「個人投資家向けデリバティブを制限すべき」
オランダ金融市場庁(AFM)の責任者は12日、個人投資家向けの暗号資産(仮想通貨)デリバティブを制限すべきとの意見を表明した。
デリバティブとは
仮想通貨や株式といった元になる資産から派生した金融商品のこと。英語表記は「派生」を意味する「derivative」。日本語では「金融派生商品」とも呼ばれる。代表的なデリバティブに先物取引、オプション取引、スワップ取引などがある。原資産の取引におけるリスクを軽減するために活用したり、単純に高い収益性を追求するために利用されている。
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AFMの資本市場・透明性監督責任者ポール・ウィレム・ファン・ガーウェン氏はデリバティブ市場関連のイベントで講演を行い、市場のリスクと機会について話した。その中で、仮想通貨デリバティブに関して、次のような見解を表明している。
仮想通貨デリバティブの発展は、一般的に、私たちの目を引いたと言うことができるだろう。これらは人気のある商品だ。とはいえ私達は、このような取引にはリスクが伴うとみなしている。透明性の欠如、市場操作、その他の犯罪行為などである。
また仮想通貨は価格変動が大きいことから、デリバティブ取引の当事者が取引を完遂できるかについての懸念もあると続けた。こうしたリスクを並べた上で、ガーウェン氏は「仮想通貨デリバティブの取引はホールセール取引に限定すべきである」と表明している。
コインデスクによると、AFMの広報担当者は、欧州の包括的な仮想通貨市場規制(MiCA)が発効した暁には、AFMが仮想通貨デリバティブ規制を行う権限を取得する可能性があると話した。
ガーウェン氏は、英国がすでに個人投資家への仮想通貨デリバティブ商品を販売禁止していることも引き合いに出した。
英国の金融行動監視機構(FCA)は、仮想通貨デリバティブと上場投資証券(ETN)について、プロ以外の個人投資家への販売を禁止しており、バイナンスも2021年12月、これに対応して英国ユーザーに通知を送っていた。規制対象となるユーザーには、デリバティブへのアクセスを制限する形だ。
分散型台帳技術について
ガーウェン氏は、仮想通貨の取引に使われる分散型台帳技術(DLT)についても言及した。
DLTによって、取引の仲介者が減り、市場の効率が向上し、チェーン全体の取引コストが下がる可能性があるという。そこでガーウェン氏は「私達は実用的なユースケースを市場と議論することには前向きだ」と話した。
そこで、欧州委員会がDLTパイロットプログラムを予定していることも歓迎しており、参加を奨励したいという。
欧州証券市場監督局(ESMA)は、主に「トークン化」された証券(従来の証券をデジタル化した証券)の取引と決済についての、パイロットプログラムを計画。2023年初めに開始される可能性が高いとしているところだ。
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一方でガーウェン氏は、DLTを完全に分散型にすることには賛成しておらず、DLT上で清算を管理する中央機関も必要だと意見した。
「市場が堅牢で健全なものであることが重要」で、DLTシステムには「参加者やシステム上で取引する商品、取引などをめぐって、一定のルールを設定する必要」があるとしている。