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国の債務不履行(デフォルト)とは|投資家を混乱させた米国の債務上限問題など解説

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2023年6月に、アメリカが債務不履行(デフォルト)に陥るのではないかと、世間をにぎわせました。最終的には債務上限が引き上げられましたが、今後も同じリスクが発生する可能性は決して否定できません。

万が一アメリカが債務不履行に陥った場合、経済だけでなく金融や不動産においても世界的に計り知れない影響を及ぼします。大混乱が予想される状況下に備えるには、債務不履行の詳細や過去の事例などを押さえておく必要があると言えるでしょう。

そこで本記事は、債務不履行(デフォルト)について日本や海外の例を踏まえ解説します。アメリカでたびたび債務不履行が意識されるようになった背景、仮に、債務不履行に陥った場合に考えられる各業界への影響についてもご紹介。投資家が取るべきポジションについても解説します。ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 債務不履行(デフォルト)とは、借りたお金を返せないこと
  2. アメリカが債務不履行に陥りかけた背景
  3. アメリカの債務不履行が各業界に与える影響は計り知れない
  4. 債務不履行に備え、投資家が取れる対策
  5. 債務不履行に関する情報を逐一追い、最悪の事態に備える

1.債務不履行(デフォルト)とは、借りたお金を返せないこと

まずは、今回の騒動の中心となったキーワードである「債務不履行(デフォルト)」について解説します。

一般的に債務不履行とは、正当な事由なく債務を履行しない、もしくは履行が不可能である状態です。また債務とは、借金返済の義務を意味します。

個人や企業など、債務不履行に陥るケースはさまざまありますが、本記事で主に焦点を当てるのは国家の債務不履行です。国家が債務不履行に陥ると、公的に発行した国債や債券を持つ債権者に対し支払いができない状況になるため信用が地に落ちると共に続く資金調達が困難となり、財政破綻に至るケースもあります。。

この点、債務が多ければ多いほど返済が困難になり、債務不履行に陥る可能性が高まります。しかし、対GDP比で見ると世界一債務の多い日本は、債務不履行に至っていません。その点に関する議論について、次章で詳しく説明します。

1-1.日本は債務不履行になりえるか

日本の債務は1,000兆円を超え(対GDP比250%)、驚異的なスピードで増加中です。1990年代頃は200〜300兆円で推移しており、この30年で5倍近く債務額が拡大したことになります。主な原因としては日銀の政策方針のほか、人口減少・経済停滞など債務返済を後押しする要因の勢いが低下していること、年金・医療・子育て・介護に充てられる社会保障費が増えたこと等でしょう。

しかし、日本は債務不履行に至っていません。それどころか「日本が債務不履行に陥る可能性は低い」とする声もあります。

その最大の理由は、国債を外貨建てではなく、法的には政府から独立した機関である日本銀行の発行する独自通貨「日本円」で発行しているため。いざとなれば、ハイパーインフレーションを引き起こすことを代償に通貨を大量に発行して返済することは可能。また、国債を購入する債権者のほとんどが日本人と日本国内の機関であり(令和4年9月末速報値で海外の保有者は7.1%)、借金が国内で完結している点日本銀行の2022年第四半期の発表によると家計の金融資産は2,000兆円を超えている、つまり国内には十分な額のお金があることも、その理由として挙げられることが多いです。

しかし、そういった意見には反論もあります。例えば、仮にハイパーインフレーションが起きた場合は日本円の価値が暴落するため、対外的な輸入事業に大打撃を与えるでしょう。それは、エネルギーや食料の大部分を輸入に頼る日本にとっては致命的です。

また国債を通じた借金が国内で完結しているとはいえ、国債の半分近くは日銀が保有しています。その構造上、日銀が無限に国債を引き受け続ける対応は現実的ではありません。

今回アメリカが債務不履行の危機に瀕したように、日本にもそのリスクがある点は留意しておきましょう。

1-2.過去に債務不履行を起こした国

続いて、過去に債務不履行を起こした国の例についてご紹介しましょう。

2009年、ギリシャでは政権交代をきっかけに財務赤字が隠ぺいされていたことが明るみになり、ギリシャ国債が暴落。ユーロの下落、ひいては世界経済に多少なりとも影響を与えるきっかけとなり、事実上の債務不履行を起こしました。

