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グアテマラのビットコイン・レイクに行ってみた|体験記寄稿5 草の根活動を通じてビットコインが広まった現場で見たこと・感じたこと

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

決済に適したライトニングウォレットとは?

前回の記事では、エルサルバドルとグアテマラでライトニング決済を行った経験についてお伝えしました。私自身がさまざまなウォレットで決済してみて、さらには視察団の他のメンバーの決済の様子を見て、決済に最適化されたウォレットの要件について考えてみました。

  1. 世界中の全ての法定通貨に対応
  2. ビットコインとsatsどちらにも対応
  3. 確実に決済できる
  4. 手数料の上限設定が可能
  5. ノンカストディアル

1, 2. 通貨対応

前回記事の通りです。

3. 確実に決済できる

当然と思うかもしれませんが、実際にはそうでもないことが分かりました

CashApp

アメリカで人気のCashAppは、ライトニングウォレットというより、株やビットコインの取引プラットフォームとPayPalのような送金アプリが合体したもので、送金手段の1つとしてライトニングネットワークにも対応しているという感じです。

ビットコイン・レイクでCashAppを使ってライトニング決済を試みた人たちは、ことごとく失敗していました。しかも、処理中という画面が数分から数十分にわたり表示され、失敗したことがすぐには分からず、処理完了を待つか、別のウォレットで決済し直すかの判断に迷います。(さらに、トランザクション履歴には、失敗トランザクションが”canceled”と表示され、トランザクション詳細を表示して初めて”failed”だと分かる謎のUIでした。)

高い失敗率は、CashAppが2つのノード(うち1つはRiver Financial)にしか繋がっていないことが原因だろうと聞きました。CashAppはライトニングの主用途をCashAppユーザー間の送金、つまり、ライトニングネットワークを使わない自社データベースの書き換えと想定しているのかもしれません。

CashAppは使いやすいと評判のアプリですが、失敗率の他にも、ライトニング決済画面に辿り着くまでに要するタップ数の多さなど、ライトニング決済には向いていません。

Zeus

Zeusでの失敗率の高さはZeusそのものの問題ではありません。Zeusは自分のノードをスマホでリモート操作するインターフェイスのようなもので、ノードとの通信にTorを利用する人が多いです。Torの不安定さが決済失敗の原因のようです。

Breez

ノンカストディアルながら使いやすいと人気のBreezですが、iOS版共通の問題なのか、私の環境の問題なのか、起動時の同期が進まずに使えないことがありました。

4. 手数料の上限設定が可能

手数料は低いなりにも、ライトニング決済を頻繁に行うと気になるものです。

私が普段一番よく使うMuunは正確にはライトニングウォレットではありませんが、ウォレットを1つしか持たず、ライトニング決済も滅多に行わないような初心者には適していると思うので、おすすめウォレットとして挙げています。ただ、ライトニング決済を頻繁にすると、手数料がロシアンルーレットなことに気がつきます。

通常はBlueなどより安いのですが、5~10回に一度くらいの頻度で上昇し、思わず二度見することがあります。

BreezとPhoenexには手数料の上限を設定できるオプションがあります。設定メニューに隠れていて気づかない人もいるかもしれないので、決済フローの中で表示しても良いと思います。

Pheonexは受金時に1%(最低3,000 sats)の手数料を課される場合があります。これも設定メニューの手数料の項目には明記されていますが、気づかない人もいると思うので、表示方法を再考した方が良いでしょう。

5. ノンカストディアル

これは今のところ必須ではなく、努力目標なのかもしれません。Breez、Phoenix、Zeusはノンカストディアルです。

そもそも、ライトニングウォレットはホットウォレットですし、βバージョンのものも多いため、残高は失くしても泣かない程度の少額にとどめておくべきです。しかし、今回はビットコイン・レイク滞在中の5日間の宿泊費、交通費、飲食費、お土産代、チップなど全てビットコインで賄いたかったので、私にしては結構な量のビットコインを入れており、なかなか緊張しました。

最近、1年近く使っているBBWから強制ログアウトされました。BBWはカストディアルなので、バックアップはなく、自力で復元はできません

単に再度ログインし直せば良いのですが、ここで1つ問題に気づきました。BBWをダウンロード、セットアップしたのは、昨年3月にエルサルバドルを訪問した時です。

セットアップ過程で、電話番号によるKYCを求められます。深く考えずに、現地で購入したプリペイドSIMの番号を入力、SMSで受信したコードを入力してセットアップを終えました。

この時の番号は旅行中だけ使って、チャージ金額を使い果たした時点でアクセス不能になりました。しかし、BBWに再ログインするには、この番号でSMSを受信する必要があるのです。

幸い、グアテマラ訪問中にBBWに入れていたビットコインは帰国後コールドウォレットに戻していたため、残高は1,500円程度です。諦めはつきますが、一応、ユーザーネームで復元してもらえるよう開発会社であるGaloyと交渉中です。

彼らにとっても今回の強制ログアウトは予期せぬものだったらしく、私のような状況に陥っている人が多いとのこと。ウォレット作成後の電話番号変更を可能にするなど改善策を話し合っているそうです。

同じくカストディアルのWoSにも、以前アクセス不能になったことがあります。この時は、アクセス回復にあたり、登録したメールアドレスの他、直近の残高とトランザクションについて情報を求められました。たまたま覚えていたから良いですが、忘れていたらGoxしていたかもしれません。

