CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨市場を左右する 規制当局とビットコインETF申請企業で異なる「問題点」の捉え方

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

規制当局とプレイヤー側で異なる問題点の捉え方
ビットコインETFの許可条件に関する発言から、規制当局とプレイヤー側で捉えている仮想通貨市場の問題点に相違があることが明らかになった。今後の仮想通貨を左右する機関投資家関連プロダクトに注力する企業の主張を分析した。

SECとETF申請企業の見方の違い

仮想通貨カンファレンスのコンセンサス・インベストでは、米国におけるETFなどの金融商品の規制当局である証券取引委員会(SEC)の長官を務めるJay Clayton氏を始め、ビットコインETFの申請企業VanEckや、NY証券取引所の親会社ICEのBakktの責任者が登壇し、注目を集めた。

 これらの企業は、現在仮想通貨市場において重要視されている「機関投資家」の呼び水になると注目されている中核企業だ。

あまり話題にはなっていないが、今回の登壇内容によって、SEC(規制側)とキープレイヤー側(プロダクト提供側)とで、現在の仮想通貨ETF実現における最重要問題点の捉え方が違う事がわかった。

今回は、その違いを取り上げて解説する。

SEC長官が考えるETF申請許可に不可欠な要素:最重要は市場操作のリスク

SEC長官のClayton氏によって明確化された、ビットコインETF申請の認可が通る為に必要不可欠な要素は以下の3点だ。

(適正な価格形成プロセス)

市場操作のリスク

ETFの現物である資産の徹底したカストディ(安全・管理)

SEC長官は、「市場操作のリスク」を最も重要な問題点であると指摘し、この課題が克服されていないことが未だにビットコインETF申請が実現していない理由であるとした。

適正な価格形成プロセスの重要性

今回の登壇内容では言及しなかったが、価格操作に直結する根本的な問題として度々SECによって挙げられているのが「適正な価格形成プロセス」だ。

SECがこれほどまでにビットコインETFの担保となる価格がどのように算出されているかにこだわる理由は、これまでSECが幾度となく強調している「投資家保護」が大きい。

仮想通貨の懸念材料として市場操作や価格操縦等、不正行為が大きな影を落としているが、そのような市場操作のリスクが低く、ウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所ジェミナイの様に、規制に準拠している取引所の価格形成プロセスが重要だとClayton氏は重ね重ね発言している。

つまりSECの観点からすれば、投資家保護とは正反対の不正行為を防ぐ工夫がされている信頼性があり、規制に沿っている形で価格を算出するプロセスの皆無がビットコインETF申請に必要不可欠なのだ。

なおClayton氏は、ICOプロジェクトがSECに相談するときは「原則的に有価証券と考えるべき」と述べながらも、ビットコインに関してはペイメント・システムとしての将来性を評価するなど、前向きな発言も行なっている。

VanEck社の見解:最重要はカストディ

同Consensus Investにて、現在ビットコインETFを申請しており、認可が最有力視されている投資管理企業Van Eck社のCEOであるJan Van Eck氏が登壇。

VanEck社のCEOであるVan Eck氏は講演内で、現在申請中のビットコインETFが認可される為に必要不可欠な2つの大きな条件として挙げたのは以下の2点だ。

ビットコインETF認可に必要な条件

1. 価格決定プロセス

2. カストディアン(安全・管理)

まず第一に大切な条件は市場操作、相場操縦等の不正行為を防ぐ為に健全、安全に、そして確立されている方法で価格決定プロセスが行われているかとしたが、大事な条件として挙げたのは、ETF商品の担保となる仮想通貨の安全・管理の徹底であるとVan Eck氏は述べた。

VanEck社は、価格決定プロセスにおいては良い方法が見つかる可能性があると問題視していなかったが、カストディアンにおける調整やテクノロジー分野での発展等において改善の余地があると言及した。

SEC側はまだ明確な最終判断を下していないが、価格決定に関してはいくつかの方法で適正価格決定プロセスを導くことは可能である。

しかしカストディアンの方がハードルは高い。金融商品にはリスク遵守の為に有効なカストディや関連サービスの確立が重要である。

SEC側はそれぞれのマーケットにおいて、カストディアンに何が必要であるか理解し始めている。ビットコインに関して、カストディアンのカバー範囲がどれくらい必要か金融機関やSECとの調整が必要であり、さらに信頼のできるカストディ運営会社やテクノロジーなどが求められる。

VanEckが10月9日に行なったプレゼンテーションから読み解く

最も待望されているVanEck版CboeビットコインETFの審査段階にある中、VanEck社とSolidX社がSECの新コミッショナーElad L. Roisman氏(仮想通貨に親和的とされる)と面会し、ETFの認可を説得しようと一つのプレゼンテーションを行っている。

