はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

『匙を投げるな:Web3ゲームはまだ始まったばかり』|WebX レポート

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ソーシャルゲームとWeb3ゲームの類似点

23年7月に東京国際フォーラムで開催された国際カンファレンスWebXで、「匙を投げるな:Web3ゲームはまだ始まったばかり」と題し、4人のパネリストによるセッションが行われた。

パネリストは、米オンライン・ソーシャルゲーム開発企業「ジンガ(Zynga)」の共同創設者で現Storyverseのジャスティン・ウォルドロンCEO、ソラナ財団のオースティン・フェデラ戦略責任者、「Uplandme, Inc」共同創設者兼共同CEOのダーク・ルース博士とゲームNFTエコシステム「GuildFi 」ジャリンダ・シタディラーカ共同創設者の4人。

モデレーターはゲーム業界のコンサルティング企業Kantan Gamesのセルカン・トトCEOが務めた。

出典:WebX

以下、このセッションの内容を質問と回答という形でまとめた。

ジャスティン・ウォルドロン氏への質問:

ジンガ運営当時と現在のブロックチェーン・ゲーム/Web3ゲームには類似点があるか

現在の状況と多くの類似点がある。当時、フェイスブック上で友人と一緒にプレイ可能なソーシャルゲームを作ると、その多くは大ヒットした。ジンガでは10億人以上がゲームを楽しんだだろう。

しかし、多くのゲーム会社がソーシャルゲームは従来のゲームを侮辱するものと卑下し、この業界のことを真剣には受け止めなかった。

一方、我々はソーシャルゲームを愛する人たちにフォーカスした結果、「フリーミアム」という新たなビジネスモデルを生み出すことにつながった。15年後には、このビジネスモデルでゲーム業界を15倍に成長させることとなったが、AAAゲームのプレーヤーがフリーミアムに熱狂することはなかった。

つまり、我々は伝統的ゲームのプレイヤー抜きでビジネスモデルを築き上げただけでなく、ゲーム業界を、より大きく成長させたのだ。

このような経験から、今、このスペースでやるべきことは、顧客は誰なのかを問うことだと思う。NFTゲームを好まない人々にフォーカスし、どうしたらNFTゲームに興味を持ってもらえるかを考える人が多いようだが、それはより長く困難な方法ではないだろうか。

モデレーターのコメント:

熱烈なゲーマーコミュニティでは、クリプトゲームを憎む感情が強いと感じるが、確かに、このようなグループを引きこむ必要はないかもしれない。無料ゲームを嫌う傾向は改善に向かっているが、主流となるには時間がかかる。

Web2とWeb3

オースティン・フェデラ氏への質問:

ソラナ財団で、伝統的なWeb2ゲーム会社は、Web3ゲームスタジオへの興味を示しているか

興味は示している。ただ、覚えておくべきなのは、それまでのビジネスモデルが抽出型だったということ。以前はゲームが発売されたらそれで完結していた。伝統的なゲーマーが無料ゲームやフリーミウムを楽しめないのは、完結したゲームを手に入れられないからだ。

また、心底ゲームが好きなのに、Web3ゲームを嫌うのはブロックチェーンが非常に異なるものだと理解していないからだろう。ゲームを購入したら所有権を手に入れ、ゲームをプレイしたらトークンの所有権を手に入れる。そしてそのモデルはゲームを制作する会社が、全ての価値を抽出するものではない。

例えば、スターアトラスのようなゲームでは、プレイヤーが宇宙船を作り、オンチェーンで、ゲーム内で販売することもできる。eBayやペイパルなど、信用の確立が必要なマーケットを利用する必要はない。

スターアトラスで宇宙船を建造し、販売するビジネスを簡単に始められる。スターアトラスは手数料として2%ほど取るかもしれないが、従来のゲーム産業の基準よりずっと安い。

ただ、我々はまだそこまで到達していないし、ブロックチェーンゲームは完全なオンチェーンマーケットプレイスの要素を備えていない。

既存のスタジオがブロックチェーンゲームを作っているのではなく、スターアトラスのような全く新しいスタジオが新しいイノベーションを起こしている。フェイスブックが新興ソーシャルメディア企業に脅かされるように、ゲーム業界でもかつてのスタートアップが、脅かされることになる。そこでは、真にエキサイティングな作業が行われている。

