- 相次ぐマイニング企業の事業停止
- 仮想通貨市場の長らく低迷と直近の大暴落を受け、マイニング業者の多くが大きな痛手を被る中、米ワシントン州のGigawatt社が破産申請を行なったことが判明した。同社が今年1月に失敗したICO発行も、破産の一因になったと考えられる。
米マイニング企業Gigawatt社が破産申請へ
長らく低迷していた仮想通貨市場の状況に加え、今月のビットコイン暴落が、最も打撃を与えた仮想通貨関連事業は、マイニング業界かもしれない。
香港に拠点を置く仮想通貨取引所BTCCは、今月初旬に同社のマイニング事業部門であるBTCC Pool Limitedを11月30日より無期限で閉鎖することを発表しているが、さらに深刻な事態を露呈したのは、アメリカ、ワシントン州に拠点をおいているGiga Watt 社(以下、ギガワット社)の破産申請であろう。
ここ数年で急成長を遂げ、北アメリカ最大のマイニング企業として注目を集めていたギガワット社であったが、11月19日、ワシントン州東地区連邦裁判所に破産申請を行ったと、地元紙Wenatchee Worldが報道した。
裁判所に提出された文書によると、ギガワット社の保有する資産は50,000ドル (約565万円) に満たない一方、その債務は1000万ドルから5000万ドル(約11億3072万円~56億5360万円)だと推定されている。
債権者には、ダグラス郡公共事業地区、電力会社Neppel Electricや、建設会社Talos Constructionなどが含まれている。
ギガワット社破産への経緯
ギガワット社は、元マイクロソフトのソフトウェアエンジニアだったDave Carlson氏が、2012年に創立したMegaBigPowerに端を発し、2017年にギガワット社として設立。
その後Carlson氏がCEOに就任すると、同社は1年で数十億ドルの企業へと成長した。背景にはワシントン州中部の安価で安定した電力供給と、マイニングに最適化したコンパクトで高密度の設備「ポッド」や、マイニング機器販売から修理、24時間のメンテナンスを含むマイニングホストサービスを、小規模なマイナーにも解放し、提供するというビジネスモデルがあった。
そして、2017年5月から7月にかけて同社は、専用変電所と大容量処理装置を配備した22棟の「ポッド」を建設するための資本調達の手段として、「トークン」を販売するICOを行った。
企業データサイトのCrunchbaseによると、ギガワット社はこのICOを通して、2230万ドル(約25億2150万円)を調達したようだが、2018年1月には、投資家グループがプロジェクトの遅延を理由に訴訟を起こしていた。
また今年3月には、仮想通貨集団訴訟を数多く手がけるSilver Miller法律事務所が、ギガワット社に対し、同社ICOに関して、連邦裁判所へ訴訟。
同法律事務所は、ギガワット社が米国証券取引委員会(SEC)に未登録のまま、仮想通貨マイニング事業への投資を促すトークンの販売を決行し、米国の証券法に違反したと主張している。
今回のギガワット社破産申請の報道を受け、Silver Miller法律事務所の共同設立パートナーのDavid Silver氏は、ツイッターで次のように述べている。
This is so sad – I filed lawsuits (class action still pending), I filed whistleblower complaints with the regulators (and nothing)… GigaWatt was a fraud! People will be held accountable (including the gatekeepers) – I promise. https://t.co/WfeBR54xoK https://t.co/5kVgtF4u5D
— David Silver (@dcsilver) 2018年11月21日
これは実に悲しいことだ – 私は訴訟を起こし(集団訴訟は係属中)、規制当局にも公益通報者として訴状を申請した。(でも何も起こっていない)…
ギガワットは詐欺だった!(ゲートキーパーを含む) 関係者は責任を問われるだろう- 私が約束する。
ギガワット社の窮状は、すでに9月末には、地元メディアサイトのiFiber One によると今年8月半ば、創業者でCEOのDave Carlson氏がその職を辞し、9月には従業員63人のうち47人を解雇していた。
ギガワット社の事例から見る米規制当局の影響
今年の仮想通貨市場の暴落は、ギガワット社の経営に大きな打撃を与える一要因だと言えるだろうが、ICOによる資金調達に対する、ギガワット社の考えに甘さがあったことも否めない。
2017年3月にCarlson氏は、同社のICOは、「マイナーが使う電力を供給するインフラへのアクセス権」への投資であるため、SECに登録の必要はないと説明していたと報道されている。
玉石混淆とも言えるICOへの規制のあり方が、長らく問われていたが、米国の証券取引委員会(SEC)は、11月17日、2つのICOプロジェクト、それらのトークンを未登録証券に該当すると判断、投資家への返金、証券登録および罰金を課したことを公表した。
その他にも、今月9日未明にも未登録証券取引所運営の疑い で分散型仮想通貨取引所EtherDeltaの創設者にも約4400万円の罰金を課しており、これらの事例からSECが徐々に規制を厳しくしている傾向が懸念を呼んでいる。
しかしその反面、むしろ何が規制に準じて、準じていないのか明確になりつつあるとして、規制を歓迎する専門家も一部にはいる。
How could you get it so wrong?
— Mati Greenspan (@MatiGreenspan) 2018年11月20日
The SEC settling with Airfox & Paragon is a positive update and brings clarity to the market
It shows that they're willing to work with blockchain startups and register them as securities retroactively, even retroactively.https://t.co/lYtYMSjnjq
SECがAirfoxとParagonと合意に至ったのはポジティブな情報だ。この動きからSECがブロックチェーン関連のスタートアップ企業と連携して有価証券として登録する姿勢が見られる。
ICOに対するSECによる規制の方向性を示す新たな事例として注目を集めつつある。
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