仮想通貨取引所バイナンス 各国政府の警告・金融機関のサービス停止事例まとめ

強まるバイナンスへの逆風

世界最大規模の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスが世界各国から厳しい目が向けられている。

日本の金融庁による警告に端を発し、英金融行動監視機構(FCA)や香港証券取引委員会(SFC)など欧米だけでなくアジア諸国などからも相次いで、ライセンスを取得せずに運営しているとし、警告が発出されている状況だ。

また、バイナンスは、日本語でのサービス展開を行っていたこともあったが、「資金決済法に基づく交換業登録を行わず、日本居住者向けに無許可営業を行った」として、2018年3月に金融庁が警告を発出。これに伴い、バイナンス側は日本語サービスを中止し、日本市場から撤退していた。

しかし、2021年6月になり、無登録のまま日本国内の利用者を対象に仮想通貨の交換業を行っているとして、金融庁は再度、資金決済法に基づく警告を行なっている。

本記事では、仮想通貨市場に大きな影響をもたらし得るバイナンスに対する、直近の各国による警告などの措置をまとめ、今後同様の事例が出た場合には随時更新していく。

警告・サービス停止事例

日付 内容
18/3/23 金融庁: 金融庁は、バイナンスに対し、利用者保護の仕組みが不十分だとして改正資金決済法に基づく警告を出した。 (関連記事
21/4/28 ドイツの連邦金融監督庁(BaFin): ドイツの連邦金融監督庁(BaFin)は、バイナンスが提供する「Binance Stock Tokens(株式トークン)」について声明文を公開し、規制違反に該当する旨を伝えた。 (関連記事
21/6/25 金融庁: 金融庁は、無登録のまま日本国内の利用者を対象に仮想通貨の交換業を行っているとして、仮想通貨取引所バイナンスに対して、資金決済法に基づく警告を行なった。金融庁のバイナンスへの警告は今回で2度目。 (関連記事
21/6/25 英金融行動監視機構(FCA): 英金融行動監視機構(FCA)は、「ライセンスを保持していない」とし、バイナンスのイギリスでの事業に警告を発した。
21/6/27 カナダのオンタリオ州: 仮想通貨取引所Bybit(バイビット)、KuCoin(クーコイン)、Poloniex(ポロニエックス)に対して警告を発したことを受け、バイナンスが同州でのサービス提供を停止すると発表した。
21/7/1 シンガポールの中央銀行MAS: シンガポールの中央銀行MASは、バイナンス・シンガポール法人のBinance Asia Services Pte.に対し、「厳重に監視する」ことを発表した。 (関連記事
21/7/1 ケイマン諸島の通貨局(CIMA): ケイマン諸島の通貨局(CIMA)は、「バイナンスが同国で運営することは認められていない」と勧告。「Binance、Binance Group、およびBinance Holdings Limitedは本国で登録されておらず、ライセンスも付与されていない業者」との見解を示した。(関連記事
21/7/5 英大手銀行バーグレーズ: 英大手銀行バーグレーズが、顧客がバイナンスへ送金するサービスを停止した。(関連記事
21/7/6 ポーランド金融監督庁(PFSA): ポーランド金融監督庁(PFSA)は、バイナンスが同国内で認可を受けていないとし、投資家に対してバイナンスのサービスを利用する際のリスクを警告している。
21/7/6 単一ユーロ決済圏(SEPA): バイナンスは、「単一ユーロ決済圏(SEPA)」の枠組みを通じた入金を一時停止すると利用者に通知。「我々のコントロールを超えたイベントがあったため、このような決定に至った」、「停止は一時的なもの」と説明。
21/7/8 サンタンデール銀行のイギリス支社: スペインに本拠を置くサンタンデール銀行のイギリス支社は、顧客がバイナンスへ送金するサービスを停止した。 (関連記事
21/7/12 英決済企業Clear Junction: イギリスの決済ソリューションプロバイダーClear Junctionは、ユーロ(EUR)およびスターリング・ポンド(GBP)の入出金サービスのバイナンスへの提供を停止すると発表した。(関連記事
21/7/13 英決済サービスFaster Payments: 英決済サービス『Faster Payments』が仮想通貨取引所バイナンスとの提携を打ち切ったことがわかった。(関連記事
21/7/15 イタリアの国家証券委員会(CONSOB): イタリアの国家証券委員会(CONSOB)は、「バイナンスグループはイタリアで投資サービスを提供する権限を持たない」と警告した。(関連記事
21/7/16 香港証券取引委員会(SFC): 香港証券取引委員会(SFC)は、バイナンス・グループが同地域で無登録でサービスを提供していることを指摘。SFCは「株トークンが有価証券であれば、そのトークンに関するマーケティングおよび配布は香港では規制される業務となり、SFCからライセンスを取得する必要がある」と説明した。 SFCの報道直前、バイナンスは株トークンの販売を直ちに中止すると発表した。(関連記事
21/7/16 リトアニア中央銀行: リトアニア中央銀行は、バイナンスに対し「ライセンスを持たずに投資サービスを提供している」と指摘した。(関連記事
