フランス当局が承認
暗号資産(仮想通貨)取引所最大手のバイナンスは5日、フランスの金融規制当局である金融市場庁(AMF)から、デジタル資産サービスプロバイダー(DASP)として登録が認可されたと発表した。
Binance is now a fully regulated digital asset service provider in France | Binance Blog https://t.co/UNVuX0QyL9
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) May 4, 2022
AMFへの登録は、同国の銀行および保険部門を監督する健全性監督破綻処理機構(ACPR)から承認が前提となっている。AMFによると、同国市場向けに設立された「バイナンス・フランス」は、DASPとして以下の活動を行うことが可能になった。
- デジタル資産のカストディ
- 法定通貨によるデジタル資産の購入/販売
- デジタル資産と他のデジタル資産との交換
- デジタル資産の取引プラットフォームの運営
フランスは、欧州連合の中でバイナンスの登録を認可した初の国となる。バイナンスは公式ブログで、これまでの同社のコンプライアンス確保のための努力が実を結び、フランスの厳しい規制基準を満たし、DASPとしてライセンス取得できたことを嬉しく思うと述べている。
また、バイナンス・フランスのDavid Prinçay最高経営責任者は、同社のDASP登録は、仮想通貨にとってヨーロッパにおける重要なマイルストーンだと語り、現在、スイス、スウェーデン、スペイン、オランダ、ポルトガル、オーストリアでも登録を求めていることを明らかにした。
バイナンス
バイナンスは、取扱銘柄や取引高、登録者数が非常に多い世界最大手の仮想通貨取引所。取引所の運営以外にも、学習コンテンツの作成、独自ブロックチェーンの開発、NFT(非代替性トークン)マーケットプレイスの運営なども行なっている。
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フランスは欧州業界をリード
バイナンスは昨年11月、フランスの非営利団体「France FinTech」とパートナーシップを締結。フランスにバイナンスの研究開発拠点を設立し、同国と欧州全域でブロックチェーンや仮想通貨のエコシステムにおける開発を支援するため、137億円(1億ユーロ)規模の「Objective Moon」を開始すると発表した。
また、Changpeng Zhao(CZ)最高経営責任者は同月、フランスメディア『LesEchos』とのインタビューで、DASPの認可取得に言及するとともに、フランスに本社を設立する意向を明かしていた。
さらにCZ氏は直近の4月13日、パリで開催された業界カンフェレンス「Paris Blockchain Week Summit」で、仮想通貨スタートアップに137億円(1億ユーロ)を投資するプログラムを発表。「フランスは、欧州においてこの業界をリードする非常にユニークな立場にある」との考えを披露している。
規制への準拠
バイナンスは設立当初から「分散型の哲学」に基づき、正式な本社を構えない姿勢を貫いていたが、昨年、日本の金融庁をはじめ、英国、ドイツ、イタリア、シンガポールなど多くの国の規制当局から、ライセンスなしの運営を指摘されるなど、厳しい警告を受ける事態となっていた。
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そこでバイナンスは、規制準拠のため、各国でライセンスを取得する方向へ舵をとった。
同社は昨年12月末にカナダの規制当局からライセンスを取得。また、今年に入り、3月には中東のバーレーンとアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、暗号資産ライセンスを取得した。4月下旬にはUAEのアブダビでもライセンスの認可を受けた。
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一方、同社の英国での活動はまだ先行きが不透明な状態のようだ。英金融行動監視機構(FCA)は3月、バイナンスの決済企業Bifinityと米ナスダック上場企業EQONEXの提携で、FCA登録の仮想通貨カストデイ会社「Digivault」がバイナンスの影響下に入ることを危惧。バイナンスのグローバル事業が「消費者に大きなリスクをもたらす、複雑で高リスクな金融商品を提供している」と主張している。
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