ーそれにはどのくらいの期間がかかると思うか。

スターアトラスのようなAAAレベルのゲームの開発には、5年から7年かかるが、新しい技術の全てを創出しなくてはならない。最近、プレイヤーの全ての動きがチェーン上に記録されるオンチェーン・ムーブ・エンジンをオープンソース化したばかりだ。

おそらく、軌道に乗るにはあと4年はかかると思う。

Web3ゲームの普及に向けて

ダーク・ルース博士への質問:

App Storeでブロックチェーンゲームの取り扱い開始する際の駆け引き・交渉など、どのように行ったのか。

2018年に(Uplandを)始めた際、暗号資産(仮想通貨)は一般大衆には複雑すぎると判断。メタバースだがVRやヘッドセットは必要なく、アンドロイドやiOSのアプリとして、Eメールとパスワードで簡単に登録できるようにした。

携帯でのアクセスを可能にし、ブロックチェーンの障壁を取り除くことが必要だ。ほとんどの人は秘密鍵やパスフレーズを使いたがらない。

多くの人が慣れ親しんだ法定通貨、クレジットカード、ペイパルも使えるようにした。NFTの取引にしても、Upland ではこれまで600万近くのNFTを売却した。米ドルの出金などには、もちろん顧客確認の必要があるが、これが実際に、目的に到達する方法だ。

しかし、指摘しておきたい問題点が一つある。全てのWeb3ゲームが再びサイロ化し始めていることだ。みんながユーザーの囲い込みに躍起になっているが、ゲーマーにとしては、自分が全ての中心に位置して、一つのゲームから別のゲームへと資産を持ち運びたいのだ。

そこで我々は、相互運用性を高め、ユーザーを中心に置くため「Web3のためのオープン・メタバース連合」(Open Metaverse Alliance for Web3=OMA3)を立ち上げた。

我々は、プラットフォーム中心からユーザー中心へパラダイムシフトするという考え方を推進している。これこそが、次のイノベーションの波をもたらすものだと私は考えている。

Web3ゲームの挑戦

ジャリンダ・シタディラーカ氏への質問:

ゲームの制作は非常に複雑だが、GuildFi では、NFTやコミュニティなどの多様な要素を社内でどのように管理しているのか。

30万から40万のユーザーを抱え、60人のチームで対処しているが、Web3ゲームは解決策を探る途上にあるため、複雑な状況をうまく切り盛りしているとは言い難い。Web3ゲームで問題を解決して大ヒットしたものは、まだ出てきていない。しかし、これまでになかった新たなものを作り出したゲームは数多くある。

「Axie Infinity 」はその良い例であり、新たなビジネスモデルを作り出した。前期には莫大な収益も生み出している。

この10年間、ゲーム業界では新しいイノベーションが起こってこなかった。競争が激しくなり、リスクを冒すことを恐れるためだろう。一方、Web3ゲームでは、Web2ゲームでできなかったような非常に独創的なゲームなどが試されている。

創業からの2年間で、我々はさまざまな形で革新をもたらすことに挑戦し、新しいビジネスモデルを構築しようとする数多くのWeb3ゲームに出会い、投資してきた。それが成功に結びつくかどうかはわからないが、我々はゲームの可能性を信じている。

Web3ゲームの普及に向けて

Web3ゲームを大衆に普及させるためには何が必要か。知的財産(IP)はその解決策の一つだろうか。

ジャスティン・ウォルドロン氏の回答

ゲーム会社にとって、普及を推進するためにIPが解決策の大きな部分を占めるのは確かだと思う。しかし、ゲーム業界が苦労している要因の一つは、ブロックチェーン技術はコラボに適した技術で、非常に大きなグループを調整するのに適しているにもかかわらず、業界では、協業がうまくいっていないことにあると思っている。

