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ヴィタリック氏「仮想通貨取引所が信頼を取り戻す方法」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

「強力な技術」の活用

イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は19日、中央集権型の暗号資産(仮想通貨)取引所が信頼性を取り戻すための改善方法を提案。「安全なCEXを築く:支払い能力の証明とその先」と題したブログで、ゼロ知識証明ベースの暗号化技術「ZK-SNARK」を活用し、取引所のプライバシーと堅牢性を向上させる方法について論じた。

ブテリン氏は、取引所による資産証明方法について過去を振り返る中で、データの要約と検証を行う「マークルツリー」技術に言及。この技術は取引所の負債証明には適しているが、プライバシー保護には難点が残ると指摘した。

一方、同氏はZK-SNARKは、「ここ数十年間で多様な問題のために開発された特定用途の技術を、完全に圧勝するほどの強力な汎用技術」だと絶賛。暗号技術にとって「AIにとってのトランスフォーマー(深層学習モデル)のような強力な技術」と高く評価した。

ブテリン氏は、ZK-SNARKを使うことで、負債証明プロトコルのプライバシーを大幅に簡素化し、改善することが可能だと主張。また、いくつかの方程式を追加するだけで、さまざまな制約をシステムに組み込む複雑な設定にも対応できると語る。

複雑な制約を証明するために使用することが可能なことから、ZK-SNARKは、顧客資金の安全性を証明し、取引所による信頼性の獲得につながると同氏はメリットを説明した。

ゼロ知識証明とは

「自身の主張が真実であること以外の情報を検証者に開示することなく(=ゼロ知識)、その主張が真実であると証明できる」という特性を持つ証明プロトコルの一種。

ブロックチェーンの外部で処理を行ない、その過程を提示しなくても、その処理が正しく実行されたことを証明する。スケーリング技術の一環として注目を集める。

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関連:個人情報管理のカギとなる「ゼロ知識証明」とは|XSL Labs寄稿

資産の証明

取引所による資産証明の最も簡単な方法は、コールドウォレットからパブリックアドレスへの転送だとブテリン氏は考察。しかしその反面、この方法には担保の二重利用と、アドレス所有権の証明のコストという問題があるとも言及した。

担保の二重利用については、取引所間で担保をやり取りすることで支払い能力を証明する方法があるが、虚偽の証明に繋がりかねないと警告。理想的にはリアルタイムで、ブロックごとに証明が更新されることが望ましいと述べた。

また、法廷通貨の資産証明は、暗号技術によって検証することはできないため、取引銀行による残高証明や、監査人による貸借対照表の証明といった方法に限定されると付け加えた。

ユーザー資金の悪用防止策

また、ブテリン氏は取引所によるユーザー資金の悪用を防ぐ方法について、技術的限界の見えたPlasmaとその進化形である「validium」を紹介。validiumはデータがオフチェーンで保持される以外は、基本的にZKロールアップと同じで、コードが正しく実行されているかを証明する場合に使用できるという。

validiumを活用することで、取引所の運営者がユーザー資金を盗用することは防ぐことが可能だが、運営者がいなくなった際に幾らかの資金が滞留してしまう可能性もあるという。

ロールアップとは

メインブロックチェーンのセキュリティを活用しながら、トランザクションの一部をオフチェーン(ブロックチェーン外)で処理することにより、ネットワークの混雑解消を図るL2のスケーリング・ソリューションのこと。

ZKロールアップはゼロ知識証明技術を搭載したロールアップを指す。

▶️仮想通貨用語集

関連:スケーリング問題の打開策「ロールアップ」とは|仕組みや注目点を詳しく解説

CEXとDEX

ブテリン氏は技術の活用により、長期的にはCEXとDEX(分散型取引所)という二つの選択肢に限定されない、さまざまなハイブリッド型のオプションも考えられると楽観的な見方を示した。

一方、ユーザー自身によるエラー(パスワードやデバイスの紛失)やハッキングを見落としてはならないと注意を喚起し、取引所が問題に対処することが可能だと述べた。その際、取引所が実際に仮想通貨を管理するため、ユーザーのアカウントにアクセスする能力を有することが必要となるが、それは「避けられないトレードオフだ」とブテリン氏は述べた。

DEXとは

「Decentralized EXchange」の略で、中央管理者がいない取引所を指す。中央管理者を介さずに当事者間で直接取引できるため、管理者に手数料を支払う必要がないなどのメリットを持つ。

▶️仮想通貨用語集

短期的にはカストディ型取引所(例:コインベース)と非カストディ型取引所(例:Uniswap)の二つの選択肢から、問題が発生した場合の資金損失のリスクを取引所に委ねるか、自分自身が管理するかを判断する必要がある。

しかし、理想とされる解決策は、長期的には、ユーザーが資産を管理するセルフカストディであり、ユーザー自身が緊急事態に対処できるようすることだと同氏は主張する。将来的にはユーザー資金をvalidiumスマートコントラクトに預けるなど、暗号技術の制約を受けたCEXも誕生するかもしれないと述べた。また、仮想通貨ではなく法定通貨のみを預ける「半カストディ」型の取引所が出てくる可能性にも言及した。

関連:自己管理型のハードウェアウォレット、週間売上高が過去最高に

ブテリン氏はカストディ型取引所の安全性を向上させるためには、準備金の証明を公開することが最も簡単な方法だと指摘。準備金証明は資産証明と負債証明の組み合わせから構成されるため、それぞれのプロトコルを開発する必要があり、技術的な課題もあるという。しかし、開発に全力を尽くすと共に、ソフトウェアやそのプロセスを可能な限りオープンソース化し、すべての取引所が恩恵を受けられるようにすべきだと同氏は強調した。

バイナンスの計画

バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは14日のAMAセッションにて、ブテリン氏と資産証明について話し合ったことを報告。ブテリン氏が考案する資産証明のプロトコルを、バイナンスが実装し「実験台」となる計画があることを明らかにした。

関連:CZ氏「バイナンスは安全に運営されている」

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