カストディめぐる発言が波紋呼ぶ
暗号資産(仮想通貨)ビットコインの購入戦略で知られる米マイクロストラテジーのマイケル・セイラー会長の発言が波紋を呼んでいる。イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏もセイラー氏に異論を唱えた。
セイラー氏は21日に公開されたインタビューで、次の段階としては銀行もビットコイン(BTC)を保有することが考えられるとの意見を述べている。
インタビュアーは、そうした大手機関のカストディアンがビットコイン保有量を増やせば、中央集権化が進んだり、政府に押収されやすくなるのではないかという疑問を投げかけた。
セイラー氏はこれに応じて、規制されておらず政府や納税を尊重しない「偏執的な仮想通貨アナーキスト」がビットコインを保有した場合に、押収リスクが高まると答えている。
従って、ブラックロック、フィデリティ、JPモルガンなど規制された機関を通じてビットコインを保有する方が安全だと主張した。政府や議員もこうした大手事業者に投資しているため、政府による取り締まりの対象となる可能性が低いことを理由の一つに挙げている。
また、大手機関がビットコインを保有することで損失リスクやボラティリティを低減できるとも意見した。こうした発言が仮想通貨コミュニティの一部で波紋を呼んだ形だ。
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「仮想通貨の本質ではない」と反論
まず、セルフカストディ企業Casaのジェイムソン・ロップ共同創業者が、セイラー氏に反論した。ビットコインが少数の手元に保管されると紛失や押収のリスクが高まり、ユーザーはノードの実行などガバナンス活動に参加する権利を奪われると主張している。
ブテリン氏もロップ氏の意見に応答し、次のようにコメントした。
I probably did more than most to spread the "mountain man" trope (btw I consider those remarks of mine outdated; snarks and AA changed the tradeoff space completely), and I'll happily say that I think @saylor's comments are batshit insane.
— vitalik.eth (@VitalikButerin) October 22, 2024
He seems to be explicitly arguing for a…
セイラー氏は、仮想通貨を守るために「規制の虜(regulatory capture)アプローチ」を主張しているようだ。こうした戦略が失敗する可能性についての前例はたくさんあり、私は、そうしたアプローチは仮想通貨の本質ではないと考える。
「規制の虜化」とは、企業や特定の産業が政府や規制機関に対して影響力を持ち、規制が公共の利益を守るという目的から逸れて、その産業の利益を優先するようになる現象のことを指す。
ブテリン氏は、「政府が投資する大手事業者なら取り締まりを受けにくい」というセイラー氏の発言部分に言及し、そうしたアプローチと仮想通貨の本質は相いれないと意見した格好だ。
なお、セイラー氏はこうした批判を受けて、24日に次のように投稿した。
I support self-custody for those willing & able, the right to self-custody for all, and freedom to choose the form of custody & custodian for individuals & institutions globally. #Bitcoin benefits from all forms of investment by all types of entities, and should welcome everyone.
— Michael Saylor⚡️ (@saylor) October 23, 2024
私は、そうした意志と能力がある人のセルフカストディ、万人のセルフカストディ権、そして世界中の個人や機関がビットコインの保管方法と保管人を選択する自由を支持している。
ビットコインはあらゆる種類の事業体による、あらゆる形態の投資から恩恵を受けており、すべての人を歓迎すべきだ。
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