そこで我々は、「Bored Ape」や「Crypto Punk」など、この分野の素晴らしいIPを活用してみようと考えた。このようなIPの所有権保持者と、ゲームのコンテンツ制作者を結びつけ、多くのゲームを生み出すのはどうだろうか。

現在、ゲーム市場は非常に細分化されており、一つのゲーム・企業が総取りするような状況ではなくなっている。だから、我々が出した答えは、1,000のゲームを作ってみて、その中から面白いものを見つけるという実験を行うということだ。その過程で、共に作り上げる方法を見つけられたら最高だと思う。

ゲームは年間14兆円(1,000億ドル)超の市場だから、いずれはあらゆるものが出てくるだろうが、全てを試してみるべきだ。

Web3ゲームの将来性

ブロックチェーンゲーム業界の将来についてどう考えているか

オースティン・フェデラ氏の回答

現在、ほとんどのブロックチェーンの速度は非常に遅い。チェーン上で多人数同時参加型オンラインゲームを動かすには、まだ膨大なインフラを構築する必要がある。

重要なのは、テクノロジーがゲームを発展させるのであって、その逆があって欲しいとは願うが、大ヒットしたゲームの大半は、テクノロジーの変革と一致している。

オンチェーンゲームが本格的に発展する前に、ミドルウェア技術が発明され、創造され、専門化し、成熟する必要があると考えている。実際、スターアトラスのような企業をはじめとする多くの企業が、現在構築している最中だ。

初期のモバイルゲームでグラフィックが劣っていたのが良い例で、技術的に可能な範囲で、ゲームは構築される。

ソラナのトランザクション処理速度が向上しているように、ベースレイヤーでは重要な変化が起こっている。しかし、Web2ゲームに匹敵するような多くのゲームを目の当たりにする以前に、実際にブロックチェーンを活用し始めるかどうかは、ゲーム開発者が制作に使えるツールキットの作成者たちにかかっている。

ダーク・ルース博士の回答

現実世界の都市をベースにしたゲームであるUplandは数週間後に、「東京」を立ち上げる予定だが、スピードの面から言うと、毎秒80NFTの発行を達成している。

ジャスティンの述べた協力し合うという面では、「0N1 Force」(NFTプロジェクト)とコラボして東京をローンチする。他のコミュニティをメタバースに参加させるためのコラボだが、相互運用性と協業をどのように前進させ、大規模な運動にしていくのかは、とても重要だ。

ジャリンダ・シタディラーカ氏の回答

多くのゲームスタジオと話す機会があるが、実際、最大の課題は技術的なものであり、ブロックチェーンそのものの問題だということだ。

Guildの一つのゲームをブロックチェーンで処理することができれば、すぐにでも大規模な普及を加速できるだろう。それを一つのチェーンで行うとなると、イーサリアムを凌ぐ巨大なチェーンになるだろう。もちろん技術やガス代の関係で実現はしていないが。

この例からも、技術が大きな意味を持つことがわかる。おそらく、オフチェーンとオンチェーンの両方で処理することになるだろう。

ブロックチェーンネットワークの技術が向上し、ガス代が下がれば、大きなゲームスタジオが一つのチェーンに飛び乗って、毎秒何百万ものトランザクションを簡単に処理することが可能になると私は考えている。

モデレーターのコメント

私はこの業界に約15年いるが、ブロックチェーン企業はゲームのことをよく理解しておらず、ゲーム会社はブロックチェーンで何が可能なのかを理解していないか、あるいは理解しようとしないと見ている。

