
資産トークン化の流れ
米ヘッジファンド大手ARK Investのキャシー・ウッドCEOは、ブルームバーグTVのインタビューで、自社ファンドをトークン化する計画に言及。資産トークン化のトレンドが高まっていることを強調した。
ウッド氏は、同社のインターバルファンドをトークン化し、オンチェーン化することで、より多くの人々にプライベート投資に参加できるようにする可能性があると述べた。他のベンチャーキャピタル企業も同様の動きをとる可能性もあるため、企業への新しい資金提供方法が増え、競争が激化すると考えられると付け加えた。
また、米資産運用最大手のブラックロックのラリー・フィンク会長兼CEOが「すべてをトークン化したい」と発言したことを引き合いに出し、「ブラックロックのような巨大企業を動かすには大きな力が必要」であるため、この発言の意義は大きいと指摘。Ark Investはトークン化の進展を自社の戦略にも取り入れるべく、注視していると明かした。
ウッド氏は、18日にニューヨークで開催されたデジタル資産サミットでも、「トークン化は大きなものになる」と発言。同社のベンチャーファンド(ARKVX)やデジタル資産レボルーションファンドのトークン化を検討しているが、規制緩和が進むことで実現可能になると考えており、「このチャンスを逃さずに利用したい」と述べた。
ビットコインと今後の経済の展望
ビットコイン価格の見通しについて尋ねられると、ウッド氏は、2030年までに150万ドル(約2億2,400万円)に達するという大胆な予測を維持していると述べた。「現在はリスクオフの時期だが、ビットコインの4年周期の半ばを過ぎた今も強気市場にある」と分析。米国の規制緩和が機関投資家の参入を後押しし、ポートフォリオのリスク調整後リターンは向上するとの見解を示した。
ただし、現在は段階的な景気後退の時期に入っており、今後はマイナス成長の四半期をいくつか経験する可能性があると指摘。その背景として、連邦・州・地方政府や教育・医療といった準公共部門での雇用の安定性に、人々が不安を感じているため、貯蓄率が上がりマネーの流通速度が下がっていることを挙げた。
しかし、このようなマイナス成長の期間は、現政権や連邦準備制度(FRB)にとって、減税や金利引き下げ、あるいは少なくとも量的引き締めの終了といった、より多くの自由度を与える状況を作り出すと考えていると述べた。インフレが予想を下回り、良質なデフレを引き起こすイノベーションの力が加わるため、FRBが今年中に2〜3回の利下げを行う可能性もあるとウッド氏は見ている。
Ark Investでは、このリスクオフの状況を利用し、テスラやビットコイン、またコインベースやロビンフッドなど、他の暗号資産(仮想通貨)に似た動きをする銘柄を購入しているという。
ミームコインに警鐘
一方、ミームコインに関しては、「何百万ものコインが生まれているが、ほとんどの価値はほぼゼロになる」とウッド氏は厳しい見方を示した。
同氏は、証券取引委員会(SEC)が、ミームコインを証券ではないと宣言したことの意味合いは大きいと指摘。規制当局は、ミームコインの売買は全て自己責任であり「注意しなさい」という明確なメッセージを送っていると強調し、当局がミームコインについては責任を持たないことは明らかであると述べた。
一方で、Ark Investは、ユースケースが増えているビットコイン、イーサリアム、ソラナの「ビッグ3」に注目しており、これらの仮想通貨は今後も重要性を増すと予測している。
現実世界でのユースケース
仮想通貨が単なる投機対象としての役割を超えて、現実世界で活用されるユースケースとして、ウッド氏は、ステーブルコインを筆頭に挙げた。
同氏は「今年は規制緩和や立法が進み、ステーブルコインへの道が開かれる」と予想。USDコインやテザーが分散型金融(DeFi)の入り口となり、貸し出しや貯蓄、利回り獲得の場として機能し始めていると指摘した。
特に新興市場では、既にビットコインやステーブルコインが通貨切り下げから購買力や富を守る手段として利用されており、消費者保護に実用性を発揮しているとウッド氏は語った。
有望な投資先は
市場がイノベーションへの投資に慎重な今、最も確信的に選ぶ投資先として、ウッド氏は「テスラとビットコイン投資」は依然として最も有効な二大投資判断としつつ、AI時代には「Palantir」のような、サービスとしてのAIプラットフォーム企業を加えると述べた。
このような企業は、大企業がAI時代に移行し、効率性やコスト効果を享受し、新たな製品やサービスを生み出すのを支援している。このような企業が、今後、非常に大きな存在になると考えている。