通貨)プラットフォームにとって、より良い方向は法律の範囲内で登録されるように努力することだ。
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また分散型金融(DeFi)に関しても、そのイノベーションは「本物」かもしれないが、公共政策の枠組みの外では生き残れないとして、規制の監督下に置かれる可能性を示唆した。
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ステーブルコイン
ゲンスラー委員長はイノベーションの一つとしてステーブルコインに言及。しかしステーブルコインの大半が取引プラットフォームで使用されていることから、「カジノのポーカーチップ」に例え、次のように批判している。
ステーブルコインは、当初、取引プラットフォームの効率化のために導入された。しかし、世界中の人々がマネーロンダリングや税務コンプライアンスを回避することを可能にした。
ビットコインETF
ゲンスラー委員長は9月、ビットコイン先物運用のETFについては前向きの姿勢を示し、10月には米国初となるビットコイン先物ETFが承認された。一方、ビットコインETFの申請企業の1つであるグレースケールは、現物ETFが依然として承認されていないのは「行政手続法」に違反しているとして、SECに苦情を申し立てている。
ゲンスラー委員長は、現物のビットコインETF が未承認であることについて尋ねられると、現在審査中の案件についてには話すことができないとコメントを避け、一般的なSECの基準に触れるに留まった。
これらのプラットフォームは登録を行い、投資家保護の範囲に収まり、適切な市場操作防止と透明性を確保し、カストディの問題に対処する必要がある。
現在SECは10件以上の現物ビットコインETFを審査中だが、1日には11月のVanEckの非承認に続き、WisdomTree社が申請した現物ビットコインETFに対して、非承認という判断を下していた。
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ビットコインETFとは
ビットコインETFとは、ビットコインを投資対象に含んだ上場投資信託(Exchange Traded Fund)のこと。投資信託の中でもETFは証券取引所に上場しているため、株式と同様に売買ができる。 /p>
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