このプレゼンテーションにて、VanEckが自社のETFに関してアピールした点は、「証券規制に則っている点」、「投資家保護が十分である点」だ。

出典:SEC

VanEck側が今回の登壇内容でも、投資家保護に直結する価格決定プロセスに問題がないという点は、以前よりアピールしていた点である事がわかる。

その理由として、VanEck Trust社のビットコインETFの価格決定プロセスとして、CFTC管轄下のビットコインOTCの価格に準拠することを挙げており、OTC取引デスクによる不正が無い限り、価格操縦(SECが挙げる最重要問題点)は問題ないとしている。

Cboeのルール上では、当ETFシェアの潜在的価格操作を監視することに当たる点も強調しており、同OTCデスクがすでに米国の規制下に置かれていることなどを踏まえ、大きく問題視していないと見られる。

Bakkt社は価格操作の払拭を試みる

来年1月24日にビットコイン先物の取引開始を予定している、世界2位の出来高を誇るニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル取引所が運営するBakkt。

同社Bakkt社のCEOであるKelly Loeffler氏は、SECが懸念している「セキュリティのしっかりとしたカストディと、安定した価格形成プロセス」が必要であると述べ、価格形成プロセスに概ね同調するも、Bakktが主導となり新たな仮想通貨市場を作っていく旨を明かしている。

一旦規制された価格と市場ができ、適正な価格形成プロセスが決まれば、仮想通貨に対する見方を大きく変えるだろう。

このように語ったBaktt社のCEOは、同社が提供する現物決済のビットコイン先物取引がこのような変化をもたらすことにつながると期待を語った。

ビットコインの価格は市場操作されているという疑いもあるが、その様な疑念を取り払う必要がある。

Bakktが実現するのは規制に乗っ取った機関によって価格が決定された契約である。

さらにVanEck社はNasdaqと新たに提携を締結した事を発表し、VanEck社のデジタル・アセット戦略部のディレクターを務めるGabor Gurbacs氏がビットコイン先物取引などのデジタル資産商品を提供する方針を明らかにしている。

また同カンファレンスで発表されたVanEck社とナスダックの提携商品において、ナスダックの市場監視技術と、VanEck社の子会社であるMVISの価格ベンチマーク(先日発表されたOTCインデックス)を活用することで

規制当局と市場参入を検討している大手機関に信頼を喚起したい

とGurbacs氏は期待感を示した。

さらに同氏は「来年は期待できる点がたくさんある」と述べ、特にBakktが開始予定で、ETFの最終判断も発表される第1四半期が期待できるとして、

2018年は規制の年だったが、2019年は実装の年となる。

と語った。

まとめ

このように、ETF商品提供で定評のあるVanEck社や、ナスダックと関わりが深いBakktの仮想通貨市場参入が重要視されているのは仮想通貨市場の強気相場転換への起爆剤と見られている機関投資家の参入につながるからだ。

しかし、今回の登壇内容で明らかになった規制側とプレイヤー側での「問題点の差」、ここが今後どのように現れてくるかは注目されるだろう。

プレイヤー側でもあるBakktも主導となり「価格形成プロセス」の課題解決に取り組んでいるが、やはり事業を起こしていく側のプレイヤーが、肌で感じた「規制に準拠したカストディ」に関する問題は、業界全体の発展において重要な課題であることは間違い無いだろう。

4000ドル台まで下がった仮想通貨市場だが、下落相場の中でも着実と進められている大手企業の仮想通貨環境の整備がどのように進められていくか今後も報道を続けたい。

CoinPostのLINE@

スマートフォンへの「プッシュ通知」で、相場に影響を及ぼす重要ニュースをいち早く知らせてくれる「LINE@」の登録はこちら。大好評につき、登録者6,000名突破しました。乱高下する仮想通貨市場における、効率の良い情報収集にぜひご活用下さい!