その他、中南米のドミニカ共和国やエクアドルで、債務不履行が起きた事例があります。

上記は過去の事例ですが、2023年時点、現在進行形で債務不履行の危機に瀕している国も。ロシアやアルゼンチンの例をご紹介します。

1-3.現在進行形で債務不履行に陥る可能性のある国

2023年現在、債務不履行に陥る可能性があるロシアやアルゼンチンの背景や置かれた状況をご紹介します。

なお、債務不履行に陥る、もしくは可能性が高いと判断されると、信用格付けに影響します。信用格付けとは、「Moody’s Corporation(ムーディーズ)」「Fitch Ratings Limited(フィッチ・レーティングスリミテッド)」「Standard & Poor’s(S&P:スタンダード・アンド・プアーズ)」などの格付け会社が国や企業の債務返済能力を判断し、アルファベットや数字を用いた記号で表したものです。

ロシアやアルゼンチンの信用格付けがどう変化したかも、あわせて参考にしてください。

1-3-1.ロシア

まずは、ロシアの状況から解説します。

ロシアが債務不履行の危機に瀕したきっかけは、ウクライナ侵攻に対する、各国からの経済制裁です。いくつか実行された経済制裁のうち、ロシアへのダメージが大きかったとされるのは、SWIFT(国際銀行間通信協会:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SC)からの排除と外貨準備の凍結の2つ。

SWIFTとは、ベルギーのブリュッセルに本社を置く非営利団体で、国際金融取引には欠かせないシステムを提供しています。ロシアはウクライナ侵攻に対する経済制裁としてSWIFTから排除されたことで、貿易や海外企業との取引が困難になるだけでなく、対外債務の支払いが困難になるという状況下に置かれました。

また、同じく経済制裁の一環として、海外におけるロシア中央銀行の資産が凍結され、外貨準備の半分程度が引き出せなくなりました。本来、外貨建て債券はその外貨で償還する必要があります。ロシアは自国通貨ルーブルで支払うことでなんとか一時的にしのいだものの、各国からの経済制裁が続く限り今後も債務不履行に陥る可能性は否定できません。

今回の騒動の結果、格付け大手3社によるロシアの信用格付けは取り下げられました。つまり、格付けすら剥奪されたことを意味します。これによってロシア国債への信頼度を正確に把握できなくなるため、ロシアへの投資はさらに縮小するとの予想もあります。

1-3-2.アルゼンチン

続いては、アルゼンチンの事例をご紹介します。

アルゼンチンは、2021年5月末に支払い期限が設定されていたパリクラブ(主要債権国会議)への債務に関し金利が高いことで支払いを拒否。2022年3月末までパリクラブとの交渉を継続することで合意し、債務不履行を回避した経緯があります。

アルゼンチンは、以前にも過去9回債務不履行を起こしています。不安定な経済が長期的に続いており、さらに約20億ドルの債務が残っていることも考えると、10回目のデフォルトを引き起こすリスクがあると言わざるを得ません。

ちなみに、アルゼンチンの2023年6月時点での信用格付けは、Moddy’sが「Ca」、Fitch Ratingsが「C」、S&Pが「CCC-」です。

ここまでに国の債務不履行についてご紹介しましたが、企業においても債務不履行は起こり得ます。次章で企業事例を解説します。

1-4.企業の債務不履行

企業においては、期限までに社債や利息の支払いができないケースのほか、倒産申請や債権者と交渉し条件を緩和する債務再編が行われたケースも債務不履行とみなされます。

過去には、日本航空株式会社(JAL)やアイフル株式会社などの大手企業が債務不履行に陥り、上場の取り下げや返済期限の猶予申請を余儀なくされました。

2020年1月から始まった新型コロナウイルス感染拡大の折には、景気の低迷により債務の返済や利息の支払いができず、債務不履行に陥る企業が増えたことが問題視されました。企業への投資判断の際は、格付け会社の判断を参考にしながら、検討するとよいでしょう。

2.アメリカが債務不履行に陥りかけた背景

今回、アメリカが債務不履行に陥りかけた背景を解説します。

2023年までの時点でアメリカ政府の支出は収入を上回っており、それを補うために国債を発行し資金を調達しています。とはいえ、いくらでも国債を発行し資金を調達できるわけではありません。債務には上限が定められており、それ以上借金するには連邦議会の許可が必要となります。これまでに、100回以上債務上限は引き上げられており、債務上限が引き上げられること自体は珍しいことではありません。

しかし今回のケースでは、債務上限を条件なしに引き上げたいバイデン政権と、引き上げるならと、引き上げに際して複数の条件を提示した共和党のマッカーシー下院議長らとの交渉が難航しました。その結果、2023年6月5日までに債務上限が引き上げられない場合、国債の償還などができなくなり、債務不履行に陥る可能性があるという状況に至ったのです。

