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飲料業界におけるNFTの可能性と法的リスクとは|Gamma Law寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

高まるNFTへの注目

収益性の高い非代替性トークン(NFT)のオークション・セールが、世界中で話題を集め続けています。NFTは、RMDブロックチェーンなどのブロックチェーン技術によって開発された複製不可能な資産であり、その作成者、取引、所有者の追跡に利用することができます。

NFTの販売は、通常、イーサリアムブロックチェーン用に開発された暗号資産(仮想通貨)であるイーサ(ETH)を用いて行われます。仮想通貨の価値は非常に変動しやすいため、NFTの購入価格や価値にも仮想通貨は大きく影響を及ぼします。

また、NFTを取り扱うほとんどのマーケットプレイスでは、価格は米ドル表示であり、実際NFTによっては大変高額な価格で既に取引されています。例えば、ジャック・ドーシー氏の最初のツイートは290万ドル以上、デジタルアーティストのBeepleの作品はクリスティーズで6,900万ドル、CryptoPunkのCovid Alienはサザビーズで1,170万ドルの値をつけました。

NFTのオークションはますます開催頻度と人気を高め、多くの大手企業が参入し始めています。オークションに出品されているNFTは、NBA公認のバスケットボールから、1956年に発売されたタフィ社(Tafi)がデザインしたクラシックなコーラ自動販売機をピクセル化して描いた4つのコカ・コーラNFTシリーズと多岐にわたっています。

酒類企業によるNFTを利用したチャリティ

数多くのNFTが、慈善事業や善意の寄付を目的としてオークションにかけられています。

アルコール飲料メーカーさえもNFTを使ってパンデミックで影響を受けた人々のための慈善活動を行っています。Stella Artois社は、英国のホスピタリティ業界を支援するために「Stella Artois Tips」という慈善キャンペーンを展開し、NFTをオークションに出品しました。その最初のNFT販売額の100%と、それ以降の各販売額の10%がそのキャンペーンに計上されます。

バカルディ社は、2021年9月1日の「ナショナル・ラム・デー」に、黒人経営のバーの資金調達のために、NFTオークションを開催することを発表しました。このNFTオークションでは、限定版ラム酒「レゼルバ・オチョ・シェリーカスク・フィニッシュ」の発売を紹介しています。バカルディ社は、オークションでの収益を、アフリカ系アメリカ人が経営するビジネスを支援するためにNAACPと共催しているイニシアチブ「Backing the B.A.R.」に寄付する予定です。

ビール会社がNFTに便乗

地ビール業界は、マーケティング活動の一環として、NFTの領域に進出しています。

デンバー ・ビール カンパニーは、OpenSeaプラットフォームでも類を見ないNFT「Beer for Life」をオークションに出品しました。このNFTは、片面に「Beer For Life」の文字、もう片面にデンバー・ビールカンパニーのロゴが入った、ユニークな回転式デジタル金貨で構成されています。オークションの落札者は、デンバー・ビールカンパニーのタップルームで、1日4本までのビールを生涯無料で楽しむことができます。

2週間にわたるオークションは2021年7月7日に終了し、NFTは4.33ETH、購入時には約9,200ドルで落札されました。NFTの所有者は、そのNFTを維持しつつデンバービールで毎日喉を潤すことも、あるいはそのNFTを誰かに売ることもできます。NFT自体は譲渡可能で、有効期限もありません。

また別のビールメーカーは、実際に販売しているビールのデザインに合わせて作成されたNFTを販売しています。Whistle Buoy Brewing Companyは、2021年5月、特別版ビールに合わせてNFTをデザインすることを発表しました。地元のアーティストと提携し、手書きの番号が入った32オンスの金色の缶を特徴とする限定版のNFTを作成しました。同社は実際にドラフトで販売されていた「NFTビール」を作成販売し、OpenSeaに出品したところ、0.22イーサ(約625ドル)で売れました。

カクテルメーカーやバーテンダーもNFTを活用

NFTに参入しているのはビール会社だけではありません。カクテルをテーマにしたNFTも登場し、高額で取引されています。

2021年4月、Quality Eats社は「Into the Ether」と名付けたカクテルNFTを0.75イーサ(約2,400ドル)で販売しました。同社はこのNFTをパンデミックの影響を受けたニューヨークのレストラン従業員支援のためにROAR NY団体に寄付しました。OpenSeaのNFT売買プラットフォームを閲覧する購入希望者は、カクテルNFTのカタログを検索することができます。