CoinPostの関連記事

米SEC長官が「ビットコインETF承認・有価証券問題」の必要事項を明確化|仮想通貨リップル(XRP)証券性に関する質問も
米SECの長官を務めるJay Clayton氏は米国27日に開催された大型カンファレンスConsensus Investで登壇し、ビットコインETFや仮想通貨の有価証券問題等について言及したことが注目を集めている。また未だ不透明なままのリップルの証券性についても触れた。
世界2位の証券取引所ナスダック、BTC先物検討と最重要ビットコインETF企業と提携|仮想通貨関連の最新動向まとめ
米有力誌ブルームバーグが、情報筋によると、世界2位の証券取引所ナスダックは来年の第1四半期にビットコイン先物の取引開始を検討していると報道した。また、最重要ビットコインETF企業とも提携し、仮想通貨インデックスの提携を行うことが明らかになった。
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
11:35
CZ氏、世界の子どもに向けた「Giggleアカデミー」を立ち上げ
仮想通貨取引所バイナンスのCZ前CEOは、世界の子どもに基礎教育を無料で提供するプログラム「Giggle Academy」を立ち上げると発表した。
11:00
アバランチ財団、ミームコイン5種の保有を発表 
アバランチ財団が暗号資産(仮想通貨)AVAXのエコシステム支援のため、Coq InuやTechなど5種類のミームコイン保有を公表。コミュニティ活性化の一環として選ばれた。
10:20
ビットコイン現物ETFにさらなる資金流入可能性 CoinShares分析
仮想通貨投資企業CoinSharesのアナリストは、ビットコインには今後数か月の間に需要急増が起こる可能性があるとの見解を述べた。
08:20
ミームコイン熱狂でソラナのGoogle検索数急増、2018年ICOブームに類似との懸念も
次にヒットするミームコインを探すトレーダーや投資家は「BOME」プレセール型ローンチをはじめ、さまざまなプレセール型ミームコインに資金を流入させ、その多くが「出口詐欺」であることが確認されている。
07:15
SCB銀、イーサリアム現物ETF承認の影響を分析
仮想通貨イーサリアムの現物ETF承認なら最初の1年で6兆円超の資金が流入する可能性があると、英大手銀行のスタンダードチャータード銀行が分析。イーサリアムやビットコインの価格予想もしている。
06:20
OKX、欧州でUSDT通貨ペアを廃止 MiCA法準拠で
USDTはOKXやバイナンス、Bybitなど集権型取引所の出来高の根幹となっているためUSDTペアの廃止は取引所の収益に打撃を与えることになる。
05:50
AI・DePIN関連銘柄「Akash」、コインベースに新規上場
半導体大手エヌビディアが今週「NVIDIA GTC AI 2024」を開催することから、思惑買いで先週末にAKTやRender、ワールドコインなどのAI仮想通貨銘柄は一時的に値上がりしたが、その後反落。
03/18 月曜日
19:46
プライバシー保護と相互運用性に特化した「Partisia Blockchain」の魅力とは 専門家が動画解説|WebX STUDIO
企業や自治体からも注目される、秘匿マルチパーティ計算(MPC)を用いてプライバシー保護と相互運用性に特化したPartisia Blockchainとは。コミュニティサポーター「ぐぬぐぬたい」氏がCoinPost YouTube番組「WebX STUDIO」に出演し動画解説を行なった。
15:25
「Web3の未来をリードするのはアジアの国々」Parity Asia製品工学トップが見解示す
ブロックチェーンインフラ企業Parity Technologies Asiaは、日本で昨年開催されたWebX2023実績などを踏まえ、アジア太平洋地域の国々がWeb3の未来を形作る上で主導権を握るとの考えを明らかにした。
12:47
米検察、FTXのサム前CEOに懲役40年以上を求刑
米検察当局は、22年11月に破綻した仮想通貨取引所FTXの前サム・バンクマン=フリードCEOに懲役40年から50年の判決をくだすよう裁判所に要請した。弁護側は緩和を求めている。
12:35
イーサリアム現物ETFが5月までに承認される確率は? 海外アナリスト6名が見解述べる
米各社のアナリストら6名は、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム現物ETFが今年5月までに承認される見通しについて議論し見解を述べた。承認の上でのハードルなどについても意見している。
12:31
ビットコイン一時65000ドル割れも反発、ソラナは時価総額4位に浮上
暗号資産(仮想通貨)市場では週末にかけて急落していたビットコインが反発。前週比30%高のソラナ(SOL)はBNBを超え、時価総額4位に浮上した。
03/17 日曜日
11:00
週刊仮想通貨ニュース|ETHのDencunやBTCの7万ドル割れに高い関心
今週は仮想通貨イーサリアムの大型アップグレードDencunの完了、ビットコイン価格の急反落、米金融大手JPモルガンのビットコイン現物ETF分析に関する記事が最も関心を集めた。
03/16 土曜日
12:00
バイナンスのVC部門バイナンスラボ、グループから独立
大手仮想通貨取引所バイナンスのVC部門バイナンスラボが、今年初めにバイナンスグループから独立していたことが分かった。
11:05
「イーサリアムがコインベースの収益を後押し」JPモルガン分析
JPモルガンは、イーサリアムが米仮想通貨取引所コインベースの収益にプラスの影響を与えると分析した。背景にDencunアップグレードなどを挙げた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/03/22 18:30 ~ 21:00
東京 東京都江東区
2024/03/28 15:00 ~ 18:00
東京 東京日本橋タワーB2階
2024/04/06 ~ 2024/04/09
香港 香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター3FG
重要指標
一覧
新着指標
一覧