21/7/22 NatWest銀、Starling銀: 英NatWest銀行も顧客がバイナンスへ法定通貨を送金するサービスを停止。Starling銀のAnne Boden CEOは「一部の仮想通貨取引所は安全ではない」と発言、仮想通貨による不正決済を指摘した。(参考
21/7/26 レバレッジ引下げ: 先物取引における新規ユーザーのレバレッジを最大20倍まで引き下げ。(関連記事
21/7/26 法定通貨マージン: ユーロ(EUR)、オーストラリアドル(AUD)、スターリング・ポンド(GBP)の証拠金(マージン)取引ペアを上場廃止へ。(関連記事
21/7/28 5つの対応: バイナンスが規制強化で「5つの対応」を発表。(関連記事
21/7/30 欧州: バイナンスはドイツ、イタリア、オランダで先物・デリバティブ取引の提供を停止する予定。(関連記事
21/7/30 インド当局: インドのマネーロンダリング対策局である「執行局」がバイナンス、及びその傘下取引所WazirXの役員を調査していることが、ブルームバーグによって報じられた。(関連記事
21/7/30 マレーシアの証券委員会(SC): マレーシアの証券委員会(SC)はバイナンスが同国で取引所のサイト及びモバイルアプリの利用を停止するなどの命令を下したことがわかった。(関連記事
21/8/3 HSBC: 大手銀行HSBCは、顧客がクレジットカードでバイナンスへ入金するサービスを停止。(参考
21/8/4 シンガポール中央銀行: シンガポール中央銀行の代表はメディアDecryptの取材で、「Binance Asia Services」は現在登録していないエンティティで、「決済サービス法」によって一時的に登録から免除されていると説明し、正式に登録が承認されるにはマネロン対策などの措置が十分であると証明する必要があるとした。(参考
21/8/7 香港: バイナンスは香港で先物・デリバティブ取引の提供を停止する予定。(関連記事
21/8/10 バイナンス: バイナンスは、オーストラリアドル(AUD)、スターリング・ポンド(GBP)の証拠金(マージン)取引ペアを上場廃止した。
21/8/13 韓国・マレーシア: バイナンスは、韓国に関するサービス(韓国ウォン(KRW)取引ペア、KRWのペイメントオプションなど)の提供停止を発表。さらに同日、マレーシアに関する一部のサービスを停止した。(関連記事
21/8/18 オランダ: オランダの中央銀行からも警告を受けている。(関連記事
21/8/20 本人確認(KYC)義務化へ: 全ての新規・既存ユーザーに対して本人確認を必要とすることを発表した。(関連記事
21/8/21 ブラジル: ブラジルの証券取引委員会の警告を受け、ポルトガル語におけるデリバティブ取引の提供を停止。(関連記事
21/8/25 イギリス: 英FCAはBinance Markets LimitedがFCAの要件を満たしていると伝えた。依然としてイギリスで規制されたビジネスの運営はできないという。背景には、6月25日の規制指摘がある。(上記参照)参考
21/8/27 ノルウェー: ノルウェーの法定通貨「ノルウェー・クローネ」の取引ペア、ペイメントオプション、およびノルウェー語サイトへの対応を停止。参考
21/9/2 シンガポール: シンガポールの中央銀行はbinance.comを「警告リスト(未登録業者)」に追加したことがわかった。参考
21/9/3 南アフリカ: 南アフリカの金融セクター行動監視機構からも「許可なし」と指摘を受けている。関連記事
21/9/5 バイナンス: バイナンスは5日、シンガポールでサービスを停止することを発表。停止するサービスの対象は、シンガポールの法定通貨「SGD」の取引ペア、SGDのペイメントオプション、シンガポールのiOSとGoogle Playのストアにおけるアプリ対応だ。関連記事
21/9/9 SWIFT: バイナンスは9日に、SWIFTでの米ドル出金を再開した。関連記事
21/9/16 CZ: バイナンスは16日、『South China Morning Post』のインタビューで、規制に準拠した運営を行うため、バイナンスも本社を構える必要があると語った。関連記事
21/9/18 米国: ブルームバーグの報道によると、米当局(CFTCなど)によるバイナンスへの調査はインサイダー取引および相場操縦の可能性へと拡大。しかし、調査が必ずしもリーガルアクションにつながるわけではないという。参考
21/9/21 豪州: オーストラリアで先物・オプション取引の提供を停止する予定。関連記事
21/9/23 豪州: Binance Australiaの既存ユーザーは10月19日22時(AEST)までに、KYC(本人認証)の手続きを終えていないと、「出金のみ」になる。新規ユーザーは全てのサービスへアクセスするために、本人認証を完成する必要がある。参考
21/9/27 シンガポール: シンガポールでサービス提供の停止を発表した。関連記事
21/9/30 新採用: コンプライアンス体制の強化で、米IRS(内国歳入庁)の元サイバー調査官2名を起用したことを発表した。関連記事
21/10/5 新登録: アイルランドで、3つのグループ会社の法人登録を行なった。関連記事
21/10/8 南アフリカ: 南アフリカのユーザーに対するサービス内容を変更すると発表した。関連記事