バーテンダーやその他の人は、カクテルのレシピをNFT化することで(これを「ミント」すると呼びます)、そのカクテルをデジタル化することができます。誰もが自分のレシピをNFTに「ミント」すると、基本的にそれが著作権の証明となります。NFTのカクテルレシピは、ブロックチェーン上に無期限に保存され、またこの技術によって、レシピの作成者を常に追跡することができます。

バーテンダーたちは、Instagramのページを作って、自分の作ったNFTカクテルを宣伝しています。もし創作者がNFTのデジタル作品をオークションで販売しても、他のNFTミンターと同様に、新所有者にドリンクレシピを使用・表示することを許可するか等を交渉することが可能です。

カクテルNFTと知的財産に関する注意点

1)著作権

通常、レシピは「事実」とみなされるため、著作権法では保護されません。飲料メーカーは飲料の名称を商標登録することができますが、バーテンダーができることはあまりないと言えるでしょう。しかし、近い将来、カクテルの発明者がNFTを使ってレシピの著作権を主張するようになるかもしれません。

とはいえ、従業員が勤務中にカクテルのレシピを作成した場合、その著作権は一般的に「職務活動の成果」とみなされ、雇用主に帰属します。しかしそうでない旨の契約上の取り決めを従業員と雇用主の間でできる場合もあります。その場合は従業員が自分が作ったカクテルの権利を保持することができますが、他人が自分の知的財産を奪う可能性があることを積極的に認識する必要があります。

具体的な形態であるカクテルレシピについて、「実質的な文学的表現」として認定された場合、バーテンダーは通常の著作権の保護を受けられることも稀にあります。そのようにドリンクレシピが既に実際に著作権で保護されている場合、NFT作成者は、そのレシピに基づいたNFTを作成する権利はありません。

2)商標権

NFTは、バーテンダーが創作したカクテル名や上記のようにレシピの知的財産権を保持するために利用できる可能性のある一つの手段です。商標法では、バーが不使用期間を設け、一時的にドリンクの提供を中止しても、そのカクテルの名称に関する権利を直ちに失うことはありません。通常、商標登録の対象となるのは、レシピではなく、ドリンク名です。

しかし、商標を持つドリンクメーカーは、自分の商標権に抵触する行為を他人に故意に許可したり、積極的に同意したりするような罠に陥ってはなりません。過去には、 PusserのPainkillerGosling の Dark and Stormのように、多くの大手アルコール会社が、自社のブランド名や特製ドリンク名を使用したバーを訴えたことがあります。

アルコール飲料に関するNFTを作成する場合、そのドリンクが企業秘密に関わる可能性があることを考慮する必要があります。また、カクテルの名前が商標登録されていたり、レシピが独自に開発された「ブランド」カクテルに該当する場合もあります。

また、バー側としては、バーテンダーとの契約において、バーテンダーが店内で作成したドリンクレシピをNFTとして使用することを禁止する競業避止条項を盛り込むことで、自らの権利を守ることができます。

3)特許

飲料メーカーは、飲料レシピに関する特許申請を検討することもできますが、このプロセスには通常時間と費用がかかります。しかし、酒類業界をはじめとして、NFTや特許の利用は加速しています。

小売業者は、商品が本物であることを購入者に証明するために、商品に暗号化されたデジタル資産を生成する特許に注目しており、ナイキは既にそのようなシステムを持っています。特許を申請すると、バーテンダーはミントする際、特許の透明性規定の一環として、ドリンクのレシピを開示する必要があります。

一般特許は、”任意の新規かつ有用なプロセス、製造品、または物質の組成 “に対して出願することができます。飲料特許を取得するためには、新規性があり、「非自明」であり、それが特許申請書に十分かつ明確に記載されている必要があります

バーテンダーは、米国特許商標庁のデータベースを検索して、希望するドリンクの名前やレシピが使用可能かどうかを確認することができますが、特許の内容は一般の人が自由に閲覧できるので、自分のドリンクレシピの秘密性を保持することはほぼ不可能ということを理解しておく必要があります。

通常、飲料のレシピを著作権や特許で保護したり、飲料名を商標登録したりすることは困難ですが、NFTを活用することで、カクテルやビールのレシピをデジタル化する際のゲームチェンジャーとなるかもしれません。ドリンクスペシャリストが自分のレシピをNFTとして「ミント」することで、創作物の所有権と出所がブロックチェーン上で即座に確認できるようになります。彼らはNFTを一次販売と二次的取引の両方で販売することが可能となり、永続的に収入を得ることができるのです。大変画期的なことです。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
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