16億円以上を詐取した疑い
米商品先物取引委員会(CFTC)は12日、オハイオ州のラトナキショア・ギリ氏と、その会社NBD Eidetic CapitalおよびSR Private Equityを相手取って、連邦地方裁判所で訴訟を提起した。暗号資産(仮想通貨)投資詐欺の疑いが持たれている。
訴状によると、ギリ被告とその会社は、150人以上の顧客に約16億円(1,200万ドル)以上と少なくとも10BTC(約3,250万円)以上を不正に出資させ、その資金を流用していた模様だ。
両社は仮想通貨投資ファンドとして宣伝しており、「利益を保証する」など、多数の虚偽の陳述を行っていた。また、顧客に対して、初期投資とその利益をいつでも引き出すことができるとしていたが、これも偽りだった。
顧客に利益を支払うために、他の顧客の資金を不正流用するというポンジスキーム(ネズミ講の一種)のような手法を取っていたという。
さらにギリ被告は、私的な用途のためにも資金を着服。顧客資金を利用してヨットのレンタル、高級品のショッピングなど贅沢な生活を過ごすことに流用していたとされる。
CFTCは、ギリ被告に対して、詐欺に関するすべての活動停止と、給与、手数料、取引利益などの形で得た不正な金銭的利益を放棄するよう求めている。
CFTCのクリスティン・N・ジョンソン委員は、本件について次のように述べた。
最近、高い利回りやすぐに稼げることを謳い文句としながら、実態としては長年禁止されてきた詐欺的スキームを行うデジタル資産や仮想通貨の企業が存在しており、人々を引き寄せていることを懸念する。
説明責任を持って行われるイノベーションには多くの利点があるものの、顧客は詐欺的プロジェクトに対して警戒を怠るべきではない。
今回の事件は「どのような資産クラスであっても、効果的な法的執行と顧客保護が最優先事項でなければならないことを示す」とも続けている。
CFTCの管轄権限
ジョンソン委員は次のように、現在CFTCの権限には限界があることにも言及した。
CFTCは顧客を保護するという使命の下、市場を厳格に監視し、規制を執行しているが、新しい金融商品は新たな課題を生み出す場合もある。こうした新興市場における不正行為の特定と取り締まりは、CFTCの視界(監督範囲)が限定されているために、困難であったり遅れる可能性がある。
CFTCのヴィンセント・マゴナグル市場監視部門ディレクターは6月、「CFTCは現物市場を規制する法的権限はないものの、先物など仮想通貨を含むコモディティの現物市場に対し、不正防止や虚偽報告などに関する権限を持つ」と述べていた。
米国では仮想通貨などのデジタル資産を証券と定義して取り締まりを図るSEC(証券取引委員会)と、商品(コモディティ)として監督を試みるCFTCの間で水面下の監督争いが続いている状況だ。
CFTC(商品先物取引委員会)とは
商品取引所に上場する商品や金利、デリバティブ全般など、米国の先物取引市場を監督する機関。市場参加者を保護し、市場の健全性を確保するため、不正の防止・摘発を行う。
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