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伝統金融市場を通して見る「仮想通貨業界の伸びしろ」

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仮想通貨市場が低迷する理由
他の金融市場と比較するとまだまだ市場規模は小さく、米株式市場では、機関投資家の比率が60%を占め、個人投資家の割合は約33%に過ぎないが、仮想通貨市場は、約95%以上が個人投資家によって占められている。

仮想通貨市場が低迷する理由

2017年12月に驚異的な伸びを記録したビットコインと仮想通貨。

そして2018年1月の劇的な暴落に始まり、高騰と下落を繰り返しながら現在にいたり、ビットコインを例にとると、ピーク時のほぼ1/3、仮想通貨市場全体でみると、1/4という低い価格帯で低迷しています。 

市場は冬のムードに包まれ、雪解けのきっかけとなる明るい材料を待ち望んでいるかのようです。

このような仮想通貨市場を、勝者と敗者がはっきり分かれる「ゼロサムゲーム」だと見る向きもあります。

 しかし、他の投資市場と比較すると、まだまだ市場規模は小さく、例えばデリバティブ投資の一種であるCDS市場が、金融危機直前には、全世界のGDPの100%であったのに対し、仮想通貨市場は、そのピーク時でさえも1%にも満たない規模だったという事実を心に留め置き、大局的に見ることを忘れないようにしたいものです。 

では、今年の仮想通貨市場が低迷している理由はどこにあるのでしょうか。

今年上半期だけで、120億ドル(約1兆3200億円)を超える資金調達に成功したと言われるICOからの売り圧力も多分にあるでしょう。

ここにきて、主にETH建で行われたICOで資金調達を行ったスタートアップ企業が、イーサリアムを換金し始めた動きが観察されています。中でも、今年に入り、大きな価格上昇を見せたEOS陣営によるETH大量売却の可能性も指摘されています。

根本的な原因は

しかし、根本的な原因は、仮想通貨市場の独特な参加者構成にあるようです。

伝統的投資市場、例えばアメリカの株式市場では、投資信託、年金および政府退職基金やヘッジファンド、ETFや国際投資家などの、いわゆる機関投資家が、市場の60%を占め、個人投資家の割合は、約33%にとどまっています。

これに対し、仮想通貨市場は、未だ、その約95%以上が、個人投資家によって占められていると見られています。 

ヘッジファンドやベンチャーキャピタルからの新たな資本流入についてのニュースは、今年に入り相次いで報告されているものの、依然として機関投資家が市場に占める割合は、伝統的市場に比べて、非常に低いようです。

実際の機関投資家による仮想通貨保有の割合は、正確には把握し難いものの、ビットコイン株、先物やヘッジファンドによる所有などのデータからの推測は可能です。

まず、ビットコイン株の例で見ると、現在ビットコインや他の仮想通貨そのものの株式は存在しませんが、一番近いものが、アメリカの投資会社、Greyscale Investments社発行の、Bitcoin Investment Trust (NASDAQOTH:GBTC)で、現在のGBTCの時価総額は15.4億ドル(約1694億円)です。 

Greyscale社の発表によると、今年に入ってからの、同社での仮想通貨投資に占める機関投資家の割合は56%で、この数字を上記のGBTCの時価総額に当てはめた場合、機関投資家が保有するのは、8624万ドル(約94億8640万円)に過ぎません。

機関投資家と先物市場

次に、およそ機関投資家の独壇場と言われる、先物市場を見てみましょう。

4月のCCNの報道によると、1日あたりのビットコイン先物の取引量は6億7000万ドル(約737億円)で、ビットコイン先物の証拠金率44%を適用すると、9億6500万ドル(約1061億円)相当の先物契約が締結されていることになります。

最後に、Crypto Fund Researchのデータによると、466の仮想通貨ファンドが、71億ドル(約7810億円)の仮想通貨資産を所有しているとのことです。

これら三つの資産クラスの合計(8624万ドル+9億6500万ドル+71億ドル=81億5124万ドル)は、仮想通貨全体の時価総額(執筆時、約208億ドル)の約4%となり、この試算結果から推測すると、いかに機関投資家投資の仮想市場に占める割合が低いかが、数字として如実に現れてきます。

今年に入り、価格の低迷が続くとはいえ、ほとんど個人投資家だけで、ここまで仮想通貨市場を盛り上げてきたという事実は、驚きとともに賞賛に値すると思われます。

その一方で、投資のプロとして、いわば相場の「修羅場」をくぐり抜けてきた経験豊かな機関投資家に比べ、投資経験の個人差が非常に大きい個人投資家が支えている仮想通貨市場は、投資家の感情に強く影響を受けやすい市場であると言うこともできるでしょう。

仮想通貨が初めての投資経験だという個人投資家も多く存在し、投資の基本的知識やリスクを十分に理解しないまま、大暴騰を遂げた昨年秋からの仮想通貨ブームに乗り遅れまいと投資を始めた投資家は、特にFUD( 恐怖、不確実性、疑念)にかられて、感情的な売買をする傾向にあるかもしれません。

そして、仮想通貨に関しては、FUDを煽るような報道が見受けられるのも事実です。 また、価格上昇の可能性などについての扇動的な情報も氾濫しており、乗り遅れまいとする心理から、「買い」の勢いに飲み込まれてしまいがちです。

このような投資家の心理的な面が、仮想通貨相場へ与える影響は無視できないものです。特に、個人投資家が95%を占める、現在の発展途上の仮想通貨市場では、その影響はより顕著なものとなるでしょう。

それが現在の市場の状況へ反映されているのではないでしょうか。

しかし、ここで視点を変えて見ると、この市場には、まだまだ大きなチャンスが潜んでいるとも捉えられます。

個人投資家の場合でいうと、個々人が投資の知識を増やし、市場に影響を及ぼす国際情勢や社会情勢により敏感になり、質の高い情報を選び判断を下すことができるようになることで、一人一人がより賢明な投資家として成長でき、それが集積すると、市場を支え、発展させる大きな力となり得ること。

そして、より具体的かつ現実的に考えられるのは、規制やカストディなどの投資環境が整うことにより、未だ非常に小さい割合を占める市場参加者である機関投資家からの資金が、この市場へ流入してくることが予想され、仮想通貨市場が大きく成長につながることが期待されることです。 

その規模は、未知数ですが、この市場はまだまだ発展途上にあり、大きな可能性を秘めていることだけは、確かだと言えます。

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