「Xデー」迫る米債務上限問題、考えられるシナリオとその影響
米国で政府の債務上限引き上げ交渉が難航する中、JPモルガンは、今後考えられるシナリオとして、三つ可能性を挙げ、それぞれのケースに対する投資戦略を示した。

結果として債務上限を引き上げる内容で合意に至ったため、債務不履行の危機は脱しています。

世界一の経済大国であるアメリカが債務不履行に至った場合、世界経済へ極めて深刻な影響を与えるため、米国政府が債務不履行の発生リスクを見過ごす状況は考えにくいと言えます。しかし、万が一アメリカのような大国が債務不履行に陥った場合、各業界にどのような影響を与えるのでしょうか。次章で想定される最悪のシナリオを紹介します。

3.アメリカの債務不履行が各業界に与える影響は計り知れない

アメリカが万が一債務不履行に陥った場合、世界経済に計り知れない打撃を与え、多くの国の財政破綻を誘発するリスクがあるでしょう。

覇権国家の失墜は西側諸国の大幅な勢力低下を招き、西側諸国に対して非友好的な国家の勢力拡大を招くなど、地政学的なリスクも大きく上がります。米ドルは信頼性が高い安全な資産として、国境を超えて貿易や金融のやり取りに用いられているため、金融業界にも大きな影響を及ぼします。。

まず考えられるのが、米ドルへの信頼性の低下に伴い、世界中の投資家による売りが加速し、各国が保有する膨大な米ドルが米国や市場に返還されていくと考えられます。米ドルの価値は急激に減少し、それがさらなる悪循環を引き起こすでしょう。

暗号資産に関しては、こういった状況下で実際にどのような影響を受けるか予測するのは簡単ではありません。米ドルにペッグしているステーブルコインのTether(USDT)や USD Coin(USDC)の価格が下落する可能性は高いと考えられます。しかし、デジタルゴールドと呼ばれるBitcoin(BTC)やEthereum(ETH)などには、中央集権的な法定通貨への不信感からむしろ注目が集まり、資金が流入する可能性もあるでしょう。

また、実際に債務不履行に陥らずとも、前述した国家の信用格付けが下がることで金融業界には大きな影響が及びます。

2011年の米国債ショックでは、米国債の格付けが最上級のAAA(トリプルエー)からワンランク下がり、ドル安を誘発しました。その結果、世界的に株安が引き起こされるという状況に。今回は格付けが下がらなかったものの、下がる可能性のある「ネガティブ・ウォッチ」に指定され、米ドルショックの再来かと、緊張が高まりました。

4.債務不履行に備え、投資家が取れる対策

アメリカのような大国が債務不履行に陥る可能性は低いとはいえ、万が一の際は、全世界に多大な影響が及ぶことが懸念されます。それらに備えて、投資家が取れる対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

基本的ですが、資産を分散させることが何よりも大事です。債務不履行に陥ると、リスク資産が最も大きな影響を受けるので、安全資産もポートフォリオに組み入れる必要があります。

金(ゴールド)や投資家への一定の保護がある仕組債に加えて、スイスフランやユーロ、日本円などの避難資産を加えるのも一つの選択肢です。

5.債務不履行に関する情報を逐一追い、最悪の事態に備える

債務不履行は、契約履行の義務を果たせないことです。国が債務不履行に陥るということは、発行した債券の償還ができなくなることを意味します。対GDP比で見て世界最大の借金大国である日本は、いくつかの理由から債務不履行に至っていませんが、過去には債務を返済できず経済破綻に陥った国もあり、ロシアやアルゼンチンなどは、現在進行形で債務不履行の危機に瀕している状況です。

今回、アメリカはバイデン政権と連邦議会の交渉が難航し、一時は債務不履行になるXデーが訪れるのではないかと危惧されました。最終的には債務上限の引き上げの合意に至りましたが、今後もこのような状況が訪れる可能性はゼロではありません。

リスク資産への影響は免れないため、株式や不動産、米ドルペッグのステーブルコインは大打撃を受けるでしょう。暗号資産業界全体に関しては、資産の避難先として資金が流入する、もしくは金融不安から資金が引き上げられる可能性のどちらも考えられ、起こりうる事象を正確に予想することは困難を極めます。

そのため、今後の債務不履行に関する情報を追いつつ、金(ゴールド)などの安全資産も組み入れ、リスク資産とのバランスを見直してみてください。

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