ビットコインマーケットレポート(6月23日~29日)
執筆時点において、ビットコインは2万ドルを挟んだ動きとなっている。ビットコイン保有企業世界1位のMicro Strategy社CEOであるMichael Saylor氏が発言した、マージンコール(追加証拠金の要請)となる価格の2.1万ドル付近が意識されていると考えられる。ビットコインは5月から下落基調にあるが、直近1週間は、明日6月24日が「ビットコインのメジャーSQ」といわれる、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)や多くの民間取引所の先物取引の清算日(SQ)であることもあり、こう着状態となっている。
下落基調の主な背景
5月中旬から6月中旬にかけて、暗号資産は大きく下落した。背景として、アルゴリズム型ステーブルコインTerraUSD(UST)が、短期間で1ドルの基準値を大きく乖離(ディペッグ)したことに端を発する、USTを多く保有していたとみられるレンディングサービス「Celsius」の出庫停止や、シンガポールの暗号資産大手ヘッジファンドThree Arrows Capitalが大型清算したことによる、流動性リスクおよび信用リスクの顕在化が挙げられる。
特にThree Arrows Capitalが大型清算したことにより、同社が保有していると見られる暗号資産の売却懸念、出資先のBlockFi、Genesis Trading 、Voyagerなどの経営状況の悪化懸念などにより、暗号資産市場では全体として売りの連鎖反応が起こった。(ただし、BlockFiについては他社からの救済措置が提案されている。)加えて、6月中旬にかけて欧米各国の中央銀行による金融引締発表が相次いだこと等により、米株価指数などのリスク資産の価格が低下したことも、暗号資産が売られる要因となった。
足もと
ビットコインはやや売られ過ぎの状態となっている。全体的に未決済建玉(OI)は減少傾向であり、ビットコインからの資金流出が見られる。ただし、急激な価格変化につながりやすいアクティブOIは大きく減少しており、デリバティブ市場の売りの連鎖を起因とする短期的な急落は起こりにくくなっている。
先物・デリバティブ市場
CMEビットコイン先物市場では、価格差益を狙う「Leveraged Funds」は依然としてショートポジションが多い状況にあるが、以前よりも若干ロングポジションが増加している。ETF市場においてビットコインは先物ETFしかないため、CME先物ETFの期近を売って期先を買うロールオーバーが顕著に市場にあらわれており、CME・SQ日の翌週は価格が上昇する傾向にある。
■CME・各月SQ週と翌週の最高値の価格差
(1月)約5千ドル幅、(2月)約4千ドル幅、(3月)約3千ドル幅、
(4月)約1.5千ドル、(5月)約3千ドル幅
デリバティブ市場においては、現物を若干下回る価格(赤枠)で取引されており、売られすぎの状態であるとみられる。また、民間取引所の先物市場においては一部現物価格と同等かやや下回る価格(青枠)で取引されており、需要超過となっているとみられる。
オプション市場
プットとコールの比率であるPCRレシオ(下段黄色線)は若干低下傾向にあるが、依然として高い状態にある。同指標が高いときは、弱気な投資家が多いと考えることができる。特に現物で取引されるオプション市場においては、現物を多く持つマイナーの影響が大きいと考えられ、そういった層が価格下落に伴い弱気となった可能性がある。
スポット市場
成行現物売買は、足もとでは買いと売りが拮抗するニュートラルな状況が続いている。
Bid/Ask比率も2万ドルを超えたところでBidがやや強くなり、価格が下落しにくい状態となったが、直近では50%前後と、拮抗した状態にある。
外部要因
米株価指数、特にNasdaq100との相関が0.96となっており、非常に強くなっている。株価は欧米主要国が足元の物価上昇を抑えるために金融引締め政策を発表したことによる、リスク回避の動き等により下落しており、ビットコインもその影響を強く受けていると考えられる。加えて、将来の法定通貨の下落率予想を表す期待インフレ率(下段赤線)も足元の高い物価上昇率を受けて0%付近の状態が続いており、逆風となっている。
ハッシュレート
ハッシュレートは下落傾向にある。次回難易度予想は▲8.52%の易化予想。
直近のクリプト指標
6月24日 ビットコインメジャーSQ日
6月29日 イーサリアム「Gray Glacier」アップグレード日
総括
ビットコインは、「USTのディペッグに端を発する暗号資産市場の動揺」により、6月中旬に大きく下落したが、CMEのビットコインメジャーSQが迫るなかで一旦落ち着きを見せている。デリバティブ市場においても、一部では売られ過ぎの状況も見られる。Three Arrows Capital関連企業で新たな問題が発覚しなければ、Micro Strategy社マージンコールとなる2.1万ドル付近を上回るかが焦点となるとみられる。