カストディアルタイプのライトニングウォレットは、チャネル管理不要、バックアップ負担がない、UXが良いなどメリットがあるので、初心者には向いていると思います。ただ、ある程度慣れたら、いろんな意味でリスクを下げるために、ノンカストディアルに移行した方が良いでしょう。

現時点で決済におすすめのウォレット

帯に短し、たすきに長しではないですが、それぞれプロコンがあり、決済用途に最適化されたライトニングウォレットはまだないというのが個人的な感想です。

カストディアルならWoS、ノンカストディアルならBreez(同期問題が起きるようならPhoenix)、ノードを運用しているならZeusでしょうか。

ライトニング決済のポテンシャル

発行国でしか通用しない法定通貨に対して、ビットコインはグローバル通貨です。日本人がビットコインの利便性を感じるのは海外に出た時ではないでしょうか。

近年、クレジット会社は不正利用を警戒するあまり、海外、特に途上国での決済を承認しないケースが増加しています。現地の空港でいざSIMカードを買おうとした時、タクシーやUberで市中に移動しようとした時、クレジットカード決済が通らずに困ったことは1度、2度ではありません。こんなとき、頼りになるのがビットコインです。

以下はNayutaのCEO栗元さんのツイートです。

Bitrefillはさまざまなギフトカードを販売しており、ライトニング決済に対応しています。エルサルバドルだけでなく、私が住むメキシコでもBitrefillを介することで携帯電話料金をビットコインで支払えます。ライトニング決済なので、すぐにデータ容量や通話時間にも反映されます。

Uberのギフトカードも販売しており、私もよく利用しています。

筆者提供

Bitrefillと似たようなサービスにThe Bitcoin Companyというのもあり、こちらでは汎用性の高いVisaのバーチャルカードにビットコインでチャージが可能です。こういうものが増えて日常生活がビットコインで回せるようになると、生活費として法定通貨をキープせず、ビットコインにオールインできるようになりますね。

筆者提供

ちなみに、弊社Fulgur Venturesはビットコインそのものが交換手段として普及するにはまだ時間がかかるので、その間、ビットコインを間接的に交換手段として使えるようにするサービスの需要は増えると考えており、BitrefillとThe Bitcoin Companyの両社に投資しています。

海外での決済手段としてのポテンシャルに関してもう1つ。本連載第1弾で、グアテマラ入国に際して、デモの混乱でパスポートに入国スタンプを押してもらえなかったとお伝えしたのを覚えているでしょうか?入国記録がないことで、グアテマラ出国時に問題が発生しました。(実際には私は運良く、担当の管理官の機嫌が良かったからか、怠惰だったからか理由は不明ですが、すんなり出国させてもらえました。下記は視察団の他のメンバーの体験談です。)

空港カウンターでチェックインを済ませ、保安検査の長い列に並び、検査を終えてパスポートコントロールに向かうと、入国記録がないから出国させられない、今ここで入国スタンプを押すから、もう一度、出発ロビーに戻って保安検査からやり直すように命じられたのです。しかも、入国するには空港利用料だか入国税として200ケツァルを現金で支払わなければならないと言います。

この時点で、彼はケツァルを使い果たしており、両替しないとないから、戻ってきた時に支払うことで納得してもらいました。荷物を引きずり、ロビーに戻り、両替商を探して両替。

しかも両替商はパスポートのコピーを取り、携帯番号を控えたりとフルKYCを実施したそうです。ビットコイナーにとっては屈辱ですね。この時、彼は思ったそうです。ビットコインで支払れば良いのにと。

国際空港でビットコイン払いできるようになる、さらにはビットコインATMがあると便利だなとは以前から思っていました。半端に余った現地通貨やVAT返還分を使い切るために、免税店でチョコレートやミネラルウォーターを買うのは無駄です。

空港でビットコインに変えられれば、結構stackできそうです。ちなみに、エルサルバドルの空港にはビットコインATMが設置され、空港利用料もビットコインで支払えます(日本のパスポートを持っていると何故か空港利用料は免除されます)。

上記は日本人が海外に出た時にビットコインは実は使えると思うのではという目線で書きましたが、これはそのまま、外国人旅行客の訪日時にも当てはまります。ビットコインビーチ、ビットコイン・レイクのように、ビットコインを軸に観光需要を掘り起こす、観光地や空港にライトニング決済を導入して旅行客の利便性を向上する。ぜひ検討してほしいです。

2022年に連載させていただいた「ビットコインが法定通貨になったエルサルバドルへ行ってみた|体験記」で紹介したトップダウン型アダプションとは対照的に、草の根の啓蒙活動を介してボトムアップ型のアダプションを目指すビットコイン・レイクに感じたものは、エルサルバドルの時と同じ「希望」でした。私が感じた希望が皆さまに伝わったかはわかりませんが、何かしら感じるものがあれば幸いです。

寄稿者:練木照子(Teruko Neriki)練木照子(Teruko Neriki)
ビットコインとライトニング関連スタートアップへの投資に特化したVCフルグルベンチャーズ所属。「ビットコインスタンダード」「ビットコイン、強気にならずにはいられない理由」「ビットコインの歩き方」翻訳出版。ビットコイン研究所について詳細はこちらからご覧いただけます。
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