業界へのVC投資額が大幅に減少
暗号資産(仮想通貨)メディア、コインテレグラフのリサーチ部門による第3四半期(3Q)のベンチャーキャピタル(VC)レポートが公開され、VCによる仮想通貨分野への投資額が66%減少したことが明らかになった。
Q2のVCの投資額は2兆1,330億円(146億ドル)だったが、Q3は7,275億円(49.8億ドル)と大幅に落ち込んだ。個別の投資案件数でみると、前四半期の621件から338件へと45.6%減少。
一方、Q3の月別の投資額を見ると、7月は2,893億円(19.8億ドル)、8月は1,987億円(13.6億ドル)と続落したが、9月には2,396億円(16.4億ドル)と20.6%の上昇に転じた。レポートはこの転換が、反転の兆しであると判断するのは時期尚早だとしながらも、VCの投資傾向は遅行指標として認識されていることから、市場の底打ちを示唆している可能性も考えられるとしている。
関連:a16zの主要仮想通貨ファンド、今年の上半期で40%価値減
Web3分野への投資
レポートは3Qの投資傾向として、2Qに引き続き最も多くの資金が流入したのはWeb3分野だったと指摘。Q3の投資案件の44.4%がWeb3分野への投資だった。最も活発な活動を行っているVC上位10社のうち、8社がWeb3分野に集中して投資を行ったという。
他の分野への投資比率は以下の通り:
- インフラ:20.1%
- DeFi(分散型金融):14.2%
- NFT:12.1%
- CeFi (中央集権型金融):9.2%
しかし、Web3と一口に言っても対象となる領域は幅広い。代表的な領域としてはゲームとメタバースが知られている。レポートではWeb3に分類された個別の投資案件を詳細に分析し、次のようなより細かいサブカテゴリーに分類した。
- インフラ(9件)
- ツーリング(Tooling、8件)
- データ(7件)
- アイデンティティ(7件)
- 市場(5件)
- 報酬(インセンティブ)(5件)
インフラやツーリングなどは、独立したインフラという分野への分類も可能だが、Web3に分類された案件の多くは、Web3全体の相互接続性に直接関連するという特徴を持っているという。レポートは、このような基礎投資が行われていることは、ブロックチェーン分野の発展のために明るい兆しだと評価している。
また、データのストレージやセキュリティ、Web3環境における分散型IDの需要などに、すでに一部の投資家は注目していると指摘。報酬に関する案件は、どのようにトークノミクス(トークンの配布計画)を構築するかに関するもので、Web3分野の発展に欠かせない参加者のインセンティブの高め方に焦点を当てたものだったという。
3Qの主要な投資
レポートは3Qに行なわれた主要な投資10件について紹介。そのうち上位2位はSequoia Capitalの1兆3148億円(90億ドル)とQiming Venture Partnersの3,652億円(25億ドル)で、いずれも中国市場への投資となっている。SequoiaはPinduoduoやMeituanなど、すでに中国で900社以上に出資しているという。
また、Insignia Venturesは754億円(5.16億ドル:投資額で6位)を東南アシアのテクノロジー企業に投資するなど、Q3ではアジア市場への進出が際立っているようだ。レポートは異なる企業で複数の動きがあることに注目し、「ポジティブなシグナルが点滅し始めた」と評価。
さらにレポートでは、Web3関連の注目される投資として、ペイパルの創業者Peter Thiel氏が支援するValar Ventures(972億円、6.65億ドル)、Headline(1,316億円、9億ドル)、Multicoin Capital(628億円、4.3億ドル)による新たなファンドの立ち上げについて言及した。