2024年前半に2,000億円の被害
米ブロックチェーン・インテリジェンス企業TRM Labsは5日、暗号資産(仮想通貨)の盗難に関する分析を発表した。2024年上半期(1~6月)のハッキングなどによる盗難額は、2023年同期比で2倍になったと報告している。
2024年6月24日までにハッカーが盗んだ金額は13億8,000万ドル(約2,200億円)で、昨年同期の6億5,700万ドル(約1,060億円)を大きく上回った形だ。
少数の大規模な攻撃が盗難額の大部分を占めており、盗まれた総額の70%が上位5つのハッキングや不正操作によるものだった。
秘密鍵やシードフレーズのハッキングが、スマートコントラクトへの不正アクセスやフラッシュローン攻撃と並んで、引き続き主要な攻撃方法となっている。
被害額が最大だったのは、5月に日本の仮想通貨取引所DMMビットコインがハッキングされた事件だ。流出額は4,502.9BTCで、当時の時価で約482億円に相当する。
TRMはこの事件について「攻撃の正確な原因は不明だが、秘密鍵の盗難やアドレスポイズニングの可能性も考えられる」と述べた。
なお、アドレスポイズニングとは、攻撃者がターゲットのウォレットに少量の取引履歴を残し、その後間違ったアドレスに資金を送金させようとする手法のことだ。
TRMは、盗難被害額が増えている理由について、昨年と比較しても攻撃手法や攻撃件数に大きな違いはないと述べた。ただ、過去6か月間の平均仮想通貨価格が大幅に上昇していることが、盗難の増加と関係している可能性があると意見している。
なお、DMMビットコインは被害額をすべて補償する計画であり、そのための資金550億円を6月中に借入や増資によって調達した。
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2023年は被害額の3分の1が北朝鮮関連か
TRMは1月、2023年に北朝鮮が関与した疑いのある仮想通貨ハッキングの被害額は約865億円にのぼるとのレポートを発表していた。全ハッキングの被害総額の3分の1を占める格好だ。
北朝鮮のハッカーは、秘密鍵やシードフレーズに不正アクセスし、盗んだ仮想通貨をステーブルコインUSDTやTronと交換。その後OTC(店頭取引)ブローカーによって、法定通貨に換金するとも指摘している。
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マウントゴックスは弁済開始
ハッキングによる大規模な不正流出を受けて、2014年に経営破綻した仮想通貨取引所マウントゴックスは5日、10年越しに債権者への返済を開始したところだ。
47,229 BTCのビットコインがマウントゴックスのウォレットから、債権者の代理受領者であるビットバンクなどのアドレスへ移動されたことが確認されている。
弁済はビットコインの売り圧として市場で警戒されている一方、債権者がすぐに一斉売却することはないとする見方もされているところだ。
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