共和党と民主党で票が分かれる
米下院は23日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)による国民監視に反対する法案を216対192で可決した。
共和党と民主党で意見が大きく分かれており、共和党議員213人が賛成票を投じた格好だ。民主党議員では賛成に回ったのはわずか3名であり、残り192名が反対した。
2023年にこの「CBDC監視国家反対法案」を提出したトム・エマー議員は下院通過を受けて、次のようにコメントしている。
My legislation ensures that the United States' digital currency policy remains in the hands of the American people so that any development of digital money reflects our values of privacy, individual sovereignty, and free market competitiveness.
— Tom Emmer (@GOPMajorityWhip) May 23, 2024
この法案は、選挙で選ばれていない官僚が米国の価値観を根本的に損なう金融監視ツールを発行することを阻止するものだ。
米国のデジタル通貨政策が国民の手に委ねられることを保証し、デジタルマネーの開発がプライバシー、個人の主権、自由市場の競争力という米国の価値観を反映するようにする。
法案は、連邦準備制度が国民監視に使用できるようなリテール向けデジタル通貨を発行することを禁止する。現金のようなプライバシー保護を維持するデジタル通貨のイノベーションを保護する内容も盛り込んでいる。
ただ上院では民主党が多数を占めており、そこで可決される可能性は低いと予想されているところだ。
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なお、ドナルド・トランプ前大統領は暗号資産(仮想通貨)擁護の姿勢に転じたが、CBDCについては反対している。
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CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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TDコーウェンの見解
投資銀行TDコーウェンは、CBDC反対法案にみられるような禁止措置は「米国の銀行の世界的優位性や米ドルの世界的役割にとってマイナス」になるとの見解を述べている。その理由を、以下のように説明した。
禁止措置は、消費者によるデジタルドルの利用だけでなく、ホールセール(銀行など機関)の利用にもあてはめられる可能性がある。この場合、デジタル化されたユーロなど他の通貨が、貿易で有利になりうる。
米ドル建てステーブルコインも存在しているが、それらには取り付け騒ぎのリスクもあると続けた。中央銀行が後ろ盾となるCBDCの方が安全性が高いと示唆する形だ。
FRBの姿勢
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長はこれまで繰り返し、デジタルドルには慎重な姿勢を示してきた。サイバー攻撃や金融政策への影響、プライバシー保護などのリスクを査定する必要があるとしている。
FRBはデジタルドルについての調査を進めているところであるが、パウエル議長は、議会の承認なしにCBDCを発行しないとも述べてきた。
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