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トロン(TRX)創設者が語る、FTX騒動の教訓と業界再起への道筋 ジャスティン・サン氏との独占インタビュー

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

独占インタビュー

暗号資産(仮想通貨)トロン(TRX)の創設者でありながら、カリブ海に位置するグレナダの世界貿易機関(WTO)常駐代表および特命全権大使、そして大手取引所Huobiのアドバイザーなど数々の役割をこなす業界有識者のジャスティン・サン氏。

ドミニカ国は22年10月、トロンをを国家公認ブロックチェーンとして認め、TRXなど複数の仮想通貨を法定通貨として認めたばかり。しかしその翌月、同じカリブ諸島のバハマに拠点を置く大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXおよび関連投資企業アラメダ・リサーチが破綻し、業界を大きく揺るがしている。

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発端となったのは、11月2日にリークされた財務諸表から発覚したアラメダの債務超過リスクだ。

保有資産の大半が、高リスクで流動性の低いFTXトークン(FTT)などで占められていたことなどが判明し、信用不安からFTTの暴落とバンクラン(取り付け騒ぎ)が発生。資金繰りの行き詰まったFTX、およびアラメダの破産申請につながった。

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このような状況の中、騒動から学ぶべき教訓についてジャスティン・サン氏に伺った。

FTX騒動の教訓

サン氏は、2008年に発生した金融危機リーマン・ショックを引き合いに、極端な「流動性危機」がコンテージョン効果を引き起こすのは初めてではないと言及。

米ウォール街の大手金融機関による資金リスクの管理不足が主な要因だったが、当時FRB(米連邦準備制度)が救済せざるを得ない状況に陥るなど、FTX騒動より「はるかにパニック相場のスケールが大きかった」と振り返り、「投資家は冷静であるべき」だとコメントした。

一方で、大手取引所FTXおよびアラメダ・リサーチの財政破綻は「(結果的に)ブロックチェーンのインフラを改善し、大事な教訓を学ぶ機会をもたらす」と説明。業界全体が透明性の向上と再発防止策に向けて一丸となって連携していく状況になったと、前向きな見方も示した。

我々の使命は、ブロックチェーン業界が真に革新し、成長し続けるための唯一の方法であることを念頭に置いている。

バイナンスの代表であるCZらと協力するリカバリー(事業再生)ファンドは、業界全体の連携を強化し、主要プレーヤーにもっと責任を持たせ、課題や市場の変動を克服するためのリソースを引き出すことを目的としている。

こういった側面から、(将来的には)FTX騒動があったからこそ大きな成長につながったと言えるようになるかもしれない。

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業界の改善に向けた動き

バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOが提唱した事業再生ファンドを含めて、サン氏は以下の3点が業界全体としての改善防止策として列挙。一貫したテーマは「透明性」の向上だと述べた。

  • リカバリーファンドの設立
  • 業界団体の設立(ベストプラクティスの策定)
  • 取引所の顧客資産に関する情報開示(PoR)

リカバリーファンド(事業再生イニシアティブ)はFTX騒動後、「流動性危機に直面しているプロジェクト」を支援する目的でバイナンスが主導するプロジェクト。すでにバイナンスは20億ドル(2,700億円)の投資を表明しており、アニモカやポリゴンなどWeb3業界大手団体も出資にコミットした。

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またサン氏は、同じくCZ氏が提唱した中央集権型取引所(CEX)による顧客資産の情報開示(PoR)も高く評価。

FTXでも、(上場企業のように)「顧客資産情報が十分開示されていたら、顧客資産の悪用は困難だった可能性がある」と指摘。また、投資家自身がこの情報を確認できれば、信用不信からバンクランが発生しにくくなるとした。

クラーケンやコインベース、バイナンスなど主要取引所はすでにこのような取り組みを開始している。

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業界団体について

業界内でもう一つ検討が加速しているのは、Web3企業のベストプラクティスなどを定める業界団体(自主規制団体)の設立だ。

サン氏は、過去にもこのような議論は浮上したが、「単にリソースを集めるだけでなく、この事例から教訓を学び、コンプライアンスと業界の透明性を強化するためのより効果的なメカニズムを模索する、結束力のあるダイナミックな業界組織」のニーズが顕著になっと指摘。

以下のように説明した。

ブロックチェーン業界のグローバルな業界団体は、FTX騒動の直接的な結果として考案された最新の取り組みだ。

(11月中旬に)インドネシアでCZと私が直接会って、その会話の副産物として生まれたアイデアとなる。

そして、こういった団体の設立はいい頃合いだと思う。この種のアイデアは今回が初めてではないが、このFTX騒動がその必要性に拍車をかけたのは明白だ。

インドネシアの首都バリでは2022年11月にG20会合が開催され、CZ氏はG20主催のビジネスカンファレンスB20に登壇。グレナダの世界貿易機関(WTO)常駐代表特命全権大使であるサン氏も会合に出席していた。

サン氏は国際的な自主規制団体の設立など、「自律の精神」が業界の信頼を回復する上で大事になる点を強調。また、自主的に再発防止に向けたルール決めを能動的に行うことで、FTX騒動に過敏に反応して、各国政府が過度な規制を策定するリスクを牽制する利点もあると説明した。

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一方で、今回の出来事はブロックチェーン自体の問題ではないと言及。「分散化されたインターネット上で全てのブロックチェーンが自由に稼働することを可能にする」Web3のビジョンはまだ初期段階にあり、「希望はなくなっていない」と主張した。

さらに、1929年の米大恐慌後にバンクランが発生した教訓から連邦準備制度が設立されたように、「危機の後には改善の機会が訪れる」と指摘。業界団体の設立などの取り組みは「透明性改善という正しい方向に向かう為の意義ある一歩」だと楽観的な見方を示した。

ジャスティン・サンとは

ジャスティン・サン氏は中国出身の仮想通貨有識者。北京大学やペンシルバニア大学を卒業後、SNSアプリ「Pelwo」の創設者としてフォーブス中国の「30 Under 30」に名を連ねる起業家として頭角を表した。

リップル社で勤務した後、独自の仮想通貨プロジェクト「トロン(TRON)」を始動した。主要開発者および創設者としてプロジェクトを牽引したが、21年12月にはトロン財団の解散と同時にCEO職を辞任し、TRON DAOが代わりに設立。コミュニティ主導の体制に移行した。

関連:ジャスティン・サン氏、トロンの第一線を退く意向

2021年12月には、グレナダ政府がサン氏の世界貿易機関(WTO)常駐代表および特命全権大使への就任を発表。22年秋には香港の投資ファンド「About Capital」のHuobi買収に際して、アドバイザーにも就任している。

本インタビュー後編では10月に発表したトロン経済圏との連携をドミニカ国との連携や2022年に始動した独自ステーブルコインUSDDに関するサン氏のスタンスを紐解いていく。

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