刑事告訴・集団訴訟

  • タイの証券取引委員会(SEC)が刑事告訴

バイナンスに対しては、警告に留まらず、刑事告訴に踏み切った事例もある。

タイの証券取引委員会(SEC)は7月2日、ライセンスを取得せずにデジタル資産関連ビジネスを行ったとして刑事告発した。

  • イタリアで集団訴訟の可能性

7月、イタリア及び海外投資家グループ集団訴訟の手続きを開始したことがわかった。

投資家グループはバイナンスが先物取引に関する独自の規則に違反し、かつ取引プラットフォームの機能不全により、投資機会を損失し被害を被ったとして、投資額の返還と損害賠償を求めている。

関連:仮想通貨取引所バイナンス、イタリアで集団訴訟の可能性

CZ氏の釈明と今後の対応

バイナンスのChangpeng Zhao最高経営責任者(通称、CZ)は7月7日、同社に対する規制当局の目が厳しくなっていることを受け、公開書簡を発表。規制や仮想通貨業界の今後について、バイナンスの考えや取り組みを説明した。

規制について

これまでの取り組みについては、仮想通貨業界に明確なガイドラインができるまでは、ユーザーの利益を守ることを優先して事業を行なってきたと説明。トレードのルールを整備したり、ハッキング等の問題が起きた時に備え「SAFU」を蓄積していることや、ユーザー教育のために「バイナンスアカデミー」やチュートリアルを用意していること、マネーロンダリングやテロ資金供与、詐欺の防止などを取り組みとして挙げた。

規制については、バイナンスは今でも仮想通貨が世界に普及するように取り組んでいるとし、それにはそれぞれの国や地域に明確は規制の枠組みが必要であると述べた。業界が継続的に成長していくためには、規制の基準を明確に整備していくことが不可欠だとし、バイナンスはそのために貢献していきたいと説明している。

今後について

これからも規制機関と協力し、バイナンスも積極的に人材を雇用したり、新たなシステムを導入したりして、ユーザー保護に務めていくとし説明。バイナンスが現在取り組んでおり、今後も継続していくこととして、以下の3点を挙げている。

  • 国際的なコンプライアンスチームの強化
  • コンプライアンス遵守のためのパートナーシップの拡充
  • 地域ごとの規制の準拠

さらにCZ氏は「私やバイナンスの他のメンバーは、業界が持続可能な方法で成長できる建設的なガイダンスに従う準備はできている。成長をサポートする建設的なガイドラインは歓迎したい」と述べた。

関連:金融庁も警告したバイナンス、CEOが語る規制の対応策

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