仮想通貨市場の状況と将来展望
大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースの投資部門コインベース・ベンチャーズは21日、2022年第2四半期(4-6月)の仮想通貨市場について振り返り、今後の展望を示した。特にWeb3ゲームやソラナ(SOL)などについて取り上げている。
Web3とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
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テラエコシステム崩壊の波及について
コインベース・ベンチャーズは、無担保型ステーブルコインUSTディペッグをきっかけとした債務の連鎖と、スリーアローズ・キャピタルを始めとする仮想通貨企業の破産について言及。投資家や貸し手が自分達のさらされているリスクを把握していなかった点は、従来型金融市場でこれまで発生した事例と似ているとした。
一方で、DeFi(分散型金融)プロトコルであるAave、Compound、MakerDAOなどが滞りなく稼働していることは重要だという。それらのプラットフォームで、すべてのローンとその条件は、誰もが見られるような状態でチェーンに記録されていた。
また、担保のレベルが閾値を下回ると、担保はコードによって自動的に売却され、貸し手が返済を受けとれる仕組みが存在した。破産申請したセルシウスが、Aave、Compound、MakerDAOへのローンを返済するよう強制されたのも、この仕組みが機能していたからである。
これについて、コインベース・ベンチャーズは「裁判所がローン返済を命令する必要はなかった。つまり、DeFiが持つ利点の強力な証明となった」と述べている。DeFiの他にも、ここ2年でNFT(非代替性トークン)や、DAOエコシステムなど多くの重要なイノベーションが起きているとも指摘した。
DAOとは
自律的に機能する分散型組織を指す。「Decentralized Autonomous Organization」の略。一般的な企業などとは違い、経営者のような中央管理者が存在しない。参加メンバーやアルゴリズムによって運営管理が行われる。
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Web3ゲームが好調
仮想通貨企業の資金調達状況については、全体的に2年ぶりに減少した四半期となった。コインベース・ベンチャーズは、こうした中でも好調だったセクターとして約3,600億円(26億ドル)以上の資金調達が行われたと推定されるWeb3ゲームを挙げている。
第1四半期から引き続き、Web2ゲームに強い実績を持つ創業者が、Web3にも参入しているという。事例としては、モバイルで大ヒットした「Star Wars Galaxy Heroes」というゲームのクリエイターらが設立した企業「Azra games」が存在。多くのユーザーを引き付ける、ゲーム内経済を備えた戦闘RPGゲームを作ることを目指している。
他にも、ゲームストリーミングプラットフォームTwitchの共同設立者Justin Kan氏の新会社Fractalが、NFTゲーム資産のためのマーケットプレイスを構築している。コインベース・ベンチャーズは、「成熟にはまだ時間がかかるものの、ブロックチェーンゲームが将来的に巨大なカテゴリーになることはますます明白になりつつある」と見解を述べた。
ソラナのエコシステム
コインベース・ベンチャーズは、ソラナ(SOL)のエコシステムが順調であることにも注目している。スタートしたばかりのチームがソラナを重視する傾向があり、コインベース・ベンチャーズは、2Qにソラナベースのプロジェクト10個に出資した背景がある。
設立当初からEVM(イーサリアム仮想マシン)とソラナ両方に対応するプロジェクトも増えており、EVMでスタートしてその後ソラナに移行するプロジェクトや最初からソラナで構築するプロジェクトも見られるという。
UX改善
現在、ユーザーの取引方法としては「法定通貨を仮想通貨に交換、ウォレットに転送、トークンを希望のネットワークにブリッジする」というものが典型的で、取引を実行するまでに手間がかかる。
コインベース・ベンチャーズは2Q、こうしたUX(ユーザー体験)を改善する複数の企業にも投資した。同社は、こうした方面が進歩していけば、最終的にユーザーがDeFiの取引をワンクリックで実行できるようになる可能性があると展望している。
コインベース・ベンチャーズは、その他の注目プロジェクトとして、分散型ソーシャル・ネットワーク「Farcaster」や、ミュージシャンが独自のWeb3対応ファンクラブを作成し、NFTエアドロップや、商品などを提供することができる「Highlight.xyz」も紹介した。
地理的状況
コインベース・ベンチャーズが出資した仮想通貨スタートアップは、64%が米国に集中していた。
その他に、アジアで起業するチームの拠点としてはシンガポールがあり、英国とドイツも、政策立案者が規制の明確化に向けて積極的に取り組んでいることから、起業が行われる環境として成長中であるという。また、コインベース・ベンチャーズは、インドも仮想通貨普及に関して将来大きな役割を果たすだろうと予測している。
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