- ビットコインは通貨なのか|金と比較
- 通貨を形成する3つの役割と、ビットコインの今後についてGoogle社の元エンジニアが丁寧に解説。BTCが第三段階である「真の価値の交換機能」を持つに至るには、あと数年かかると予想した。
「ビットコインは通貨なのか。」
この質問は世界中の規制当局が頭を抱えながら、議論を重ねている根本的な論点です。
そこで判断の基準とされるのが、通貨が持っている次の3つの役割・機能です。
- 価値の交換、支払いの手段 (交換機能)
- 価値の尺度 (価値を測る基準:価値尺度機能)
- 価値の蓄積、保存 (価値保存機能)
ビットコイン価格が下落すれば、交換機能や価値の尺度にも影響を与えることから明らかなように、これらの3つの機能は相互に関連しており、全て揃うことで初めて、通貨としての役割を果たせることになります。
この3つの観点を現在のビットコインに当てはめてみると、価格の変動性が高いことから、支払いの手段としては機会費用が大きすぎると躊躇され、価値の尺度に用いるには困難で、さらに短期間に限った場合、価値の保存においても疑問が残ると言えるかもしれません。
このような、ビットコインへの懐疑的な見方に対し、Google社の元エンジニアで、ビットコイン支持者であるVijay Boyapati氏は、ビットコインは、
現在、価値保存の手段となる途上である。広い範囲では、その価値に対する同意に達していないため、価値保存の手段としては、まだ機能するに至っていない。
と主張しています。
さらに、その価格変動の高さから、ビットコインには価値保存機能がないとする議論は、論旨をすり替えているものだとも述べ、自身の論文の中で、伝統的な通貨がたどった発達の段階になぞらえて、ビットコインが今、通貨としてはどの位置にあるか詳しく解説しています。
Boyapati氏は、現代社会は、交換媒介機能としての通貨の役割に極度に執着しており、20世紀以降、国家は通貨の発行を独占し、通貨の価値の保存としての役割を弱体化させ、通貨の最も大切な役割は、価値交換機能であるという誤った概念を生み出したと述べています。
金の歴史
それ以前、金は通貨として長い間使われてきた歴史がありますが、19世紀に活躍した経済学者であるWilliam Stanley Jevons氏は、その発達段階を次のようにまとめています。
歴史的に見ると、金はまず、装飾品としてのモノとしての価値が生まれ、次に富の蓄積の手段となり、三番目に価値交換の媒体となった。
価値を測る尺度として用いられるようになったのは一番最後のことだ。
Boyapati氏は、上記の金の通貨としての発達プロセスを現代に当てはめて、通貨の発達段階を次のように当てはめました。
第一段階: 収集の対象 (そのものが持つ特異性に着目される:貝殻、ビーズ、金)
第二段階: 価値の保存 (特異性がより多くの人々に認識され、需要が高まる)
第三段階: 交換媒体機能 (価値の保存機能が安定することで、機会費用が抑えられ、交換機能が高まる)
第四段階:価値の尺度 (交換手段として定着することで、値段をつける尺度となる)
そして、現在ビットコインは、第一段階から、第二段階である「価値の保存」へと移行する段階であり、第二段階の価値保存機能から、第三段階である、真の価値の交換機能を持つに至るには、数年かかるだろうと述べています。
金の場合は、この四段階を経るのに何世紀もかかっており、貨幣化が起こるプロセスを実際に見た人間は誰もいないため、現代を生きる私たちが、ビットコインが発達する段階を見られるのは、大変貴重な経験だとしています。
さらに、価値保存機能が定着する過程にしても、直線的に起きるわけではなく、予想することも難しく、また保証されているわけでもないと、慎重な姿勢を保っています。
新興国でのBTC需要
アルゼンチンやベネズエラのように、極度なインフレが起こっている国では、価値保存の手段として、ビットコインや他の仮想通貨が注目されていますが、多くの先進諸国では、法定通貨に対する信用不安はまだ起きてはいないことから、ビットコインは、まだ完全に価値保存の有効な手段としては確立され、一般的な認識を得るまでには至っていないのが現状かもしれません。
しかし、Boyapati氏は、金本位制が確立された19世紀の金のように、将来的には、ビットコインが、世界的な国家を超えた通貨になる可能性があると大きな期待を寄せています。
我々は、国際貿易が、世界的な悲劇が起こる前にそうであったように、明確な通貨基盤、さらに特定の国の影響を受けない基盤として、確立されることが必要であると考える。
これは、故シャルル・ドゴール大統領が描いた、一つの国家が他の国家に対する特権を持つことなしに、平等な取引ができる社会の理想ですが、Boyapati氏は、ビットコインが基軸通貨となることこそが、この理想実現に近づく道であると結んでいます。