景気後退期に起こるETF承認
米資産管理大手VanEck社は7日、暗号資産市場の2024年の予測レポートを発表した。レポートでは、米国経済やビットコイン市場の動向について詳細に分析し、今後新たに承認され得る「ビットコイン現物ETF」への資金流入ペースを予測している。
VanEck社は2024年第1四半期に、米SEC(証券取引委員会)の上場承認が予想されるビットコイン現物ETFに対して、24億ドル以上の資金が流入する可能性があると見込んでいる。この予測の根拠として、米国経済が同年前半にもリセッション(景気後退)に陥る可能性が高く、投資家が金(ゴールド)などの安全資産へと目を向けざるを得ないと分析した
過去のデータに基づくと、ビットコインは新型コロナウイルスのパンデミックで世界経済が混乱に陥った2020年に大きな価格変動を経験した。
株式市場など金融相場が暴落した20年3月のコロナ・ショックでは、ビットコイン(BTC)も最大60%下落したが、米連邦準備理事会(FRB)による経済下支えのための流動性供給(ゼロ金利政策や量的緩和の再開)後に資金が流れ込んだこともあり、反発する過程で価格が急回復した。
同様に、金(ゴールド)も相場の暴落や景気後退の初期には、追証回避売りや手許資金のキャッシュを増やすために価格が下落する傾向はあるが、その後回復するパターンが見られる。これらの事例は、経済的な不確実性が高まる中で、ビットコインが投資家にとって魅力的な選択肢となる可能性を示唆している。
2024年第1四半期には、新たに承認される可能性のあるビットコイン現物ETFが注目され、市場価格も「3万ドルを下回る可能性は低い」と予想されているが、「市場のボラティリティは一層高まる可能性がある」とVanEckは付け加えた。
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史上初の金ETF発売時との比較
さらに、同社はビットコイン現物ETFに対する資金流入の予測において、史上初の金ETF「SPDRゴールド・シェアETF(GLD)」の過去の動向を参考にしている。GLD ETFは2004年11月に上場し、当初数日間で約10億ドル、2005年第1四半期末には約22.6億ドルの資金が流入した。
この事例をビットコイン市場に適用し、現代の金融市場の状況を考慮すると、ビットコインETFへの資金流入はGLDのケースを上回ると予想される。
VanEckは、承認後2年間でビットコイン現物ETFに404億ドルの資金流入があると予測している。この中期的見通しは、金融市場の変化とマネーサプライの増加を背景にしている。特に、ビットコインが安全資産としての地位を確立し、ゴールドとの競合において市場シェアを奪うという仮定があり、これがインフレリスクへの対策としてビットコインへの関心を高めるとした。
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ビットコインETF、ゴールドETFと比較した資金流入予測
新規に承認されたビットコインETFは、立ち上げからの初期数日間で約10億ドル、その四半期では24億ドルの資金が流入すると予測されている。この見積もりは、過去の金融商品の動きを基にしており、特に2004年にローンチしたSPDRゴールド・シェア(GLD)ETFの事例を参考にしている。
2004年11月18日に発売されたGLD ETFは、開始数日で約10億ドル、2005年第1四半期末には約22.6億ドルの資金を集めた。当時、金の現物供給量は約15万2,000トン、時価総額は約2.36兆ドルだった。この背景に基づき、GLDへの初期の資金流入は金市場全体の約0.04%に相当し、1四半期後には0.1%を占めるに至った。
この分析をビットコイン市場に当てはめると、新規ビットコインETFには最初の数日で3億ドル、四半期で7.5億ドルが流入する見込みだ。しかし、現代の金融市場の状況を踏まえると、ビットコインETFへの資金流入はGLDの事例を上回ると考えられ、これが初期の10億ドル、四半期24億ドルという予測流入額の根拠となっている。
2年間でのビットコインETFの資金流入予測
VanEckによると、新規ビットコインETFへの投資家関心と金融市場の変動を考慮した中期的な見通しでは、2年間で約404億ドルの資金が流入すると予想される。この見積もりは、金融市場の進化とマネーサプライの動向を基にしている。
2004年、ドットコムバブル崩壊後の景気後退時には、ニューヨーク連邦準備銀行が測定したM2マネーサプライは6.4兆ドルだったが、2023年10月には20.7兆ドルへと増加した。この急速なマネーサプライの増加が、ビットコインETFへの投資家関心と資金流入の可能性を高めているとされる。この増加率(3.23倍)をビットコインETFに適用すると、初期数日で約10億ドル、四半期で24億ドルの資金流入が見込まれる。
さらに、ビットコインETFが成熟すると、BTCスポット市場全体の約1.7%(金ETFが保有する金の総供給量と類似)に相当する約125億ドルが流入する可能性があるとVanEckは指摘する。
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ビットコイン市場への資金流入増加の要因
VanEckはさらに、債務主導のマネー増刷に対する懸念がビットコイン市場への資金流入増加を促すと見ている。特に、ビットコインが「安全資産」や「価値の保存手段」としての地位をゴールドから奪うことが仮定され、通貨供給に関連するインフレーションリスクからのヘッジとしての役割が再確認されると指摘。
M2マネーストックに基づく3.23倍の倍率を適用し、取引開始から2年間での中期推定額を404億ドルと算出する。
最後に、ビットコインETFの出現により、現物取引市場の手数料が大幅に低下し、市場に参加しやすくなると予想される。米仮想通貨取引所Coinbaseが一般投資家に2.5%の取引手数料を課しているのに対し、ビットコインETFのスポット取引は、多くの証券会社で手数料ゼロまたは約10bps(0.1%)のスプレッドで取引される見込みだ。この大幅なコスト削減が、新技術の普及をさらに促進すると考えられている。
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