年初来の上昇率
時価総額2位の暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)が、年初来の価格の上昇率でビットコイン( BTC)を上回った。 米当局による先月のビットコイン現物ETF(上場投資信託)承認を受けて、イーサリアム現物ETFが承認される可能性が高いとの楽観的な見方がその一因となっている。
The Ether token is outshining Bitcoin this year partly on speculation that the next wave of spot US crypto exchange-traded funds will focus on the second-largest digital asset https://t.co/XM12Tps2iz
— Bloomberg (@business) February 21, 2024
米国の仮想通貨現物ETFの次の波が、この第2位のデジタル資産に集中するとの思惑もあり、イーサ・トークンは今年、ビットコインを凌駕している。
イーサリアムは21日、22年4月以来初めて1ETH=3,000ドルを超え、年初からの上昇率が28%となり、ビットコインの21%を上回った。その後、イーサリアム価格は下落し、執筆時現在、2,924ドルで取引されている。
現在、米国証券取引委員会(SEC)には、大手資産運用会社ブラックロックやフィデリティをはじめとする9件のイーサリアムETF上場申請が登録されているが、SECは先月、フィデリティに続いてブラックロックの申請の可否判断を延期。グレースケールのイーサリアム現物ETF転換申請の判断も、再び延期した。
SECによる延期は予測通りとの見方もあり、5月下旬に承認可否判断の最終期限を迎えるVanEckやARK Investなどの申請に対し、SECがどのような判断を下すかが注目されている。
仮想通貨投資会社OSLシンガポールのトレーディング部門責任者、Stefan von Haenisch氏は、ETF承認判断の期日が近づく4月から5月にかけて、イーサリアムはビットコインを上回るパフォーマンスを継続するとの予測を示した。
ETF承認の可能性
イーサリアム現物ETFが承認される可能性については、専門家の中でも意見が分かれている。
米JPモルガンは、イーサリアムの証券性を明らかにする必要性から、5月にSECが承認する可能性は低いと見ている。前出のHaenisch氏も、SECの強硬な姿勢に言及し、承認しない可能性があると指摘した。
米投資銀行TDコーウェンは、今年行われる米大統領選挙など政治的な背景から、イーサリアム現物ETFの承認は2025年後半から2026年初頭になるのではないかと予測している。
ゲンスラーSEC委員長はイーサリアムETFの実現可能性について、「ビットコインETFの商品の場合、我々が判断を行ったのは、あくまでビットコインという非証券商品にとどまったことであり、それ以外の仮想通貨に対しても承認するという意味を示唆していると読むべきではない」と述べている。
関連:5月までのイーサリアム現物ETF承認可能性、JPモルガン「50%以下」と分析
一方、英大手銀行のスタンダードチャータード銀行(SCB)は、承認に対し強気の姿勢を表明している。
同行の外為・デジタル資産リサーチ責任者であるGeoff Kendrick氏は、SECがイーサリアムを明確に有価証券として分類していないこと、またイーサリアム先物がシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場していることを根拠に、5月に承認されると予想した。さらに、グレースケールによるイーサリアム投資信託の現物ETFへの転換申請に言及。非承認となった場合、同社のビットコインETF転換申請訴訟でSECが敗訴となった前例もあることから、SECは同じ轍は踏まない可能性が高いと見ているようだ。
関連:SCB銀 SECは5月にイーサリアム現物ETFを承認すると強気予想
米大手取引所コインベースのポール・グレワル最高法務責任者は21日、SECに対し、グレースケールのイーサリアム信託からの転換申請の承認を求める意見を提出した。
Today @coinbase responded to @SECGov's request for comment on the proposed @Grayscale Ether Trust ($ETHE) ETP. 27 pages and 96 citations that provide the (1) legal, (2) technical, and (3) economic rationale for approval. 1/6
— paulgrewal.eth (@iampaulgrewal) February 21, 2024
「イーサリアムの想定ドル取引量は、時価総額で調整した場合を含め、S&P500を構成する銘柄の大半を大きく上回っている」と指摘。「イーサリアム市場の深さ、スプレッドの狭さ、そして現物市場全体の価格相関は、詐欺や操作に耐性がある市場であることを強く示している」と主張した。
イーサリアムETFが集中リスクを高める可能性
SECに提出されたイーサリアム現物ETF申請の一部には、ステーキングを組み込んだETFが含まれているが、このような投資商品が承認された場合、イーサリアムネットワーク内で、バリデータの集中リスクが高まる可能性が指摘されている。
ステーキングが可能なETFを申請しているのは、Ark Investとフランクリン・テンプルトンで、ETHをステーキングすることで追加の利回りを生み出すことを目指している。
S&Pグローバル・デジタル資産研究所の Andrew O’Neill氏らは、単にイーサリアムを保有する現物ETFは、バリデータに影響を与えることはないが、ステーキングを組み込んだイーサリアム現物ETFは、イーサリアムネットワーク内で「バリデータの集中を変えるほど大きくなる可能性がある」と指摘した。
現在、イーサリアムネットワークの最大のバリデータは、分散型ステーキング・プロトコルのLido Financeで、コインベースがこれに続く。Dune Analyticsのデータによると、LidoはステーキングされたETHの31.7%を、コインベースが14%を管理している。
ステーキング可能な現物ETF提供する場合、米国の資産運用大手企業が分散型プロトコルであるLidoを選ぶ可能性は低いとアナリストらは見ており、Lidoへのバリデータ集中は軽減される可能性があると指摘した。
一方、機関投資家のカストディ機関としてすでに大きな役割を担っているコインベースに、イーサリアムステーキングの集中が高まる可能性があるとの懸念を示した。
アナリストによると、コインベースは、米国のビットコインETF11銘柄のうち8銘柄のカストディアンとして、また、米国外のイーサステーキングETF最大手4社のうち3社によりステーキング機関として指名されている。
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