- 仮想通貨投資サービス開始を発表
- 仮想通貨ウォレットサービス、Blockchain社が、6月28日、ブロックチェーン主要戦略 (Blockchain Principal Strategy =BPS)との名称で、機関投資家向けに、総合的な仮想通貨投資サービスの開始を発表しました。
- 投資対象としての仮想通貨
- 機関投資家へ仮想通貨への投資を勧める論文も発表されており、ビットコインは他の資産クラスとはまったく異なる資産クラスとして、ポートフォリオに組み込む価値が十分あると、分析されています。世界で1京4410兆円にも上ると言われている機関投資額。その一部でも仮想通貨投資へ流入すれば、仮想通貨業界の発展に大きく貢献することは間違いありません。
- 機関投資家とは
- 機関投資家とは、顧客から拠出した大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家のことをいいます。「投資信託会社」、「投資顧問会社」、「生命保険会社」、「損害保険会社」などがこれに当たります。
仮想通貨投資サービス開始を発表
ロンドンに本社を置き、ニューヨークとサンフランシスコにオフィスを構える仮想通貨ウォレットサービス、Blockchain社は、2011年創業のスタートアップ企業ですが、140カ国に2500万を超えるユーザーを抱え、その取引累計は2000億ドル(約22.1兆円)を誇っています。
さらに2017年には、GV (旧Google Ventures) やVirgin、そしてRichard Branson氏などから、シリーズB段階投資で4000万ドル(約44億円)の資金調達を成し遂げています。
そのBlockchain社が、6月28日、ブロックチェーン主要戦略 (Blockchain Principal Strategy =BPS)との名称で、機関投資家向けに、総合的な仮想通貨投資サービスの開始を発表しました。
BPSサービスを通して、投資家は、店頭取引が可能になりますが、この店頭取引部門は、取引の実行と、取引に関連するリスク管理を行う「仲介役と直接の取引機関」としての機能を果たします。
また、同社の顧客には、個別のポートフォリオビューと、市場のファンダメンタルズ、リスク指標などの市場分析に加え、トップ仮想通貨研究者率いるチームによる独自のリサーチへのアクセスも提供されます。
さらに、広範囲のデジタル資産関連の有望企業に直接株式投資を行う機会や、Blockchain社のグローバルネットワークを通して選ばれ、審査された、早期段階でのトークン公開へのアクセスなど、同社が運用する投資案件を検討することができます。
2017年に事業を大きく拡大してきたBlockchain社は、機関投資家向けサービスを次の事業戦略の要と定めているようで、4月には、ゴールドマンサックスで企業資産サービス部門トップを務めていた、Breanne Madigan氏を、機関投資家向けセールス戦略部門を統括するために、登用しています。
Madigan氏が、ゴールドマンサックスで統括していた部門は、2017年に1兆4900億ドル(約164兆円)の資産規模の管理をしていたと言われています。
また、先月には、リサーチ部門に仮想通貨とブロックチェーン技術分野研究をリードするGarrick Hileman氏を迎えて、機関投資家向けの差別化したサービスを充実させていく姿勢が読み取れます。
Madigan氏は、Blockchain社へ移籍した動機は、金融システムの近代化を推進することで、機関投資家向けサービスである「BPSは、そのビジョンを実現するための、同社の長期戦略の第一歩」であると述べています。
投資対象としての仮想通貨
保険コンサルティング大手のWillis Towers Watson社のリサーチによると、保険ファンド、投資信託、基金、財団、政府系ファンド、年金ファンドなどの機関投資額は、実に、世界で131兆ドル(1京4410兆円)に上ると言われています。
このように巨額の機関投資による資金が、一部でも仮想通貨投資へ流入することは、仮想通貨業界の発展に大きく貢献することは間違いありません。
しかし、今回のBlockchain社の新サービス展開のように、多くの機関投資家向けのサービスが発表され、その動きが注目されるものの、未だ資金の大きな流入は見られないようです。
学術的な面からも、機関投資家へ、仮想通貨投資を勧める論文も出されています。
2017年末に発表された研究論文、「機関投資家のためのビットコイン投資:バブルへの投資か、本質的に健全か」(原題”The Case for Bitcoin for Institutional Investors: Bubble Investing or Fundamentally Sound?”、Jim Liew, Ph.D. Levar Hewlett, MSF共著) によると、ビットコインは、他の資産クラスとはまったく異なる資産クラスとして、ポートフォリオに組み込む価値が十分あると、分析されています。
価格が非常に不安定であるとして、一般的に機関投資家からは、一定の距離をおかれているビットコインですが、この論文によると、2010年 8月から 2017年 10月の期間で割り出されたリスクとリターンの対比を示す、シャープレシオは、1.176となり、他の伝統的資産クラスよりも高く、投資対象としては大変魅力的であるという、分析結果が発表されています。
また、ポートフォリオの割合で最も効果的なのは、1.3%であるとも述べられており、結論として、機関投資家のビットコインへの投資を強く進めるものになっています。
低迷が続いている昨今の仮想通貨価格ですが、仮想通貨投資会社、BlockTower Capital社の投資部門責任者、Ari Paul氏が述べるように、ある著名な機関投資家が少額でも投資した、という既成事実が作られることこそ、多くの富裕層の資産管理を行うファミリーオフィスをはじめとする、機関投資家が、仮想通貨投資を始める「口実」になり、資金の流入を促すきっかけになるのかもしれません。