この矛盾点が解決されるまでにはおそらくまだ時間がかかりそうだ。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11/23 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、ヴィタリック紹介のイーサリアム新ツールやXRPのステーキング導入案など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン売られ過ぎでも反転せず、12月FOMCの据え置きが現実味を増す|bitbankアナリスト寄稿
今週のBTC対円相場は1400万円割れまで下落。ヌビディア好決算後も1400万円割れが続き、米雇用統計の強弱まちまちな内容が見通し悪化を助長。12月FOMCでの金利据え置き観測が強まる。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|金融庁の暗号資産規制方針に高い関心
今週は、金融庁の仮想通貨規制方針、ビットコイン採掘割合の95%到達、ビットコインとイーサリアムの市況分析に関する記事が関心を集めた。
11/22 土曜日
13:45
ANAPホールディングス、企業向けビットコイン戦略支援「ビットコイン道場」を開始
ANAPホールディングスが企業のビットコイン活用を支援する継続型プログラム「ANAPビットコイン道場」の提供を開始した。会計や税務などの実務を専門家が包括的にサポートし、参加企業がコミュニティ形式で課題解決に取り組む仕組みを提供する。
13:02
コンヴァノがビットコイン戦略から本業回帰、AI・ヘルスケア事業に注力へ
コンヴァノが仮想通貨ビットコインを最大約2万BTC取得する計画を取り下げ、成長中の事業へ軸足を移す。業績予想を上方修正しており本業成長を重視する戦略転換となる。
10:55
米当局がビットメイン製品を国家安全保障リスクで調査、トランプ関連企業も1万6000台使用
米国土安全保障省が中国メーカーのビットメインを調査し、機器がスパイ活動や電力網破壊に使用される可能性を指摘。トランプ大統領の息子たちの会社アメリカン・ビットコインも1万6000台を購入した。
10:05
コインベース、ソラナのミームコイン取引所「ベクター」を買収
コインベースがソラナ基盤SocialFiプラットフォーム「ベクター・ファン」を買収すると発表した。年内に取引完了予定で、ソラナエコシステムへの参入を拡大し、すべてを取引できる取引所の構築を目指す。
09:35
ベセント米財務長官、ビットコインバーにサプライズ訪問 仮想通貨業界への影響は
スコット・ベセント米財務長官がビットコインバー「Pubkey DC」を訪問し、仮想通貨コミュニティで話題になっている。業界関係者の反応と今後の影響を解説する。
08:25
NYSEがグレースケールのXRPとドージコインETF承認、25日上場予定
NYSEがグレースケールのドージコインとXRP ETFの上場を承認し、11月25日に取引を開始する。今週はビットワイズのXRP ETFやフィデリティのソラナETFも上場し、アルトコインETF市場が急拡大している。
07:45
「仮想通貨財務企業などの上場後の事業の大幅変更について対応を考える必要」JPXのCEO
日本取引所グループの山道CEOは、ビットコインなどを保有する仮想通貨財務企業への規制強化は現時点では検討していないと説明。一方で、事業の大幅変更については対応を考える必要があるとも述べている。
07:05
個人マイナーがビットコイン採掘に成功、1億8000万分の1の確率を克服
極めて小規模な個人マイナーがわずか6TH/sのパワーでビットコインブロックの採掘に成功し、約26万5000ドル相当を獲得した。確率は1億8000万分の1で、近年最も幸運なソロ採掘となった。
06:25
トム・リー率いるビットマイン、初の配当実施もイーサリアム保有の含み損は6250億円超 
イーサリアム最大の企業保有者ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズが11月21日、2025年8月期通期で純利益3億2816万ドルを計上し、大手仮想通貨企業として初めて配当を実施すると発表した。しかしイーサリアム価格下落で含み損は40億ドル超に達している。
06:02
金持ち父さん著者キヨサキ、3.5億円分ビットコインを売却し広告事業投資へ 以前の姿勢から一転
『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏が11月22日、約225万ドル相当のビットコインを売却し、外科センターと看板広告事業に投資すると発表した。以前の「売らずに買い続ける」発言から一転した。
05:45
マイケル・セイラー、指数除外懸念に反論「ストラテジーはファンドではない」
ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は主要株価指数からの除外懸念に対し「我々はファンドではなく上場事業会社だ」と反論した。
11/21 金曜日
17:25
米ビットコインETF、1週間で大規模な資金流出が2回
11月20日、米ビットコイン現物ETFは9億300万ドル(約1,395億円)の純流出を記録し、史上2番目の規模となった。1週間前の記録を更新。ブラックロック、グレースケール、フィデリティの主要3ファンドで流出の大部分を占め、全ETFで純流入ゼロという異例の事態に。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