金融サービス企業に罰金
米証券取引委員会(SEC)は14日、電子通信に関する記録管理要件に違反したとして、証券会社や投資顧問会社など、金融サービス企業26社を告発したと発表。各社はSECに指摘された事実を認め、総額3億9,275万ドル(約586億円)の罰金支払いに同意したことが明らかになった。
SECと和解した企業には、アメリプライズ(Ameriprise Financial Services)、エドワード・ジョーンズ(Edward Jones)、LPLファイナンシャル(LPL Financial)、レイモンド・ジェームズ(Raymond James)などの大手企業が含まれており、これら4社はそれぞれ5,000万ドル(約75億円)の罰金を支払うことになる。
罰金は1社あたり最高5,000万ドル(上記4社)から、最低40万ドル(約5,970万円)と大きな幅があるが、SECの調査前に違反を自己申告した企業には「積極的な協力のメリット」として、「通常よりも大幅に低い」罰金が科せられたとSECは報告した。
その他、3,000万ドル(約45億円)以上の罰金支払いを命じられたのは、RBCキャピタル・マーケッツ(RBC Capital Markets:4,500万ドル)、BNYメロン・セキュリティーズ(BNY Mellon Securities)とパーシング(Pershing)が共同で4,000万ドル、TDセキュリティーズ(TD Securities)と関連会社2社が共同で3,000万ドルだった。
SECの執行部門を率いるグルビル・グレワル氏は、同機関が「投資家保護と正しく機能する市場に不可欠な連邦証券法の帳簿・記録要件の遵守徹底に引き続き取り組んでいく」と述べた。
メッセージアプリの使用と記録保持
SECの調査によると、これらの企業では、「オフチャンネル通信」と呼ばれる承認されていない通信方法が広範囲かつ長期にわたり、使用されていたという。WhatsAppなどのプライベートメッセンジャーアプリなどがオフチャンネル通信に該当する。
このような通信方法では、調査の際に有用な必要な記録の維持と保存が損なわれるとSECは主張。「企業とその従業員が電子通信の維持と保全を広範囲かつ長期にわたって怠った」ことは、証券取引法および投資顧問法における記録保管規定違反にあたるとして告発した。
また、違反行為の防止と発見に関して、これらの企業が従業員に対する適切な監督を怠った点も問題視した。
例えば、1,400万ドル(約20億円)の罰金を支払うことに同意したパイパー・サンドラー(Piper Sandler)の場合、上級役員を含む全社員が、個人用デバイスを使用して、ブローカー・ディーラー業務や投資顧問業務に関するテキストメッセージなどの通信を社内外で行っていたとSECは指摘している。
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度重なる同様の告発
SECと米商品先物取引委員会(CFTC)は2021年12月、JPモルガンに対し、従業員の個人端末におけるオフチャンネル通信の記録を保存しなかったとして、過去最高の合計2億ドル(297億円)の罰金を科した。
SECは、少なくとも2018年1月から2020年11月までの間、JPモルガン証券の100人以上の従業員がWhatsApp、テキストメッセージ、個人のメールアカウントを介してビジネス取引に関する数万件のメッセージを交換したと指摘し、1億2,500万ドル(約186億円)の支払いを命じた。またCFTCもJPモルガンが「承認されていない通信チャンネルを広範囲に使用した」として、7,500万ドル(111億円)の罰金を科した。
ゲイリー・ゲンスラーSEC委員長は、「技術が変化するにつれ、登録者がコミュニケーションを適切に記録し、市場の監視を回避するために公式な手段外で行われないようにすることが、さらに重要になっている」とコメントした。
この件以降、SECは記録保管調査を通じて、数十社に約20億ドル(約2,980億円)の罰金を科している。昨年8月には、ウェルズ・ファーゴ証券やBNPパリバ証券、SMBC日興証券アメリカなどの11社が、SECによる総額2億8,900万ドル(約430億円)の罰金支払い命令に同意した。
このようなSECの規制アプローチについて、米投資信託協会(ICI)は「SECが投資顧問法の権限を超え、オフチャネル通信に関する現在の一斉捜査を通じて、執行による規制制定を行っていることを強く懸念している」と述べた。
SECが権限を超えた法の執行を行っているとする批判は、仮想通貨業界や米連邦議員からも上がっている。
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