「単独再建計画の方が顧客の利益に」
米国で破産申請した暗号資産(仮想通貨)投資プラットフォームVoyager Digitalは24日、仮想通貨取引所FTXとその投資部門アラメダ・ベンチャーズによる買収提案を拒否する文書を裁判所に提出した。
Voyagerは連邦破産法第11条の適用を申請しているところで、書類はその手続きの一環として作成されたものである。
米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは
日本の民事再生法に似た再建型の倒産法制度。経営を継続しながら負債の削減などを実施し、企業再建を行う。申請後に債権取り立てが停止され、債務者は負債の整理に取り組み、原則120日以内に再建プランを策定する。
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Voyager側の弁護士は今回の文書で、アラメダとFTXの提案は「両社に有利な条件で暗号資産(仮想通貨)を清算することに他ならず、Voyagerが提出した(単独)再建計画の方が、顧客の利益になるものだ」と主張している。
Voyagerは、単独再建計画案を提示する一方で、80社以上の第三者投資家や買い手と交渉し、単独計画よりも顧客にとってより良い代替取引があるかどうかを探ってきた。21日には、そうした取引を行うにあたっての入札手続きを申し立てたところだ。
これを受けてアラメダとFTXは22日、Voyagerの顧客に対する出金支援を行う提案をプレスリリースで公開。このことについてVoyager側は今回の文書で、提案を公の場で発表することは、「機密保持された競争入札プロセス」を破壊するものだと批判している。
提案拒否の理由
さらにVoyager側は、アラメダとFTXが「二重の取引構造」を考えていると指摘。Voyagerの仮想通貨資産と仮想通貨ローンを「公正市場価値」で購入した後に、仮想通貨を両社の口座に移動し、その後これらの資産およびローンに相当する米ドルをFTXのプラットフォーム上で顧客に返却するものだという。
Voyager側によると、米ドルで資産を分配する場合、顧客はその分配金に対してキャピタルゲインを始めとする税金を支払わなければならず、回収額が希薄化する可能性がある。Voyagerの単独再建プランでは、顧客の請求をドル建てにすることは計画されていない。
さらに、アラメダとFTXは、顧客の仮想通貨投資に基づく請求額は7月5日時点での、その資産の米ドル価値を上限とすることを提案していると続けた。Voyagerの単独再建プランでは、このような上限を設けないことを明確にしているという。
その他にも、両社の提案は、Voyagerの独自トークンVGXを実質的に廃止することなど、合計して6つの点で、顧客資産に損害を与える可能性があると説明した。
FTXサムCEOの主張
こうしたVoyager側の申し立てについて、FTXのSam Bankman-Fried CEO(通称サム)は25日、一連のツイートを行った。FTXとアラメダの提案は、Voyagerの顧客が出来る限り早く資産を取り戻せるようにするものだとしている。
サム氏は、マウントゴックスの破産手続きについて言及。顧客の資産は何年も凍結され、様々なコンサルタントがその過程で手数料を引いていると指摘した。破産プロセスが長引くほど、顧客に損害が発生する可能性があると示唆する形だ。
8) So we submitted an offer:
— SBF (@SBF_FTX) July 25, 2022
If accepted, any customer who wanted could come and get back their share of everything that remained, as soon as possible.
So the customer above would get back $75 immediately, *and* retain their claim in case more was recovered from 3AC.
サム氏は「もし私達の提案が受け入れられれば、希望する顧客は誰でも、できるだけ早く、残っているすべての資産のうち自分の分を取り戻しにいくことができる」と述べた。「顧客が望む場合は、コンサルタント手数料などを引かれる前に、資産を取り戻せるようになる」とも続けている。
「破産プロセスが長引けば、顧客の犠牲の上に、Voyager株式の価値が上がる可能性もある」ものの、今大切にするべきは株主よりも顧客の方ではないかと述べた。
Voyagerやセルシウスなど仮想通貨融資企業の破綻が続く中で、サムCEOは19日、業界の健全さを保つために「ある程度、条件の悪い取引をしてもいい」と話していた。