「仮想通貨による市民権取得は違憲」
中央アフリカ共和国(CAR)の憲法裁判所は29日、暗号資産(仮想通貨)サンゴコイン(Sango Coin)による市民権取得などは違憲との判断を示した。ロイター通信などが報じた。
サンゴコインは、同共和国政府が「Sango」という独自のビットコイン(BTC)のサイドチェーンで立ち上げた仮想通貨である。同国の仮想通貨イニシアチブ「サンゴ・プロジェクト」の一環として発行された。
ダイヤモンド、コバルト、ニッケルやウラニウムなどの天然資源のトークン化にも繋がる機能を持つ見込みであり、総供給量は210億枚とされる。7月より販売開始した。
「サンゴ・プロジェクト」は「ビジネスを歓迎し、世界の仮想通貨愛好家を魅了する」仮想通貨ハブを構築することを主要な目的としており、仮想通貨経済ゾーン「クリプト・アイランド」やメタバース開発なども構想されている。また、中央アフリカ共和国は4月より、ビットコインを法定通貨として採用しているところだ。
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サイドチェーンとは
処理速度向上を見込むサイドチェーンは、暗号資産(仮想通貨)が実用的かつ多機能に進化していく上で重要な役割を持ち、ビットコインなどのスケーラビリティ問題(トランザクション詰まりなどの処理遅延)を解決するための用途に使われる。
▶️仮想通貨用語集
サンゴプロジェクトの公式サイトは、外国人投資家が約830万円(6万ドル)相当のサンゴコインを5年間担保として保有することで、中央アフリカ共和国の市民権を購入できるとしていた。また、3年間約83万円(6,000ドル)相当のサンゴコインを保有することで「eレジデンシー」が取得可能であると説明している。
「eレジデンシー」は、中央アフリカ共和国で、オンライン法人登録やサンゴのアプリによる資産管理ができるようになるシステムとして計画されているものだ。
さらに、約139万円(1万ドル)相当のサンゴコインを10年間預けることで250メートル四方の土地を手に入れることもできるとしている。担保として預けたコインは、定められた期間終了後に投資家に返却される仕組みだ。
しかし今回、中央アフリカ共和国の憲法裁判所は「国籍には市場価値を付けられない」「居住権取得には実際に本国に滞在する必要がある」として、これらの計画は違憲であると判断した格好だ。
中央アフリカ諸国銀行は反対
中央アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)加盟国の地域銀行である中央アフリカ諸国銀行(BEAC)は、サンゴコインの発行に反対している。中央アフリカ共和国もBEACに加盟しており、他の参加国にはカメルーン、チャド、コンゴ共和国その他が挙げられる。
BEACは、同地域の金融政策の管理や通貨発行、外貨準備、為替レートなどを管理する機関だ。
BEACは5月、中央アフリカ共和国のビットコイン法定通貨化法の取り消しを求めていた。理由として、仮想通貨はこの地域で使われている中央アフリカフラン(CFA)と競合する可能性があることを指摘する形だ。
BEACの公式通貨は中央アフリカ・フラン(CFA)で、以前は為替レートがフランス・フランに固定されていたが、現在はユーロに固定されている。CFAは、フランス語圏アフリカ諸国で使用されており、元々は前フランス植民地の共通通貨だった。
また、国際通貨基金(IMF)アフリカ局のアベベ・アエムロ・セラシエ局長は、中央アフリカ共和国の仮想通貨イニシアチブについて「こうしたものを、各国が直面している経済的な課題の万能薬と見なさないことが非常に重要だ」とコメントしている。
「金融の流れの透明性という点で、法律やガバナンスの枠組みがしっかりと整備されていることを確認する必要がある」とも続けた。