バイナンスに新たな訴訟の可能性
世界最大規模の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスに対し、イタリア及び海外投資家グループが集団訴訟の手続きを開始したことがわかった。
投資家グループはバイナンスが先物取引に関する独自の規則に違反し、かつ取引プラットフォームの機能不全により、投資機会を損失し被害を被ったとして、投資額の返還と損害賠償を求めている。
イタリア・ミラノのLexia法律事務所は、スイス・ブロックチェーン共同体(Swiss Blockchain Consortium)の協力を得て、この訴訟を支援すると発表。バイナンスおよびCEOのChangpeng Zhao(CZ)氏宛の書簡で、7月12日までに適切な補償が得られない場合、訴訟に踏み切ると通達した。
さらに、欧州およびスイスの規制当局にバイナンスに対する規制措置を要請し、場合によっては同取引所の閉鎖を求めることも辞さないとの構えだ。
訴訟の理由
訴訟の発端となったのは、イーロン・マスク氏がテスラ社の15億ドル(約1,660億円)相当のビットコイン(BTC)購入を発表し、ビットコイン価格が急騰した2月8日、バイナンスのプラットフォームが数時間にわたりアクセス不能に陥ったことだった。
そのため、原告らは急激な市場の動きに対応した取引の管理ができず、ポジションが精算され「数千万ドル」(数十億円)規模の損害を被ったと主張している。
バイナンスは2月23日、プラットフォームの不具合を正式に認め、その影響を受けたユーザーに対し、補償請求を行うよう通達した。しかし、実際に同取引所が提示した補償額は、トレーダーが被った損失に比べはるかに低かったという。
さらに、取引プラットフォームの不具合は2月8日だけではなく、中国の仮想通貨マイニング禁止が発表された5月19日をはじめ、4月18日、5月5日、5月28日と6月4日にも発生していたことがわかった。Lexia法律事務所は、問題となった障害が発生した後も、バイナンスがシステムの改善措置を講じていないと指摘している。
規制上の不備
Lexia法律事務所は、システムに関する問題だけでなく、規制の面でもバイナンスに不備があると主張している。
同事務所によると、バイナンスは、欧州金融市場の包括的な規制である、第二次金融商品市場指令(MiFID II)で規定された投資会社の資格を有することなく、先物などの金融商品の取引サービスを提供しているように見受けられるという。また、スイスのような非EU地域においても、同様のサービスを提供する許可を受けていない可能性もあると指摘した。
さらに、バイナンスと、サービスを利用するトレーダーの間に実際の契約がないことを問題視している。
Lexia法律事務所のサイトには、バイナンスを含む仮想通貨関連の集団訴訟専用ページも設けられている。
相次ぐ規制当局からの警告
日本の金融庁は、6月25日、バイナンスに対し、無登録で日本国内の利用者に仮想通貨の交換業務を行っているとして、資金決済法に基づき警告を発した。日本国内居住者向けの営業活動およびサービス提供を停止するように求めている。
海外でも数々の規制当局から、バイナンスの運営について注意勧告がなされている。
- 英国:金融行動監視機構(FCA)が国内で規制されていないと注意喚起
- シンガポール:マネロン・テロ資金供与対策の不備を指摘、厳重監視の対象とする
- ケイマン諸島:通過局(CIMA)が登録やライセンス付与の事実はないと指摘
- タイ:証券取引委員会がライセンスの非所有を警告後、対応されなかったため、刑事告発
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金融当局に加え、金融機関がバイナンスへの送金サービスを停止する動きも出ている。
7月5日、英大手のバークレーズ(Barclays)銀行は、バイナンスへの送金サービスを停止。デビットカード及びクレジットカードによる決済が停止された。
さらに、Financial Timesの報道によると、バイナンスはEメールで、EUの単一ユーロ決済圏(SEPA)からの、入金を一時的に停止したという。Sepaは、EU加盟国27カ国間の銀行送金ネットワーク。SEPA経由の入金は7営業日以内に返金されるとのことだ。